このコラムでは、長年に渡って中小企業の経営コンサルティングを担当してきた筆者が、これまで見てきたさまざまなタイプの経営者を分析、大企業に比べて遅れていると言われている「SMBの見える化」を図るための提言をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
第1回目となる今回は「創業社長が居座り続ける弊害」がテーマです。創業社長の高齢化に伴い、そろそろ後継者に引き継がなければならないのに、自分(社長)以外に陣頭指揮できる人材がいない…とお嘆きの方、それは「いない」のではなく「育てなかった」経営者に問題があるのです。
社長のタイプを分析する - 思い当たるフシがあれば要注意!
さっそくですが、経営者の方はご自身のこととして、お勤めの方はご自身の会社の社長のこととして、以下の項目にいくつ該当するでしょうか?
- 仕事は出来るだけ社員に任せるようにしているが頼りない
- 募集してもなかなかいい人材が見つからない
- 優秀な人材が育たない
- 社員の欠点がどうしても気になる
- 私はワガママである
- 人の意見は聞かない
- 気前はいいほうだ
- 経営は勝つか負けるかの競争だ
- 歴史小説が大好きだ
- 友人と呼べる人が少ない
6個以上該当項目があった方は「後継者に事業を引き継ぐことができない社長」となる可能性が高いと私は思います。
「後継者に事業を引き継ぐことができない社長とは?」と訊かれて私が想像する人物像は、こうしたワガママで頑固、人の意見を聞かない、支配欲が強く人を信用しない、男尊女卑的かつ弱肉強食的な、ワンマン社長です。
もちろん会社の代表者ですから、精力的で、優しく親切なところもあり、気前もいいし、ゴルフも上手で女性にも結構モテる、人間的にもとても魅力的という面もあります。
「創業社長=裸の王様」にならないために - 隗より始めよ
こうした社長が持つ会社の最大の問題点は、社長が辞めてしまったら何もなくなってしまう会社になってしまうことです。つまり、永続企業として存続できないことになります。
企業は組織体ですから、当然、組織としての価値を持つべきです。今日のような価値観が多様化し、常に変化を求められる時代では、昔の軍隊式の経営では立ち行きません。はっきり申し上げますが、社長の周りにイエスマンしかいないような会社では、時代に対応できないのです。
企業合併の際、吸収合併される企業に対して「一定期間社員がそのまま在職すること(退職しないこと)」を合併条件とする場合がありますが、これこそ組織として価値を持つ企業の典型ではないでしょうか。組織として高い価値を持った企業は、たとえ創業者が退職し、さらに後継者がいなかったとしても、その会社に出資したい、合併したい…など、あらゆる方法で会社の存続を望む、または関係を持ちたがる会社(または人)が出てくるでしょう。
では、どうすれば価値のある組織体としての企業になり得るのか? まずは社内における「教育」の仕組み作りが重要です。人を育て、社内技術を開発し発展させる教育環境が構造的に整っていること、これこそが企業にとって最大の課題だと思います。
そして教育の仕組みを社内に構築するには、まず、自らが、自分を育て、自分自身を開発、発展させることが重要です。まずは自分からです。自分を育てることができない人にほかの人を育てることなどできません。自分の長所、才能、好きなことを見つけ、そこに対して「投資」を惜しまないことです。
仮に自分の長所、才能、はたまた好きなことが「新しいこと対する創造性」だとしましょう。そうしたら、それを今の職場でどう生かすかを真剣に考えていく。仕事以外の場面でも、そうした創造性を生かすために何をしたらよいのか -- 料理、陶芸、はたまた演劇…そうしたことに真摯に取り組んでほしいのです。それは、とても楽しく、有意義でかつ仕事にも生かせる一挙両得なことなのです。
「事業で成功する秘訣は、自分の長所および好きなことをいち早く見つけ、それに対してエネルギーを惜しみなく注ぎ込むことである」
---ロックフェラー
こうした自己研鑽は、経営者、役員、従業員を問わず、各人にとって、そして組織にとってもとても大切なことなのです。
社長が間違った経営判断を下しそうになったとき、周りにいるのが茶坊主ばかりだと会社は一気に傾く。若くて優秀な社員はこうして見切りをつけていくのだ |
(イラスト ひのみえ)