「進研ゼミ」で知られるベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)中学講座では、社内ブログが活用されている。同社の事業基盤室総務・法務セクション中ゼミ&新規グループリーダー 山本利博氏が積極的にブログを導入した理由はどこにあったのか。また、導入後、どんな効果が生まれたのだろうか。

社内ブログ導入から課題の発見まで

ベネッセコーポレーション 義務教育事業本部 事業基盤室 総務・法務セクション 中ゼミ&新規グループリーダー 山本利博氏

ベネッセでは2007年4月から社内イントラでMovable Typeの自社ブログを導入しているが、その前の2年間はドリコムの「ドリコムブログオフィス」ASPサービスを利用していた。導入するきっかけは、進研ゼミ中学講座で総務的業務をしている担当の山本氏の提案だ。

同氏は2004年からプライベートでブログを使っており、情報発信や人と人がつながるおもしろさを感じていた。翌年、現在の部署に移動したのを機に、社内ブログを取り入れることを提案したが、すぐに受け入れられることはなかった。社内的に「ブログは仕事ではなく遊びに使うもの」という認識が強かったためだった。

結局、導入できたのは、最初の提案からしばらく経った2005年10月ごろのことだったという。進研ゼミ中学講座を作っているメンバーは総勢300人。その中で、商品をリニューアルしようというプロジェクトが始まった。英語、数学などの教科編集や、テスト勉強の方法を考える担当、赤ペン先生の担当など、それぞれの知識を持つ20人を集めてプロジェクトチームを作り、社内ブログを開始した。

開始してみて、チームメンバーはつねにプロジェクトについて考えているものの、チーム以外の人には何をしているのかが見えにくいことに気がついた。意見を吸い上げたり、アドバイスをする機会がないため、他の人たちとチームの意見が乖離しやすくなってしまうのだ。そこで、チームの活動をいかに社内に伝えていくかが課題となった。

また、チームで顔を合わせる機会は週に一度しかない。そこでテーマをいくつか設け、3人ほどのミニチームがそれぞれのテーマを担当するという方式を採っていた。そこにブログを取り入れることで、週の間に動いていることやよそのチームの考えがわかるようになった。ブログの閲覧対象は中学講座担当の300人全員にした。あまり見ない人もいたが、週に一度は見る人が5 - 6割に上った。

更新が簡単、メールには書けないこともブログならOK

ベネッセではこれまで、(イントラネットなども含めた)Webサイトを更新するのは専門の派遣社員の役割だった。派遣社員に原稿を渡してWebサイトにアップしてもらい、アップされた内容をチェックし、それから修正、という煩雑な手間と長い時間がかかっていた。しかしこれをブログに置き換えることで、担当が自分で記事を更新/修正できるようになった。スピードが速まり、チームの誰もが自由に発信できるようになったというわけだ。

また、メールの場合はオフィシャルな指示が中心となり、感情的なことや、提案、悩みについては語りづらい。しかしブログであれば、そういったコミュニケーションも可能となり、個人の悩みに対して応援するコメントが付くこともあったという。飲み会で交わされるような感情を伴った話ができ、コミュニケーションが潤滑に行われたそうだ。

実質3 - 4カ月のことだったが、これがブログというツールを初めて使った同社のプロジェクトとなった。プロジェクトメンバーからは「ブログは非常に有効だった」という評価を受けた。

ファシリテータ的存在として社内ブログの書き込みを奨励すべく、山本氏自身も積極的にコンテンツをアップした。内容は業務に関することが主だが、思いついたアイディアや感銘を受けた出来事などを、雰囲気が硬くor柔らかくなりすぎないように気をつけて更新していったという

ブログは"マスト"にすべきか - 強制か、自由意思か、そこが問題

同氏はその後もブログを社内に広く取り入れることを提案したが、社内は必ずしもブログを取り入れることに歓迎ムードというわけではなかった。「ただでさえ忙しいのに、メディアが増えてさらに情報が増えるのは困る」「有益な情報を出し続けないといけないのが厳しい」という意見もあった。

また、「ブログは見続けないといけないものなのか」という問題があった。たとえばイントラネットの掲示板は業務連絡があるので必ず見るというルールがあるし、メールもまた、当然読むものだ。その中間に位置するブログはマストか、それともそうではないのか、扱いが難しいのだ。

そこで、ベネッセ中学講座では「ブログはマストではないが、必要と思う人は必要に応じて見ればいい」というスタンスにしたという。「10%は集中的に語り合っており、緩やかに見ている人が10%程度、残りはほとんど見ない、という構造になっています。また、ブログ上では作業指示はしてはならないというルールにしています」(山本氏)。

また、発言の内容や種類を指定していないので、参加者は自由に発言する。当然、有効とは言えない発言もあり、玉石混淆な状態となる。「(ブログを)会社で何に使うものか決めないままで使い続けるのは難しい。目的がはっきりしている情報が載っているとやりやすいので、最初のケースのように、プロジェクトにブログを乗せるほうがうまくいくと感じています」(同氏)。

次回は、社内ブログを普及させることの難しさ、そして意外な使い方などについて、さらに話を訊く。

【基本データ】

  • 特徴: プロジェクト内のコミュニケーションツール、更新/修正を行いやすいCMSとして利用
  • 使用製品: ドリコムブログオフィス(ASPサービス)→Movable Type
  • 使用時期: 2005年夏10月より開始
  • 参加方法: 申請制
  • 2005年度の利用状況は週1回以上見る人が6割、毎日見る人が2割、よく書き込みをする人が1割程度