前回は、ファイル共有の手始めとして、SharePointサイト上のドキュメント ライブラリに単純にファイルを格納する方法を説明しました。最終回となる今回は、共同編集とバージョン管理について説明します。
共同編集
アップロードしたファイルは、複数のユーザーが編集できるようになります。Officeアプリケーションの場合は、ドキュメント ライブラリから直接ファイルを開けます。同時に複数のユーザーから編集させたくない場合は、「チェックイン/チェックアウト」機能を使って、排他制御できます。ファイルをチェックアウトすることで、他のユーザーは上書き保存ができなくなります。編集が終わったらチェックインし、他のユーザーが編集できるようにします(チェックアウトされていることがわかるように、ビューにチェックアウト先のユーザー名を追加表示することも可能)。
なお、Word 2010、PowerPoint 2010では、ドキュメント ライブラリ上のファイルに対して、複数のユーザーによる共同編集がサポートされています。この場合は、チェックイン/チェックアウトを行わず、各ユーザーは直接ファイル編集します。
Wordの同時編集。Word 2010の場合は、ユーザーが編集している段落ごとにロックがかかる。画面ではログオンしているユーザーは、contoso\administratorだが、緑色にハイライトされている部分が別ユーザー(contoso\kato)が編集していることを表している |
Excel 2010の場合は、SharePoint上にOffice Web Appsがインストールされている場合に限り、Webブラウザ上からExcelファイルを複数のユーザーで同時編集できるようになっています。
Office Web Apps について
Office Web Appsは、Office 2010のアプリケーションファイルをWebブラウザから参照、編集する機能です (Office 2007の場合は表示のみが可能)。SharePoint Server 2010に追加インストールすることで利用できるようになります。 なお、この機能を利用するには、Office 2010のライセンスが必要になります。Office Web Appsに対応しているのは、Word 2010、Excel 2010、PowerPoint 2010、OneNote 2010です。
バージョン管理
バージョン管理は、基本的にバックアップの目的で利用する機能です。ドキュメント ライブラリ上のファイルを編集する際に、ユーザーは任意のタイミングでファイルのバージョンを作成できます。バージョンには、メジャーバージョンとマイナーバージョンの2種類があります。
メジャーバージョン(1.0, 2.0,...)は完成したファイルであり、マイナーバージョン(1.1,1.2,..,2.1,2.2,..)は下書き段階のファイルです。SharePoint内部では、1つのファイルに対して複数のバージョンを持たせることができますが、ユーザーには常に最新のバージョンが提供されます。ただし、ドキュメント ライブラリの設定により、マイナーバージョン(下書き中)は編集中のユーザー以外の他のユーザーには内容を非表示にし、最新のメジャーバージョンのみを表示できるように設定することも可能です。
ファイルサーバで同様に利用する場合、ファイル名に番号を追加したり編集日付を追加したりして、バックアップを兼ねて複数のファイルを保存しておくことが多いと思います。この場合、最新のファイル名を常にユーザーに知らせる必要があります。しかし、SharePointでは、同一のファイル名のままで内部的に複数のファイルを持つことができるため、ユーザーはファイル名さえわかっていれば、常に最新のファイルを利用できるようになる利点があります。また、誤ってファイルを編集し保存してしまった場合には、以前保存したバージョンを復活させて、最新バージョンと置き換えることもできます。
バージョンの作成は、前述したチェックイン/チェックアウトを利用します。チェックインのタイミングで、現在のバージョンを上書きするか、新しいマイナーバージョンを作成するか、メジャーバージョンにするのかを指定します。
アクセス権限
文書管理を行う上でセキュリティ管理も重要となるため、ここでSharePointの基本的な権限管理について少し説明しておきます。
SharePointでは、既定で「サイト→リスト・ライブラリ→アイテム(ファイルやフォルダ)」の順でアクセス権限が継承される(アクセス権限が自動的にコピーされる)ようになっています。したがって、SharePointサイトに設定したアクセス権限がサイト内の全コンテンツの既定のアクセス権限となります。
SharePointサイトに対するアクセス権限の設定は、サイトの管理者が行います。組織内でSharePointを利用する場合は、通常、Windows認証を使うため、サイトの管理者はActive Directoryドメイン上にあらかじめ登録されている既存のWindowsユーザーやWindowsグループに対して権限を設定します 。付与する権限は、SharePointでは 「アクセス許可レベル」と呼んでおり、主に次の3つがあります。
SharePointサイトで使用する基本的なアクセス許可レベル
アクセス許可レベル | 説明 |
---|---|
フル コントロール | サイトの管理権限を持ちます。SharePointサイト管理者とは一般に、サイトに対してフル コントロールを持つユーザーのことを指します。 |
投稿 | 管理権限は持ちませんが、お知らせページに対する記事の投稿やファイルアップロードができます。 |
閲覧 | SharePointサイト内のコンテンツの参照のみが許可されます。 |
表に挙げた以外にも、複数のアクセス許可レベルが存在しますし、より詳細な権限設定も可能です。しかし、複雑な設定になると管理も煩雑になりがちであるため、まずは必要最低限のこの3種類をうまく利用していくことから始めていくとよいでしょう。
サイトから継承されたアクセス許可レベルは、リスト・ライブラリやアイテム単位で切り離すことが可能です。たとえば、特定のライブラリの内容だけは、サイト全体の設定とは異なり、特定のユーザーには表示させないといった設定ができます。なお、SharePointではアクセス権限を持たないコンテンツ(サイト/リスト・ライブラリ/アイテム)は、そのユーザーに対して非表示となるため、その存在を隠ぺいすることも可能です。
まとめ
この連載では、SharePoint Server 2010が持つ基本的なファイル共有機能について説明してきました。今回紹介した機能だけでもなかなか盛りだくさんですが、SharePoint Server 2010では、今回ご紹介した機能以外にも、ワークフローと組み合わせてファイルを処理するといった、様々な文書管理の機能が用意されています。連載では、その中でも、SharePointの利点を活かす最も基本的な使い方にのみ機能を絞ってご紹介してきました。本記事が、SharePointを利用することで業務の効率化につながるきっかけとなれば幸いです。
山崎 愛(YAMASAKI Ai) - オフィスアイ 代表取締役
1999年よりマイクロソフト認定トレーナとして、マイクロソフト製品の技術教育に従事し、システム管理、.NETアプリケーション開発などに関する研修コンテンツの企画、開発、実施を行う。2008年4月にオフィスアイを設立。現在は"SharePoint Server"に特化したコンサルティング、技術研修、ソリューション開発およびサイト構築支援などを行っている。 2004年に米MicrosoftよりSharePointの分野にて日本初のMicrosoft MVP(Most Valuable Professional)として表彰され、以後現在まで連続受賞。主な書籍に、「ひと目でわかるSharePoint Server 2007(日経BPソフトプレス)」、「VSTOとSharePoint Serverによる開発技術(翔泳社)」がある(いずれも共著)。