さらにHALに関する紹介も行われた。HALはISO13482の認証をドラフト段階で受けていることは前述した通りだが、そのほかに医療規格のISO13485の認証も受けたという。つまり、海外での福祉ロボットが医療ロボットに含まれることに対応済みというわけだ。
Wingletについても紹介された。筆者も何度か体験させてもらっているのだが、知らなかった機能が、「変な」乗り方をするとぶるぶると振動してそれを教えてくれるということ(最近のモデルになって追加されたのかも知れない)。あと、やはり発表当初はなかったような記憶があるのだが、Wingletは飛び降りると、その場で急停止できるようになったようだ(そのまま野放しで走る心配がなくなっている)。歩行者が手で停止させられるシーンも公開されていた(動画4)。ちなみにWingletは発表当初、S、M、Lの3タイプがあったが、現在はSがなくなって従来のMがSの扱いになるなどラインアップの整理もされたが、同時にソフトウェア面でのアップデートもかなり進められているようである。
そのほか、搭乗型ロボットとしては、アイシンの電動車いすベースの搭乗型移動ロボットも紹介された。こちらは、最高速度が従来の上限である時速6kmから4kmほどアップされており、10kmで走れる。動画も公開されていたが、これが結構速い感じだ(動画5)。ちょっと大げさかも知れないが、何か新しいモータースポーツ的な競技ができるのではないかというほどである。比留川部門長によれば、この速度は結構怖いそうだが、風を切る爽快感も確かにあるそうだ。
また搭乗型移動ロボットとして、IDECのゴルフカートをベースにしたロボットも紹介された。段差を検知する機能、人の検知も含めた屋外対応の3Dレーザレンジファインダ(坂道の下から登った先にいる人なども検知できる)、安全無線非常停止システムなどが搭載されている(動画6)。ちなみに余談だが、日本のゴルフ場で利用されている通常のゴルフカートは、中には安全設計的に問題がある作り方をされているものもあるという。リモコンで呼び寄せた場合、電波が切れると機能安全の考え方としてはそこで停止すべきだが、走り続けるものも普通にあるそうで、実はゴルフカートによる事故は珍しいことではないそうである。
以上が、比留川部門長による講演「生活支援ロボット実用化プロジェクトの概要/成果」だ。改めてまとめると、ISO13482が正式発行されたこと、同規格の認証スキーム、開発支援ツール、安全検証センターを含めた試験方法が開発され、早くも2つのロボット(ロボットシステム)が同規格の認証を受けたこと、そのほかサービスロボットのさまざまな安全技術が開発されたことなどが同プロジェクトの主立った成果なわけだが、比留川部門長は冷静に見ており、これで一気にサービスロボットの市場が開拓されるというわけではないとする。ただし、いくつもある課題の内、とても大きなものであった安全性の問題はめどが立ったのではないかという。今後、2020年を目指して本格的なサービスロボットの市場が開拓されるのを期待したい。