フィナンシャルプランの世界では
突然ですが、次の3つの言葉を以下の空欄の中に入れて式を完成させてください。
- 貯蓄
- 収入
- 支出
□-□=□
FPの世界では有名な式です。あなたの回答は「収入-支出=貯蓄」でしょうか? たしかに「余ったら貯蓄に回す」は、普通の考え方だと思います。
私も独身のころは思いっきり、この「余ったら貯蓄」派でした。財形貯蓄なんてとんでもない、定期預金、定期積金は言うに及ばず、口座は給与振り込みの一口座のみでした。いつも年末になると「なぜこれだけしか貯まらないんだろう」と頭を悩ませていました。収入から所得税、住民税、社会保険料を引き、さらに生活費など相当額を引いた金額が貯蓄額のはずです……が、全然合わないのです。当時車のローンを抱えていたのですが、ローン返済中よりローン完済後の方が貯蓄額が少なくなっていたのには、我ながら驚きを通り越して呆れてしまいました。
FPでは「収入-貯蓄=支出」、つまり「まず貯蓄に回す」という考え方が大切です。天引き&先取りの感覚です。お勤めの方なら「財形貯蓄で意外と貯まった!」、経営者の方なら「納税資金は、定期積金で対応している」、意外と多いと思います。そう、「余ったら貯める」では貯蓄はおぼつかないのです。やはり貯めるためには天引き&先取り。そうでなければ貯まらないのです。
経営の世界で重要なこと - あなたのお金の使い方は"綺麗"ですか
では、
- 収入=稼ぐ
- 支出=使う
- 貯蓄=貯める
として、経営において最も重要な行為は何だと思いますか? 私は、最も重要な行為は「使う」だと思っています。
「使うためには、稼がなければならないし、貯めるためにも、稼がなければならないだろう。だから最も重要なのは"稼ぐ"に決まってる!!」……もっともな考え方です。でも「稼ぐ」ためには、「使う」ことが何より重要なのです。詭弁だと思われるかもしれませんが、お金は使って初めて稼ぐことができるのです。もっと言えば、「使うことがなければ稼がない」→「貯めることもできない」のです。
- まだ人を増やすまでもないのだけど、ちょっと早めに補充しておこうと新規採用を行ったら、次の月に新規契約が取れ、仕事が増えた
- 金額的には高額だが、この時期に高性能機械を導入することが経営上重要と考え、社内でも十分検討し購入を決断した。すると工場内の作業がしやすくなり、従業員のやる気に繋がっただけでなく、残業が減り人件費が削減、そして生産増による売上増が実現できた。結果的に今回の投資を予定より早く回収できそうだ
- さすがに老朽化が目立つ本社屋の内外装を塗装工事したら、なぜか売上が伸びた
これらは、私自身の事務所も含め、私のクライアントに起こった「使ったら稼げた実例」の一部に過ぎません。皆さんも過去に似たような例がなかったか、思い起こしてみてください。きっとあるはずです。
必要なことに「使う」という行為は、間違いなく「稼ぐ」に繋がるのです。考えてみてください。必要な人員の補給もしない会社に人が集まるでしょうか? 適切な設備投資をしない会社と取引をしたいと考えるでしょうか? なによりもケチな人=会社と付き合いたいと思いますか?
みんなケチより気前のいい人のほうが好きなはずです。もちろん会社を経営をしているわけですから、無駄遣いはできません、計画が曖昧な設備投資もできません。でも必要なことには、躊躇なく投資すべきです。
以前、設備投資についてコンサルティングの依頼を受けたことがありました。7,000万円ほどの設備投資計画なのですが、設備投資金額、借入額、返済期間、利益率、減価償却費などを試算するとどうしても厳しい結果となりました。
でもこの設備投資は経営者の長年の夢であり、私としても、どうしても実行したかったものでした。計画実現のため、さまざまな検討を加え、月々の目標売上高、目標経費率や利益率など、できる限りの目標設定や現場の実務準備をしたものの、私は内心不安でした。実際、設備投資後、半年ほどは苦しい経営が続きました。
しかしその後、予想を上回る数値を達成することができ、1年ほどで何とか返済計画に目処をつけてしまたのです。これにはいろいろな要因があったのですが、ひとことで言うと、経営者の情熱がみんなに伝わったからなのです。
人に気持ちを伝えるためにお金を使って贈り物をすることがありますが、経営においてもお金を使うという行為は間違いなく、ある意志を周りに伝えることになるのです。よく言われることですが、お金は決して汚いものではありません。しかし、お金の使い方には「綺麗/汚い」があります。経営者の皆さん、そして経営者以外の方々ももちろん、必要なことに対しては躊躇なくどんどんお金を使いましょう! そうした綺麗な使い方をしたお金は、必ず -しかも増えて- 戻ってきます。
(イラスト ひのみえ)