「ISO13482」だが、前述したように生活支援ロボット実用化プロジェクトのメンバーが草案を提出し、諸外国との交渉の末、日本主導で正式発行に2014年2月に至ったというわけである。ISO13482は画像43にある通り、8項目+付属書A~Eで構成。8項目は、適用範囲、参照規格、用語と定義、リスクアセスメント、安全要求事項と保護方策(代表的危険源(エネルギー源、振動、熱、耐久性など)に対する要求事項)、安全関連制御システム要求事項(安全関連制御システム(停止、速度制御、環境センシング、力制御など)に対する要求事項)、検証と妥当性確認、使用上の注意となっている。また付属書は、パーソナルケアロボットの重大ハザードリスト、作業空間の例、安全防護空間の遂行例、パーソナルケアロボットの機能タスク例(ロボットの例示)、パーソナルケアロボットのマーキング例という具合だ。
適用範囲は、年齢や能力に関係なく、意図した機能を利用者の生活の質の向上のためにタスクを実行するロボットで、主に移動作業型、人間装着型、搭乗型の3タイプがある。また参照規格とは、ISO13482はまったく独自のものではなく、参照すべき規格があるということを表す。それから適用外に関しては、画像44の右下の通りで、時速20km以上で走るロボット(=自動運転機能を備えた自動車)、オモチャ・ホビー用途、水中・飛行型、FA、医療、軍事・治安用のロボットである。
比留川部門長が適用外で気になるのが、医療用が適用外である点だという。日本では福祉・医療と近い分野なのでまとめて扱われることも多いが、基本的にはそれぞれ独立した分野であるのはご承知の通り。日本の基質として、軍事用途のロボットを開発しづらいため(表だって軍用無人機を開発しているのは自衛隊の研究開発部門のみ。詳しくはこちらを参照)、基本的には福祉用として開発されているロボットがとても多いのだが、実は欧米では「Medical(メディカル)」として福祉も医療も1分野で扱われている。よって、サービスロボットとして日本で開発した福祉用が欧米では医療用と見なされてしまうため、この「医療機器としてのロボットは適用外」ということがどう影響してくるかが懸念されるというわけだ。
さらに、より詳しいISO13482の構成だが、画像45の通り。また、画像46は「安全検証試験方法の開発」と題した、安全検証センターでの試験の様子や、試験の仕組みをまとめたものだが、この辺りは、このあとの講演であるJARI ロボットプロジェクト推進室の藤川達夫室長による「国際標準化と生活支援ロボット安全検証センターでの受託試験・研究」や、JQA 認証制度開発普及室の浅田純男室長による「生活支援ロボットの安全認証」で詳細に触れるので、簡単な紹介とさせていただく。安全検証センターで補足するとしたら、4エリアに多数の試験設備や試験場があるので、ここに持ち込むだけですべての試験を終えられる可能性も高いことを挙げている(サービスロボットの特別な仕様や目的などによっては、100%すべての試験をここで完了できるとは限らない)。
ちなみに、安全検証センターにある4つのエリアは、「走行試験関連」、「対人試験関連」、「強度試験関連」、「EMC試験関連」だ。そして、全部で18の試験設備がある。多目的走行性試験路、傾斜走行性試験路、環境認識性能試験装置、ロボット走行状態模擬装置、3次元動作解析装置、障害物接近再現装置、衝突安全性試験機、静的安定性試験装置、ダミー校正装置、複合環境振動試験機、衝撃耐久性試験機、耐荷重試験機、装着型生活支援ロボット耐久試験機、ベルト型走行耐久性能試験機、ドラム型走行耐久性能試験機、重心移動制御装置、装着型生活支援ロボット強度試験機、電波暗室という具合だ。安全検証センターの各エリアと試験装置については前述したように、後ほどお届けする。