30分間のウォーキングを究める

今回は、30分間のウォーキングを究めるシリーズ第3段だ。何とか仕事の合間を縫って1日30分間という運動時間を確保して、緩めのウォーキングにあて、このウォーキングの効果を最大化して脂肪を燃やしていきたい。本連載では、そのためにいろいろな方法を試し、スマートウォッチで燃焼具合を検証している。

  • Polar Vantage V2 - Fitspark Traning Guide

    Polar Vantage V2 - Fitspark Traning Guide

Polarの最近のモデルは消費カロリーの内訳を表示してくれる。エネルギー源は大まかに脂質、糖質、タンパク質が使われる。運動を行い、脂肪を燃焼し、BMI値を健康範囲内まで落としたいのだ。このスマートウォッチの機能を使って、脂質の燃焼具合を調べ、できるだけ脂肪を燃焼するウォーキングをしていこう。

前々回は、ウォーキングの効果を高める方法として、5kgのダンベルを背負ってみた。そして前回は、ウォーキングの前に筋トレをやるとなにか変わるのかを調べてみた。今回は、道の傾斜でどの程度ウォーキングの脂肪燃焼効果が変わるのか調べてみる。

坂や階段で本当に脂肪はより燃えるのか

普段の生活で運動量を増やす方法としてよく言われるのが、エレベーターやエスカレーターを使うのを控えて、かわりに階段を使うというものだ。横断歩道を使わないで歩道橋を使うことも似た効果が期待されている。職場が都内である場合、仕事場がビルの中にあることが多い。こうした場合、階段の利用は現実的であり、効果が見込めるなら使いたいところだ。

また、自宅が坂が多いエリアにある場合もこの効果が得やすい。坂が多いと、自動車やバイク、電動自転車といった手段に頼りがちだが、脂肪を燃焼するという点においては平地よりも効果が得やすい可能性がある。効果が得やすいということであれば、活用しない手はない。そこで、どの程度の効果が見込めるのか、実用可能な方法かどうかを調べてみたい。

トレッドミル斜度15度で実験だ

ここでは、次のように比較を設計して消費カロリーを比較することにした。

ウォーキングA ウォーキングB
トレッドミル30分間(斜度なし、4km/h) トレッドミル30分間(斜度15°、4km/h)

比較しやすいように、今回もトレッドミル(ランニングマシン)を使用する。今回は階段や坂で効果が出るのかを調べたいので、トレッドミルに斜度をつけて(斜めにして)比較を行う。斜度をつけないウォーキングを30分間と、斜度を15度つけての30分間だ。4km/hは斜度を15度つけた場合で著者ものんびり歩ける上限の速度だったので、この値にしてある。斜度を15度としたのは、使ったトレッドミルの最大傾斜が15度だったためだ。

斜度15度で70%のカロリーアップ!

それでは、早速結果を見てみよう。結果を消費カロリーと心拍数でまとめると次のようになる。斜度をつけると消費カロリーで70%の増加、脂質燃焼で30%の増加が計測された。これまでのトライで最も高い効果が得られたことになる。

傾斜なし 傾斜15°
消費カロリー 137kcal 235kcal
脂質消費カロリー 104kcal (76%) 136kcal (58%)
平均心拍数 86bpm 110bpm
傾斜なし 傾斜15°
消費カロリー比 1 1.71
脂質消費カロリー比 1 1.30
平均心拍数比 1 1.27

まず、心拍数を比べてみよう。斜度なしと斜度15度で心拍数の違いを見てみよう。グラフを重ねてみると、次のようになる。

  • 斜度なしと斜度15°での心拍数の違い

    斜度なしと斜度15度での心拍数の違い

斜度なしと斜度15度では、心拍数が明らかに異なっている。斜度なしの心拍数はゾーン1にすら達していない。これだと中強度の運動とはいえない。一方、斜度15度はゾーン2を示しており、中強度の運動になっている。斜度15度にすると、世界保健機関(WHO: World Health Organization)が推奨する健康運動の範囲にも入るわけで、健康的にも実に理想的な感じになる。

消費カロリーで比べてみると、次のようになる。斜度15度になると、脂質の消費も糖質の消費も増えている。増加幅が大きいのは糖質だ。脂質の増加率は糖質の増加率よりも少ない。それでも、脂質も消費は30%増えているわけで、脂質を燃やしたい組としても好ましい結果になっている。

  • 斜度なしと斜度15°での消費カロリーの違い(脂質、糖質)

    斜度なしと斜度15度での消費カロリーの違い(脂質、糖質)

効果としてはダンベル5kgを背負った時の2倍となる。こうなってくると、ダンベル10kgを背負ったらどうなるのか試したくなるところだが…… 日常生活で10kgの荷物を背負って歩くことがどれだけあるかが疑問なので、やる必要はないかもしれない。

事前の筋トレを組み合わせるとどうなる?

こうした工夫は組み合わせることで、さらに相乗効果が狙える可能性がある。ということで、今度は斜度15度の30分間ウォーキングの前に、前回試した30分間筋トレを行ってみた。筋トレは前回とほぼ同じだ。ベンチプレス、アブクランチ、ラットプルダウンをインターバル30秒で30分間アグレッシブにやる感じで行った。結果は次のとおりだ。

傾斜なし 傾斜15° 傾斜15°(筋トレ後)
消費カロリー 137kcal 235kcal 255kcal
脂質消費カロリー 104kcal (76%) 136kcal (58%) 132kcal (52%)
平均心拍数 86bpm 110bpm 116bpm

得られる効果は前回とよく似ている。筋トレをやってから取り組むと、消費カロリーと心拍数が増加する。ただし、脂質の消費はほとんど増えず、今回は逆に減っている。消費カロリーの増加分は前回よりも減っており、8%ほどだ。

これまでの工夫を検討する

これまで3回にわたり、30分間のウォーキング消費カロリーを増やす取り組みを行ってきた。その効果を簡単にまとめると次のようになる(もちろん、筆者の場合だ)。

工夫方法 消費カロリー 脂質燃焼
5kgダンベル背負い 28%増加 15%増加
事前に筋トレ30分間 13%増加 2%増加
傾斜15° 71%増加 30%増加

こうやってみると、傾斜15度の効果は絶大だ。ただ、傾斜なしは下り坂を歩いているようなものだと言われるので、道を歩いている場合に傾斜を15度にして実際にこれと同じ効果が得られるのかは疑問だが、それでも効果が見込めそうなことはわかった。この結果を生活にフィードバックすると、次のようになる。

  • 坂や階段は脂肪燃焼(カロリー消費)の効果が見込めるので、積極的に習慣化する
  • トレッドミルでウォーキングするなら、傾斜はマックスにつける

同じウォーキングだが、こうやって比較すると、ちょっとした違いで消費カロリーに大きな差が出ることが見えてきた。仮に1年間このウォーキングを続けたとすると(月曜~金曜まで、年20日間の有給中は運動はしていないと想定して240日分)、傾斜なしで脂肪2.8kg分、傾斜15度で脂質6.3kg分くらいが燃えることになる。こうやってみるとかなり大きな違いだ。ぜひとも、後者でありたいと思うのは当然ではないだろうか。

坂や階段には脂肪燃焼を増やす効果が見込めるようだ。スマートウォッチを使っているなら、ぜひ実際に違いを計測してみてほしい。いい散歩コースや階段習慣が見つかれば、いい具合に脂肪燃焼が進むかもしれないのだ。ぜひとも取り組んでもらえればと思う。