ディスプレイの最先端技術が集う国際会議「SID(The Society for Information Display)/DW(Display Week) 2024」が、5/12~17の会期で米国San Joseにて開催された。数々のディスプレイ技術が競う中でも、昨年のノーベル化学賞を受賞した量子ドット(QD)が、次世代ディスプレイ技術の主役となる方向性が具体的に見えてきた。
基調講演や展示で存在感を増した量子ドット
シンポジウム冒頭に行われた3件の基調講演のトップには、昨年10月にノーベル化学賞を受賞したマサチューセッツ工科大学のMoungi Bawendi教授が登壇した。
Bawendi教授は、1980年代の量子サイズ効果の発見から始まり、現在のディスプレイ応用に至る道のりを振り返ることで、量子ドットが現在のディスプレイ技術の発展に果たしてきた道のりを判りやすく聴衆に解説した。
またシンポジウム全体では、QDのノーベル化学賞受賞を祝う特別セッションを始め5つのQD専門セッションが開催され、各講演者からはノーベル化学賞受賞を祝福する発言とQD開発の歴史に触れる内容も多く見られたほか、マイクロLEDセッションなどでもQDを応用した技術の発表などもあり、QDがディスプレイ技術の様々な所に浸透し始めた事が感じられる。さらには、併設の展示会でも、QD材料のトップメーカーであるNanosys/Shoei Chemicalを筆頭に、多くのQD関連技術や製品の出展が行われた(図1)。
QDのディスプレイ応用の特徴を視覚的に訴えるNanosys/Shoei Chemical
SID/DWは、一週間の期間中に様々なイベントが催されるが、その中でも展示会はディスプレイ関連技術や製品を直接見てその内容を容易に理解することができる重要な場である。
QD関連の展示では、Nanosysが存在感を示していた。Nanosysは、2001年にBawendi教授も関わって設立されたQD材料メーカーであり、一貫してQDの実用化に向け業界をリードしてきた。2023年9月に日本の昭栄化学工業に買収され同社の一部門となったが、業界ではNanosysブランドを前面に出してQDの普及に向け引き続き大きな役割を果たしている。
Nanosys/Shoei Chemicalの展示ブースでは、QDのディスプレイ応用の様々な特徴を判りやすくデモしていた。QDがすでに製品化されている事例として、LCDの広色域化とカラーボリュームの拡大を実現する技術、OLEDとの組み合わせによる高性能なQD-OLEDディスプレイ、より廉価にQDを普及するためのxQDEF拡散板などがデモされている。また、蛍光材料KSFとの比較で、QDの応答速度の優位性を動画デモする内容には多くの見学者が集まり、人々の投票で選ばれる「People's Choice Awards」も獲得した。
QDのディスプレイ応用はLCDの広色域化から始まり、現在ではミニLEDバックライトと組み合わせた製品を世界中のTVセットメーカーが出しており、量販店の最前列に並べられて販売されている。
今後の方向としては、注目されているマイクロLEDの色変換層への適用や、OLEDの次の世代の自発光デバイスとして期待されているQD-LED(QLED)に関する開発の進捗もSIDシンポジウムで多く報告されている。これらの次世代デバイスに関しては、別途の機会で触れたい。