本連載では、新人Webディレクターの「りん」が、上司の「はやせ」からCMSによる企業サイト制作手法を学んでいく過程を物語仕立てで紹介します。ひとくちにCMSといっても、サービス形態によってメリット・特性は異なるもの。クライアントの要望を汲み取りつつ、ベストなサイトをつくるにはどうすればいいのか、いっしょに学んでいきましょう。

ここは、とある制作会社。新人WebディレクターのりんはクライアントからWebサイト制作を依頼されたのだけど、初めての経験で分からないことばかり。そこで、上司のはやせに相談してみました。

はやせさーん!

付き合いのあるクライアントからWebサイト制作を依頼されたんですが、どう進めていけばいいでしょうか?


ずいぶんざっくりした相談だけど、クライアントの要望はどんな感じなの?


えーと、以下のような要望でした。


  • Webサイトは持っているんだけど、以前業者に作ってもらったままでHTMLも書けないし、情報も更新できなくて困っている
  • ニュースなど自分たちで更新できる仕組みが欲しい
  • セキュリティ問題とかネットのニュースでよく聞くけど、自分たちで管理できない
  • スマートフォンにも対応したWebサイトを作りたい

なるほどねー。

まず確実に必要なものとしては、CMSだね。


CMSってなんですか?!


CMSというのは、「チョコレート(Chocolate)マジで(Majide)好き(Suki)」の略だよ。


(……?)


……じゃなくて、「Contents Management System」といって、コンテンツを管理する仕組みのことなんだ。


Webサイトといったら、昔は「HTMLを手書きで書くので、更新したい場合にはここにこういう内容で書いてね」と制作会社に依頼して、結構時間がかかってようやく更新という流れだったんだよ。けど、今はコンテンツを管理する仕組みを用意することによって、HTMLなどの知識がない人でも情報を更新・公開ができるんだ。


なるほど!

そのCMSを使ってWebサイトを作れば、クライアントでも簡単に情報を更新できるようになるんですね! さらに、制作する人と情報を発信する人をきちんと分けられると。


その通り。

Webサイトは鮮度のある情報を素早く掲載することも大事なので、こういった仕組みがあると、生きたWebサイトを作ることが可能なんだ。


ちなみに、CMSはどういった種類のものがあるんですか?


CMSの種類は、大きなくくりで言うと、ソフトウェア型とWebサービス型があるかな。

ソフトウェア型は、CGI(Common Gateway Interface)などが動かせるサーバーを借りて、そこに自分でインストールするタイプ。一方、Webサービス型は、ユーザー登録するだけですぐ使えるタイプのものになるね。


Webサイト作成サービスなんかも含めて、図にするとこんな感じかな。


CMSのタイプ別による自由度と管理コストの比較


おぉー、なんとなくわかりやすいですね。

それらを選ぶポイントはどのへんになりますか?セキュリティにも関係してくるかなと思っているのですが。


そうだね、セキュリティが大事といっても、Webの場合ではレスリング選手にお願いしてもだめだからね。

では、まずWebサイトをどういう場所に置いて運営するかを考えてみようか。


(レスリングのくだり、よくわかんない。スルーしよう)

うーん……と、例えばレンタルサーバーとかですか?


うん、そういう場合もあるね。

ただ、レンタルサーバーなどの場合は、CMSのソフトウェアを自分で導入して管理していく必要があるよね。そういう場合、例えば使っているソフトウェアに脆弱性が見つかったり、古くなってサポート対象外になった場合にどうなると思う?


慌てます……。じゃなくて、すぐアップデートするとか対応しないといけないですね。脆弱性とかついて乗っ取られる事案も結構みかけますしね。


そうだよね。そうなるとクライアントは、自分でやることは難しいケースが多いから、制作会社に頼むのだけど。場合によっては「見積もりをとってから」みたいに時間がかかることもあるよね。

こういうとき、すぐ対応してくれるようにサポート契約を結んでおければいいけど、ランニングコストも大きくなるからそうできないケースも考えられる。こういう場合はどうしたらいいだろう?


うーん……。だとすると、最初からCMSが入っていて、その辺の管理もやってくれるようなサービスなら心配ないですかねぇ。


イエス!

例えば、CMSのソフトウェアでもサーバー管理側で常に最新版にしてくれるようなサービスであったり、CMS機能のあるWebサービスを利用するという方法もあるよ。


なるほどです。

そういうものを利用すれば、安心して運用することができますね!


あとは、クライアントのやりたいことにあわせて、自由度を選定することも大きなポイントになるかな。


自由度……、それってどういうことですか??


例えば、やりたいこと別での選定はこんな感じだね。


  • Webサイト作成サービス : 日々更新する箇所は無し。会社情報や連絡先など固定した情報を発信できればいい。
  • Webサービス型CMS : ニュースなどを日々更新したい。デザインカスタマイズ性の高いサイトにしたい。
  • クラウドインストール済みCMS : デザインのみならず、プラグインなどで機能を追加したサイトを作りたい。
  • ソフトウェア型CMS : 自社で運用しているサーバ内で、Webサイトとシステムを連携させるなど、自由に拡張・管理したい。

なるほど、クライアントのやりたいことによって管理や運営コストとのバランスを考えて選ぶ、ということが重要ということですね!


That's the answer! その通り!


(なんでいきなり英語? しかも同じようなこと2回言ってるし、普通ならexactly!とかじゃない? ま、どうでもいいか。)

あと、クライアントは「スマートフォンの普及も気になるので対応したい」とおっしゃっているんですが、どう対応すればいいのでしょうか?


Webサイトのスマートフォン対応については、ちょっと長くなるかもしれないので、詳細はまた別の機会で説明するけど…スマートフォンに対応したデザインと投稿用アプリなどが必要になるかな。


なるほどなるほど、ではまた詳しく教えてください。

はやせさん、続けてで恐縮ですが、実際にCMSを使ってどうやってWebサイトを作っていけばいいですか?


あ、ごめん。今からラーメン食べに行かないといけないんだった。続きはまたの機会に! バイバイキ~ン




自分のクライアントに、どういったものをお勧めすればいいかなんとなく分かってきた「りん」。

りんは、CMSを使って、どうやってWebサイトを作っていけばいいかというモヤモヤを残しつつ、「アンパンマンかよ! 」と心のなかでツッコミながら、本日は帰宅することにしたのでありました。

次回は、「企業サイトのサイト構造と権限について」ご紹介します。

執筆者紹介

早瀬将一

シックス・アパートにて、主にWebサービス型CMS「MovableType.net」の製品企画を担当しています。個人活動として、大学時代から音を中心としたインタラクティブ作品を制作。音に限らない作品やソフトウェアも作ってます。詳しくはWebで!