ペンマークは、学生向けの履修管理SNS「Penmark(ペンマーク)」の開発・提供を軸とし、Z世代のアンケート調査や企業の学生向けマーケティング支援を行っています。この連載では、現役の慶應義塾大学生でありながら経営者の顔も持つ筆者が「Z世代のSNSマーケティング」をテーマに解説します。第4回目の今回は、30万フォロワーを獲得する方法や実際の運用方法について、当社の経験をもとに紹介します。
30万フォロワーを獲得するためのロードマップ
フォロワーの属性を問わずに、ただ単にフォロワー数だけを獲得するのであれば比較的簡単にできます。しかし、自社のサービスと親和性の高いフォロワーを獲得するためには、ある程度の工夫が必要です。特に、数万フォロワーを獲得するためには、高品質なコンテンツを一貫して提供することが不可欠です。実際に当社が行った施策をいくつか解説します。
(1)自社サービスと親和性の高いトピックを選定する
当社がTwitter運用を始めた目的は、SNSを通じて大学生向け時間割アプリ「Penmark」を知ってもらい、アプリの利用者数を増やすことでした。そのため、時間割アプリのユーザーである大学生と親和性が高いと考えられる、次の3つを中心に投稿を始めました。
・学事速報:大学の公式サイトに公開された大学に関する速報情報を周知するツイート(例:休講情報、天災情報、学校からのお知らせなど)
・学事予定:アカデミックカレンダーに記載されている学事予定を周知するツイート(例:履修申告、休暇情報、学園祭、成績発表など)
・大学生ならではの有益情報:お得情報などを周知するツイート(例:学生証で利用できる施設、キャンパス紹介、おすすめ授業、学食紹介など)
こうした投稿は、大学ごとに異なるニッチな内容です。そこで、当社では大学ごとにアカウントを作成して、それぞれのコンテンツを発信することに決めました。
(2)効率よくコンテンツ制作を行うための体制確立
次に、具体的なツイートの制作について紹介します。一貫性のあるブランドイメージを維持しながらも、フォロワーが有益だと感じるコンテンツを提供することが求められます。そのためには「投稿全体のルール設定」「情報収集の自動化」「ツイートフォーマット作成」が必要です。
「投稿全体のルール設定」
実際の当社の運用ルールを一部紹介します。それは、以下の3点です。
・学生の役に立つ良質な情報の取得に徹底的にこだわる
・役に立たない情報や炎上リスクのある情報は発信しない
・大学に関する情報は情報ソースも含めて投稿する
この中で最も重要なルールは、1つ目の「学生の役に立つ良質な情報の取得に徹底的にこだわる」ことです。弊社のミッションは「学生の一生を豊かにする」ことなので、ミッションに沿ったTwitter運用という点で重要なのはもちろんのこと、届けたい層・フォロワーにとって有益な情報であることが、結果的には良質なフォロワーの獲得に通じるからです。良質なフォロワーについては、後述の「運用時の注意点」で解説します。
「情報収集の自動化」
現在、当社では公式アカウントの他に100大学分のTwitterアカウントを運営しています。ペンマークが発信するコンテンツの中でも特に学生にとって有益だと考えているのが、先ほど紹介した「学事速報」であり、これは「情報が出てからいかに早くツイートできるか」というリアルタイム性が大切です。
しかし、100大学分の情報をリアルタイムで取得してツイートすることは、物理的なハードルが高いです。そのため、RSSフィード(Really Simple Syndication:Webサイトの最新情報やコンテンツを配信するためのフォーマット)を用いたリサーチ工数の削減など、さまざまなツールを用いた投稿工数の削減を試みています。
大学公式ホームページがRSSに対応している場合、実際の情報収集から投稿までの流れは以下の通りです。
大学の公式Webサイトを訪れ、最新情報やお知らせの部分に「RSSフィード」というリンクやアイコンがあるか確認します。RSSに対応していたら、リーダーアプリ(FeedlyやReederなど)を開き、新しいフィードの追加サイトの検索機能を使用して、大学の公式HPのRSSフィードを登録します。
登録後に、新しい情報やお知らせからトピックを選び、フォーマットに沿って投稿します。これにより、情報収集の工程が自動化され、大量の情報を効率よく把握して多数のアカウントでも定期的に投稿できるようになります。
「ツイートフォーマット作成」
当社のツイートの構成は通常、「ヘッダー」「本文」「URL」「ハッシュタグ」「クリエイティブ」の5つの要素から成ります。それぞれの要素には、一貫性を保つための形式と運用ルールが存在します。具体的には、以下の通りです。
