設置場所や電源、ドメイン取得などについてクリアしたら、サーバの運用である。本連載で使用するサーバOSは、多くの企業や事務所で小規模なネットワーク構築に利用されている「Windows Server 2003 R2 Standard Edition」だ。今回は実際にWindows Server 2003 R2を設定する前に、改めて同OSを起用した理由とライセンス事項について確認しておきたい。
本連載で使用するサーバについて
本連載では「NEC得選街」で購入できるタワー型サーバ「Express5800/110Gd」(写真)を例に、サーバのセッティング方法を解説していく。サーバの基本構成は次のとおり。CPU:Celeron D(2.93GHz) / メモリ:1GB / HDD:80GB / OS:Windows Server 2003 R2 Standard Edition。より詳細な構成情報については連載第2回を参照してほしい。
Windows Server 2003 R2は、さまざまなビジネスニーズに応える機能を標準搭載している。また、クライアントOSとしてシェアの大半を占めるWindows XPと同じユーザインタフェースで利用できる点が特徴。パソコンのOSといえばWindowsにしか触れたことがないというユーザーには、コマンド操作も多いLinuxよりも扱いやすいOSだ。初めてサーバを導入する企業にとっても、「扱うのに労力が少なくて済むサーバOS」が重要なポイントとなるが、Windows Server 2003 R2はまさにそのポイントを満たすOSといえる。これが多くの企業が導入している要因のひとつだろう。
サーバOSの種類とライセンス
本連載で使用するWindows Server 2003 R2 Standard Editionは商用OSなので、導入には費用がかかる(第2回で購入した「Express5800/110Gd」には同OSが含まれる)。無料で使えるUNIX系のOSと比べるとコストはかかるものの、初めてサーバOSを扱うのであれば、情報取得の容易さやサポート体制を考慮してWindows Serverを導入するほうが無難だろう。
Window Serverで料金が発生するのは『サーバライセンス』と『クライアントアクセスライセンス(CAL)』である。Windows Serverのライセンス制度は少々複雑で、ライセンスを正しく理解していないと「ライセンス違反」や「ライセンス料の過払い」という事態も起こりうる。ライセンス制度についてはきちんと把握しておきたい。
サーバごとにライセンスが必要
サーバライセンスとは購入したOSを『1台』のサーバにインストールする権利のこと。OSを実行する物理サーバごとに必要となり、サーバの台数分購入する必要がある。「NEC得選街」で購入した本連載で使用するサーバはWindows Server 2003 R2 Standard Editionのプリインストールモデルで(ユーザーによるインストール作業は不要)、サーバライセンスがひとつ付いている。つまり、サーバを1台だけ導入するのであれば、追加でサーバライセンスを購入する必要はない。
Windows Server 2003はプリインストール購入がお得
「NEC得選街」でWindows Server 2003 R2 Standard Editionのみを購入する場合、価格は177,450円(税込)。一方、プリインストール済みのサーバ「Express5800/110Gd」なら、同OSを含む最低価格は99,600円(税込、3月27日までのキャンペーン価格)、キャンペーン終了後でも127,050円(税込)で購入できる。やはりプリインストールモデルを購入するほうが断然お得といえるだろう。
「Enterprise Edition」では、ライセンスを購入すると4つの仮想インスタンスのライセンスが付いてくる。1ライセンスで4台の仮想サーバまで構築できることになる。
パッケージ製品の小売価格は「Standard Edition」および「同x64 Edition(いずれも5CAL付き)」で17万円程度、「Enterprise Edition」および「同x64 Edition(いずれも25CAL付き)」で79万円程度となっている(価格は変動する場合もあるので、事前に確認が必要)。
クライアントにもライセンスが必要 - CALとは?
