ちなみに安全検証センターでの試験に関しては、ISO13482を含めた安全検証ということに対して生活支援ロボット実用化プロジェクトの成果を社会に実装していくことに加え、世界のサービスロボットに関するデータを安全検証センターに全部集めて常に世界の最先端を走っていかないとならないということを考えると、2つのことが挙げられるという。

1つは、サービスロボットの安全性を確認するために、休まずにデータを提供していかなければいけないということ。もう1つは、常に最先端でいるための試験をしていなければ、落ちてしまうということ。新しい試験をどんどん行っていきたいとする。そして、そのことから早く多くのロボットの試験を行いたいとしている。

安全検証センターは現在、経済産業省の「ロボット介護機器プロジェクト」でメインに使われているので、本来であればそのプロジェクトのロボットのみの試験を行わなければいけないそうだが、同プロジェクトはJARIと産総研の共同プロジェクトの中で行われているものなので、同プロジェクトの空き時間の時には、共同研究でほかのこともしようということになっているという。そのほかのことの一環として考えられているのが、一般メーカーからの委託試験を受けてしまおう、というものだそうだ。

それではどのような利用ができるのかというと、先程、実際に試験を行ってみなければ、サービスロボットの危険性を確認できないため、実際の危害のひどさとリスクアセスメントシートに記入した数値が見込み違いが生じてしまう可能性があるという話をした。だったら、事前に自社で試験を行えばいいという話になるわけだが、大手メーカーならいくらでも可能だろうが、中小企業の場合、可能な試験もあるだろうが、自社では難しい試験もある。そういう場合に活用できるというわけだ。比留川部門長の講演でも触れたが、安全検証センターには大小18種類の試験設備が用意されている。よって、この試験はこっちの企業に、この試験についてはこの大学に、などと大変な思いをせず、多くの試験をまとめて行えるというわけだ(さすがに世の中の試験のありとあらゆるものを行えるわけではないが)。

また検証センターは、各種アドバイスも行っている。試験の企画、試験結果に関してなど、開発から認証までのさまざまな段階でアドバイスやサポートを受けられるというわけだ。例えば、試験で電磁波を当てたら暴走してしまったというような状況になった時に、どう対応すればいいかということもその場でアドバイスしてもらえるという。ISO13482を取得したいけどよくわからない、というような場合も安全検証の計画立案のサポートをしてもらえる。そして最後にはもちろん、間違いのない信頼できるデータを提供できるというわけだ。藤川室長は、何度も述べているが、ぜひ活用してほしいし、こうしたことが安全検証センターの大事な役割だとしている(画像72)。

画像72。安全検証センターの役割

改めて安全検証センターについて説明すると、目的はサービスロボットおよび関連機器の試験・研究を実施することで、メーカーなどに早期にデータを提供して、製品の普及を促すことが1つ。そして試験・研究の実施により、評価技術を向上させることで、サービスロボットの安全検証をより確実なものに改良することだ。対象分野は、1つがサービスロボットおよびその中に含まれるが、福祉・介護ロボット。もう1つが、事業の実施がロボットの普及や評価技術の向上につながる分野としている。また結果の扱いに関しては、委託元とは守秘義務契約を結ぶので、企業名、試験結果をそのまま公表することはない。ただし、向上した技術をほかの試験・研究に利用することおよび国際標準化に活用することには使われるとしている。

また、安全検証センターを利用する上での依頼者の負担費用は、人件費や産総研から借り受ける試験用機器などの実費となっている。営利目的ではないので、費用負担は試験を行う上での必要なもののみで、利益を載せた費用ではないという。ちなみにEMC試験だと、ほかの施設の場合は1日に25~30万だそうだが、安全検証センターは18万円ほどで済むそうだ(ただし、試験内容によって変わってくる)。費用を抑えられるので、まずは相談してほしいということだ。

藤川室長の講演「国際標準化と生活支援ロボット安全検証センターでの受託試験・研究」は、内容的に一般読者向けではないところも多く、実際にサービスロボットを作ろうとしている企業の担当者向けという形である点と、若干比留川部門長の講演とも被る部分はあったが、ISO13842や安全検証センターについて、関係者向けであるが故になかなか興味深い部分を紹介できたと思う。次回からは、(JQA) 認証制度開発普及室の浅田純男室長による講演「生活支援ロボットの安全認証」をお伝えしたい。