・ヘッダー
ツイートの冒頭は【見出し】あるいは\お知らせ/と記述する。見出しの種類(重要、速報、お知らせ、ニュース、注意など)を示す。
・本文
「視認性」や「理解のしやすさ」を重視し、伝えたい情報を簡潔に伝える。例えば、文中に挨拶文言のような、伝えたい情報とは関係のない文言を入れない。日付のフォーマットを「12/4(水)10:00〜」のように統一するなど、一貫したフォーマットで視認性を高める。
・URL
ツイートカードが表示される場合とされない場合で、URLを挿入する位置を変える。
これらのルールを守ることで、ツイートの質が向上し、視覚的な一貫性が保たれるはずです。
(3)具体的なTwitter運用方法
当社は、ここまでに紹介したような方法で約30万フォロワーを獲得できました。その具体的なフォロワー数の増加についても、少し紹介してみます。
0人から1000人のフォロワー獲得(1カ月)
Twitter運用において最もハードルが高いのは、「最初のフォロワー1000人を獲得すること」です。まず一定数のファンを獲得できれば、RT(リツイート)による拡散で「バズ」を生み出し、一気にフォロワーを獲得する機会を増やせますが、フォロワーが少ないうちはそれができません。
最初の1000人を獲得するために有効な施策として、「ペルソナに該当するユーザーをフォローすること」や「キャンペーンを実施すること」が挙げられます。当社でもTwitter運用1年目に、フォローやRT、いいねをしてもらうことでデジタル機器やギフト券をプレゼントするキャンペーンを行いました。
1000人から5000人のフォロワー獲得(5カ月)
引き続き、投稿内容の分析や、投稿時間やフォーマットの改善を重ねましょう。ターゲットのフォロワー層が活性化する時期にあわせて、バズを狙った投稿をすることもおすすめです。例えば、当社では毎年4月に新入生向けの投稿を増やしています。時間割アプリをダウンロードする時期にあわせて、Twitterアカウントとアプリ双方の利用者数を増やす狙いがあります。
5000人から1万人のフォロワー獲得(1年)
この段階では、投稿頻度とタイムラインの最適化を行います。少なくとも、毎日1回は投稿しましょう。Twitterは情報が常に流れるプラットフォームなので、定期的に投稿しなければフォロワーのタイムラインから見えなくなります。
一方で、度が過ぎるとスパム扱いされる可能性もあるので、適度な頻度で投稿することが重要です。当社の公式アカウントでは、UX(User Experience:ユーザー体験)の観点から3時間あけて投稿するようにしています。
さらに、アカウントの最新の5投稿は常にターゲットにとって有益となる、または、エンゲージメントが高い投稿にしてください。ユーザーは直近の数投稿を見て、フォローするか否かを判断しています。
運用時の注意点
ここからは、Twitterを運用する際に注意しておきたい点についてご紹介します。
フォロワーの質を考える
Twitterは拡散性に強みを持つSNSです。日々の投稿に加えてキャンペーンを実施することで、フォロワー数を伸ばすことが可能です。しかし、ツイッターの強みを最大限に生かすためには、ただ単にフォロワー数を増やすだけではなく、フォロワーの「質」にも注目してください。
例えば、フォロワーが100人のアカウントと1000人のアカウントでは、どちらが優れていると思いますか?一見すると1000人のアカウントの方が良いように思えますが、拡散力を最大限に活用するためには、実はフォロワー100人の方が良い場合もあります。
それは、その100人が高品質なフォロワー、つまり私たちの投稿を頻繁に拡散してくれて、良質なUGC(User Generated Content:ユーザーが生成するコンテンツ)を生み出してくれるフォロワーである場合です。そのような状況では、広範なフォロワーを持つ1000人よりも、コアなフォロワーを持つ100人の方がフォロワーの質が高いと言えます。
このような質の高いフォロワーを維持するためには、先ほど紹介した「適切なターゲット層の特定」や「価値あるコンテンツの提供」が有効です。
炎上対策
炎上対策として、「ソーシャルメディアガイドライン」の作成がおすすめです。ソーシャルメディアガイドラインとは、発信の方針やトラブル発生時の対処法、表現などについてまとめた社内向けの文書です。ガイドラインについては、連載第1回の「(5)「低コスト」による顧客獲得単価の改善」でも触れているので、参照してください。
これまで全4回にわたって、Z世代向けSNSマーケティングについて解説しました。本連載が読者の皆さんのマーケティング戦略の参考になりますと嬉しいです。