節電の必要性が高まると目の敵にされるのが「冷房」だ。今夏は、電車も飲食店もどうもスッキリしない温度になっている。家庭でも、「心地よい温度に冷やすのは罪悪感がある」といった人もいるのではないだろうか?
まず、盛夏の日中に日本全体の消費電力量が跳ね上がる原因は、明らかに冷房需要だ。当然、涼しい日は消費電力も少ない。これだけ一気に跳ね上がるのだから、全員が冷房を少々自粛したら全体量もそれなりに減るだろうという考え方自体は間違っていない。ただ、エアコンの消費電力が意外と少ないことも知っておきたいところだ。
スペック表で確認できる消費電力は機種によって違いはあるものの、400~2000W程度の数値になっていることが多い。ここで、同時に記載されている「期間消費電力量」にも注目したい。これは1年間の冷房と暖房をエアコンに頼り切ったら年間の電力消費量がどうなるか、という数字だ。
1日18時間、夏期・冬期合計して280日、総計で5,040時間エアコンをつけていた場合の合算消費電力のはずなのだが、1時間当たりの消費電力を計算すると意外な数字が出てくる。家庭用の8畳に適応するとされている2.5kWクラスの場合、目標年度2010年の省エネ基準達成率が100%の製品で170W前後だ。方々で公開されている実測データも1度冷えた後の運転中の消費電力は100W以下から150Wまでというものばかりだから、運転開始時などを含んだ平均値としては正しい数値なのだろう。
エアコンは風量と運転を自動にしている場合、運転開始時には猛烈に働くが設定温度に近づけば省エネ運転に切り替わる。きちんと遮光を行い、窓・ドアをあけっぱなしにしないように気をつけていれば運転中はそれほど大量の電力を使っているわけではないのだ。
これは電源オン/オフで考えた時だから、設定温度を多少調整したところで大きな差は出てこないと予想できる。ある調査によれば、家庭用エアコン2台の設定温度を2度ずつ上げても52Wしか節約できないらしい。
室外機を日陰に入れたり、水をかけたりして温度を下げたり、すだれなどを活用して日光を遮り室温を下げたりすることは重要だ。こうした対策を行ったうえでエアコンを利用すれば、冷房効率は高いし、そもそも下げなければいけない温度も減らせるから消費電力も少なくなる。ここで言いたいのは、そうした対策を打ってもまだ暑いならば、「ムリをせずにエアコンを使おうよ」ということだ。
今回紹介したのはあくまでも最新の家庭用エアコンの数値だ。古いモデルならば消費電力はもっと大きいし、業務用エアコンもまったく違う数値が出てくるだろう。ただ、どうも期待しているほどの効果がなさそうだということは見えてくる。「ウチはエアコンを我慢して節電!」という方は、実際どれだけ節電できているのか確認してみたほうがよいかもしれない。