筆者は現役の慶應義塾大学生でありながら、ペンマークという企業のCEOを務めています。当社は、学生向けの履修管理SNS「Penmark(ペンマーク)」の開発・提供を軸とし、Z世代のアンケート調査や企業の学生向けマーケティング支援を行っています。本連載では、学生と経営者の2つの顔を持つ筆者が「Z世代のSNSマーケティング」をテーマに解説します。第1回目となる今回は、「SNSマーケティングの概要とSNSを活用するメリット」について取り上げます。

SNSマーケティングとは?

SNSマーケティングを一言で紹介すると、「ソーシャルメディアを活用した企業のマーケティング活動」のことです。TwitterやInstagramなどのツールを用いて商品やサービスの認知を獲得することで、顧客のロイヤリティ向上や売り上げにつながると期待できます。

現在のところ、主要なSNSの月間利用者数を合計すると、日本国内だけでも延べ2億8000万人に上り、その数は若者世代だけでなく全年代で増加し続けています。

  • 主要なSNSユーザー

    主要なSNSユーザー 資料:総務省情報通信政策研究所『令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査』

SNSでは過去にユーザーが興味を持ったコンテンツやフォローの傾向に基づいて、その人の関心が高いであろう情報が自動的に流れてきます。例えば、Twitterでは「いいね」「リツイート」「フォロー」といったの過去のアクションから、類似したコンテンツや、よく交流している他のユーザーの投稿がタイムラインに優先して表示されます。

その他にも、短期間で数万のいいねやリツイートが付くような、話題性が高いいわゆる「バズった」投稿は急速に拡散され、普段はタイムラインに表示されないユーザーに対しても情報が届きます。

SNSマーケティングの最大の魅力は、この「拡散力」です。低コストで手軽に始められ、各プラットフォームの特徴を理解していれば初心者でもバズを狙えます。企業と顧客の双方向のコミュニケーションも可能なため、距離が縮まりやすく、顧客のロイヤリティを向上させることも可能です。

現在、SNSは単なるコミュニケーションツールではなく、広告宣伝色を出さずに顧客の日常生活の中で自然と接点を持つことができる貴重なマーケティングツールとなっています。

SNSマーケティングの必要性とそのメリット

SNSマーケティングを行うメリットは、先に紹介した「拡散力」を含めて次の5つが挙げられます。

(1)「拡散力」による認知拡大・ブランディング効果

自社で運営するアカウントや多くのフォロワーを獲得しているインフルエンサーが、商品・サービスを紹介することにより、認知度を格段に上げられます。SNSの拡散力を生かして購買行動促進へとつなげられるのです。

実際に、2022年8月に発表された調査データ(ネオマーケティング「SNSでの商品購入に関する調査」)では、Instagram経由で購入した人の7割以上が、「事前に購入予定はなかった」と回答しています。

  • SNSで見る前は商品を買う予定が無かった人の割合 資料:ネオマーケティング『SNSでの商品購入に関する調査』

    SNSで見る前は商品を買う予定が無かった人の割合 資料:ネオマーケティング『SNSでの商品購入に関する調査』

また、自社アカウントで有益な情報を発信したり、人気のインフルエンサーに商品・サービスを紹介してもらったりすることで、企業に対する信頼感を醸成できます。多くの消費者に認知され共感を得ることで、企業ブランディングの形成に寄与します。

(2)「リアルタイム性」による情報伝達のスピード向上

SNSはリアルタイムで情報を発信できるので、自社の情報を素早く顧客に届けられる利点があります。SNSのリアルタイム性と拡散力を掛け合わせれば、短期間でより多くのユーザーに最新情報を伝達できます。

(3)「近い距離感」による顧客ロイヤリティの醸成

自社ホームページの「お問い合わせ」フォームとは違い、SNSはより近い距離感で企業と顧客の双方向コミュニケーションが可能です。SNSでの交流を通じて、顧客の信頼や愛着を獲得することにより、LTV(ライフタイムバリュー)の向上へとつながります。その結果、顧客自らが自社の商品・サービスを発信・拡散し、継続的な企業の支援者となります。

(4)「利用者の声」によるリサーチと仮説検証

SNSでは装飾されていない顧客の生の意見が届きます。例えば、Twitterで商品名を検索すれば、実際の消費者の反応を即座に確認できます。悪い口コミであれば、フィードバックの一つとして商品の見直しや改善に生かして、再びSNS上で仮説検証を行えます。また、良い口コミはUGC(User Generated Contents:ユーザーが生成するコンテンツ)として第三者からの信頼できる情報となり、新たな顧客の獲得や販売促進も見込めます。

(5)「低コスト」による顧客獲得単価の改善

主要なSNSはほぼ無料で利用を開始できます。加えて、マス広告と違ってSNS広告は低コストで運用でき、細かな仮説検証も可能です。そのため、大変費用対効果の高いマーケティング活動だといえます。

このように、SNSマーケティングは多くのメリットがあります。その一方で、トラブルや炎上の可能性には注意が必要です。リアルタイムで急速に情報が拡散される点はSNSの大きなメリットでもありますが、反面、SNSで発信した情報によりトラブルや炎上のリスクがあることを忘れてはいけません。

SNSで発信している情報は全世界に発信されているので、誰かを傷つけてしまう可能性や、意図していない方向で捉えられて誤った情報が広がっていく可能性もあります。そのため、SNSの運用を開始する際は、事前に「ソーシャルメディアガイドライン」を作成することをおすすめします。

「ソーシャルメディアガイドライン」とは、SNSを利用する際の運用ルールを定めた社内向けの文書です。ガイドラインの中では、発信の方針やトラブル発生時の対処法、表現などについてまとめます。

弊社では、炎上時の対処法として「報告フロー(いつ誰に報告するか)」「報告内容(なにを報告するか)」「炎上したときに禁止すること」などを細かく設定し、万が一のときにすぐに対処できる体制を整えています。

企業のマーケティング活動において、ますます重要度を増しているSNSマーケティング。今回はSNSマーケティングの概要とSNSを活用するメリットについて取り上げました。ひとくくりにSNSといっても、サービスによって用途やユーザー層が異なります。それぞれのSNSに最適化した運用が大切です。

次回は、SNSマーケティングで利用される主な媒体とあわせて、Z世代のSNSの利用実態や具体的なマーケティング手法について解説します。