通勤の一部をウォーキングに置き換える

ダイエットという目的があるから運動をするというのは、存外長続きしないものだ。生活の一部として必ず体を動かす状態を作り出す――これが長期にわたって健康な状態を維持する秘訣だ。

例えば、電車で通勤しているなら、その一部をウォーキングに置き換えると効果的だ。最初は電車通勤の1駅間だけを「歩く」と取り組みやすいと思う。朝は忙しないものなので、帰社の途中、最寄り駅の1つ前の駅で降りて自宅まで歩くようにする、というのがやりやすいだろう。

歩きにくい場所なら、歩きやすい場所で降りて1駅分降りて歩いてもよいし、スーパーに寄れる駅で降りて買い物ついでに1駅分歩くのもありだろう。飽きやすいなら降りる駅をランダムに変えるというのも遊びゴゴロがあって面白い。

何にせよ、生活の一部として1駅分歩くことを日常にしたい。筆者としてはスーパーに寄るといった日常生活の必要性と1駅分歩くという運動を組み合わせる方法をお薦めしたい。生活上の必要性があると長続きするし、習慣化しやすいからだ。

どのくらい違うのかを測ってみよう

そこで、大切なことが可視化だ。1駅分歩くことでどの程度の効果が期待できるのかを計測して知っておくとよい。数値として効果がわかると、簡単かつ強力なモチベーションになるのだ。

ここでは、まず歩くことになる区間の「電車移動」をスマートウォッチで記録してみよう。トレーニング種類はなんでもよいが、構内や車内をちょっとは歩くので「ウォーキング」で記録すればよいだろう。次のスクリーンショットは1駅分(京王よみうりランド駅→稲城駅)を計測した結果だ(Polar Vantage V2使用)。

  • ひと駅分の電車移動を「ウォーキング」として記録

    1駅分の電車移動を「ウォーキング」として記録

時間 消費カロリー 燃焼内訳
1分40秒 4kcal 炭水化物25%、脂肪75%

移動時間は1分40秒ほど。消費カロリーは4kcalだ。ほとんど動いていないし1分40秒しか経っていないので、こんなところだろう。

今度は同じ区間をウォーキングしてみよう。次のスクリーンショットは同じ区間をウォーキングした結果のスクリーンショットだ。

  • ひと駅分のウォーキングを記録

    1駅分のウォーキングを記録

時間 消費カロリー 燃焼内訳
30分49秒 149kcal 炭水化物25%、脂肪75%

この区間は川沿いを歩いても2.29kmくらいしかない。のんびり歩いたので30分くらいかかっている。このウォーキングで消費したカロリーは149kcalとなっている。燃焼の内訳は炭水化物が25%の脂肪が75%だ。30分歩いて150kcal程度か、と、思うかもしれないが、塵も積もれば山となるという言葉通り、これが毎日のこととなってくるとボディーブローのようにじわじわと効いてくる。

どれだけ効くかを計算してみよう

ここからは単純な計算だ。先程の2つの計測結果から、1年間でどの程度の違いがでるかを計算してみよう。まず、条件を整える。

電車での移動は1分40秒だが、ウォーキングは30分かかっている。そこで、電車移動に28分20秒分の消費カロリーを追加する。筆者の場合、安静にしている日の1日の消費カロリーが2300kcalくらいなので、安静時における28分20秒の消費カロリーは49kcalほどになる。電車移動中のカロリーが4kcalだから、合計で53kcalだ。電車通勤している時は該当区間+空きの28分20秒は安静にしているとして53kcalを消費しているものとする。ウォーキングも時間を30分にそろえると、消費カロリーは次のようになる。

時間(30分) 消費カロリー 燃焼内訳
電車通勤+安静タイム 53kcal 炭水化物25%、脂肪75%
徒歩通勤 145kcal 炭水化物25%、脂肪75%

つまり、1駅分をウォーキングに変えたことで145kcalと53kcalの差分で「92kcal」消費カロリーが増えたことになる。テレワークの普及で今後通勤日数は減る業種もあると思うが、ここでは毎日出社するタイプの業種を想定するとして、土日祝日に年末年始と盆休暇および有給を使い切った場合として、年に220日間は通勤すると考える。

帰社の1駅分をウォーキングに変えた場合、年間で20240kcal分消費カロリーが増えることになる。Polar Vantage V2の計測ではこのウォーキングでは燃焼割合の75%が脂肪ということなので、単純計算で年間15180kcal分の脂肪が燃焼することになる。脂肪は1g当たり9kcalと言われているので、これも単純計算で、年間1686gの脂肪が燃焼する計算になる。

1年間で1kg~2kgくらいのペースで徐々に太っていくというのは心当たりのある方が多いだろう。仮に年間1kgペースで太っていっているとしよう。帰社の1駅分をウォーキングに変えた場合、今回のケースでいえば年間で1.686kgは脂肪が燃えることになるはずで、差分の686gは体重が落ちるということになる。

年間消費kcal 年間消費(脂肪)kcal 年間消費脂肪量(脂肪燃焼75%の場合)
20240kcal 15180kcal 1.686kg

ウォーキングすることで生じるもろもろの変化を加味しないといけないので、もちろんこんな簡単な話ではないのだが、モチベーションとしてはわかりやすい。1駅分歩くと、太り続けていたのをストップさせ、逆にちょっとだけ痩せる方向に持っていける可能性があるということだ。

歩く距離を2駅分にすればさらに効果が期待できるし、出社時にも歩けばその分だけ期待できる。こんな感じで実際に計測してみると、自分の将来を「設計」できることがわかるだろうか。実際に計測し、計算して、1年後にどうなるのか推測する。これは結構なモチベーションになる。

体重の増加と減らしたい脂肪量から、ウォーキングを設計

上記のように、ウォーキングを計測することで、ウォーキングによってどの程度の脂肪燃焼が期待できるかを推測できるようになる。体重や体脂肪率が平均値よりも高い場合、まずは体脂肪を減らす「除脂肪」を考えたい。

ウォーキングで燃焼できる脂肪量を視覚化して、その値をベースに生活に取り込むウォーキングの長さを設計する。これは結構効果的だ。闇雲に歩くのと違って、目標がはっきりしていると強いモチベーションになる。

ただし、この方法があまり向いていないと思ったら、この方法を使う必要はない。一番大切なことは生活の一部としてずっと続けていけるかどうかだ。運動を生活の一部として取り込む方法は1つではないのだ。すぐに結果を出す必要はないのだから、どの方法が自分に合っているかじっくり探していこう。