クライアントアクセスライセンス(CAL)とは、ユーザやクライアントパソコンが「Windows Server 2003 R2」にアクセスするために必要なライセンスのこと。必要なCAL数は「サーバにアクセスするデバイス」または「ユーザ」の数で、Windows Server 2003 R2を利用する場合は必ずCALが必要となる。なお、本連載で使用するStandard Editionには、5つのCALが付いている。まずはこの状態で運用してみて、足りなくなったら追加で購入するとよいだろう。「Windows Server CAL」の価格は3,000~6,000円程度(購入先や購入本数、オプションのサービスによって価格は変動する)で購入できるほか、「NEC得選街」では「Windows Server 2003用追加CAL」として、5CAL/30,345円から提供している。購入したCALは「管理ツール」の「ライセンス」から登録できる。
また、CALには「同時使用ユーザ数モード」と「使用デバイス数または使用ユーザ数モード」の2種類があり、それらのどちらかを選択しなければならない。利用するユーザ、またはデバイス分だけ必要なので、購入前にユーザ数かデバイス数を把握しておこう。各ライセンスの内容は下の表のとおり。
CALの種類
モード名 | 数 | 内容 |
---|---|---|
同時使用ユーザ数モード | 同時に1台のサーバに接続できるユーザ数を表す | 同時にファイルを開く、プリンタを使用する人数が(仮に)10人ならば10個のライセンスが必要 |
使用デバイス数モードまたは使用ユーザ数モード | サーバに接続可能なクライアントパソコンの数(またはサーバに接続できるユーザ数)を表す | 【使用デバイス数モード】ライセンスを持つパソコンは、ユーザを問わずサーバへアクセスできる。【使用ユーザ数モード】ライセンスを持つユーザは、パソコンのライセンスを問わずサーバへアクセスすることが可能 |
Windows Server 2003 R2を使う場合、サーバライセンスとCALの両方が必要になる。サーバライセンスの購入方法は、「プリインストールモデル」「パッケージ製品」「ボリュームライセンス」の3つがある。初期投資を抑えたいなら、本連載で使うサーバのように、サーバライセンスとCALが付いているプリインストールモデルがお勧めだ。OSをインストールする手間も省ける。
ライセンスの種類や価格体系などは慣れるまで少々難解だ。マイクロソフトの「Windows Server 2003 R2 ライセンス情報」のページに詳しく説明されているので、迷ったときは参照してほしい。
Windows Server 2003 R2のインストール
本連載ではWindows Server 2003 R2 Standard Editionのプリインストールモデルを使用するので、OSのインストールや各種デバイスドライバの初期セットアップ作業は不要だ。ただ、万が一OSの再インストールが必要になった場合などに備え、インストールの流れも説明しておく。
Windows Server 2003 R2のインストールの流れは下記のようになる(CD-ROMブートでのインストールの場合)。OSやデバイスドライバのインストールは、クライアントOSのWindowsとほぼ同じなので、迷うことはないだろう。
Windows Server 2003 R2のインストールの流れ |
インストールの事前準備
インストールの際、設定項目や内容を確認しながらの作業ではインストールに余分な時間を費やすことになる。スムーズにインストールを進めるには、設定する内容を事前に把握(準備)しておくことが必要だ。
準備しておくもの
- 「Windows Server 2003 R2」のインストールCD-ROMとプロダクトキー
- 各製品に添付されているハードウェアのデバイスドライバ(ない場合にはメーカのWebサイトよりダウンロードしておく)
- RAIDカードのドライバ。OSのインストール時にRAIDカードのドライバのインストールを行う
今回購入したサーバでは、(2)と(3)は不要だ。ただし、購入時の構成によっては必要となる場合がある。構築環境を念頭に置いて準備しておきたい。
インストール前に決めておくべき事柄
- パーティションの容量(例:OS用に30GB、データ用に50GB)
- 使用者名と組織名
- ライセンスモードの選択(必要なライセンスモードを決定してCALを購入しておく)
- コンピュータ名と管理者のパスワード
- ネットワーク情報(サーバのIPアドレスとサブネットマスクの値を決めておく。インストール後に変更可能)
以上、Windows Serverの扱いに慣れた人には当然の準備なのだが、そうした経験がない人に効率よく作業を行ってもらうために説明した。
第1回から第4回まで、サーバとは? からWindows Server 2003 R2運用前の準備までを紹介した。次回からは実際にサーバの運用に移る。第5回では、Windows Server 2003 R2の初期設定などについて説明する。
文|デジカル/松井秀樹