今夏、節電と言えば、とりあえず冷房の「28度設定」が浮かぶ。しかし、この「28度」という値は本当に適正なのだろうか? 「暑いけど仕方がないから28度で我慢する。やっと最近、慣れてきた」という人もいれば、「正直なところ、28度では作業効率がまったく上がらない」という人もいるといったように、「28度設定」は微妙なラインではないだろうか。
しかし、「みんなが頑張っているんだから、耐えられないことはない」なんて、考えないほうがよい。
室温が完全に28度になっていれば、外気温よりはだいぶ低いので工夫と慣れでうまく過ごすことはできるだろう。しかし最近のオフィスビルは、大きな窓からさんさんと降り注ぐ陽光で空気が暖められているうえ、窓は開けられないことが多い。しかも、広大な1フロア構成だと、十分に冷気が行き届かず、空気の巡りが悪い一角だけ室温が数度高いということもありがちだ。
また、仮に室温が28度だったとしても、湿度が70~80%にもなれば、十分に熱中症の危険はある。要するに、「室温を28度にする」のではなく「エアコンの設定温度を28度にする」と考えていた場合、状況によってはギリギリの状態かもしれないのだ。
では、節電が求められている状況のなか、どうすれば快適に過ごせるのだろうか? 例えば、十分な水分補給はもちろん、保冷剤や冷却ジェルを首・腋窩・鼠径部などを冷やして効率的に体温を下げるなどの工夫が考えられる。コンセントを使わないUSB給電の扇風機などを使ってもよさそうだ。体に直接風を当てるとかなりラクになる。そのうえ、メントール系のウェットシートなども利用して涼感と気化熱も取り入れればさらに快適だ。
「USB給電の機器を使うとPCの消費電力が増えるじゃない」という方には、乾電池で動くタイプの商品に夜間電力で充電した電池を使うことをオススメする。
さまざまな工夫とガマンで乗り切らなければならい緊急事態ではあるが、経営層はこうした緊急事態の対応を常識にしないでほしい。もちろん、この機会にさまざまなことを見直し、無駄を削減するのはよいこと。しかし、節電はやりすぎると「違法」になりかねないのだ。
労働者の健康を維持するための法律「事務所衛生基準規則」には、「17度以上28度以下、湿度40%以上70%以下にするよう努めなければならない」と努力義務が課されており、「室温30度でも我慢していろ!」というのは、義務違反になる可能性もある。
またオフィスの明るさも、「精密な作業は300ルクス以上、普通の作業は150ルクス以上、粗な作業は70ルクス以上を確保すべき」とされており、さらに「明暗の対照が著しくなく、まぶしさを生じない方法をとるように」とまで指示されている。
やみくもに蛍光灯を間引いた結果、薄暗いなかでディスプレイの光で作業しているような席はないだろうか? 28度設定ではあるものの、窓際の席が31度になっていたりはしないだろうか? 9月まではいろいろとガマンが必要なことは事実だが、ぜひ労働環境として正常な状態を保ちつつの取り組みを目指してほしい。