本連載の最終回となる今回は、定期的に取っておきたい大事なデータのバックアップの方法や、必要な機器を解説していく。また、サーバの運用を快適にするための拡張についても簡単ではあるが触れておく。
本連載で使用するサーバについて
本連載では「NEC得選街」で購入できるタワー型サーバ「Express5800/110Gd」(写真)を例に、サーバのセッティング方法を解説していく(7月現在、NEC得選街では後継機種となる「Express5800/110Ge」が販売されている)。サーバの基本構成は次のとおり。CPU:Celeron D(2.93GHz) / メモリ:1GB / HDD:80GB / OS:Windows Server 2003 R2 Standard Edition。より詳細な構成情報については連載第2回を参照してほしい。
バックアップを取ろう
バックアップが常日頃、大事だと感じている人は多いだろう。
前回、いざというときに備えて、冗長化でデータを保護する方法を紹介したが、これはあくまで常時運用中における処置である。つまり、サーバ管理者がサーバに手を直接加える場合は、別のメディア等にバックアップを取っておくべきである。それは、以下の場合などが該当するだろう。
- サーバを初めて運用環境に配置するとき
- ソフトウェアやハードウェアのアップグレードなどシステムに大きな変更を加えるとき
作業にともない不具合が出てしまった場合に、問題なく動作していた以前の環境へ戻せるようにするための処置である。
バックアップは何に取る?
データのバックアップとは、一般的にはハードディスク以外のメディアにデータをコピーすることを指す。そして、このバックアップ先となるメディアには、さまざまな種類がある。
よくバックアップに用いられるのは、テープデバイスだ。DAT(DDS)や、LTO、AITといったものである。書き換え可能なDVDディスクも利用されるが、容量が少ない。いずれサーバの運用を本格化し、大容量のデータを扱うようになったときに備えて、テープデバイスがお勧めだ。非圧縮で数十ギガバイト、圧縮をかけるとその倍の容量が記録できる。バックアップ装置は通常、対応メディアをひとつに特定していることがほとんどなので、バックアップ装置とメディアで規格の不一致が起こらないよう気を付けてほしい。なお、本連載で使用しているサーバは、DVD-RAM/DAT/LTO/AITのメディアに対応したバックアップ装置がNEC得選街で購入できる。
バックアップの取り方
Windows Server 2003 R2には、標準でバックアップ機能が備わっている。今回は、そのツールを用いてバックアップを取っていこう。
なお、このツールを使って取ったバックアップは、自動システム回復(ASR)セットと呼び、システムを回復させる最終手段として使用することになるものだ(この作業を始める前に、空のフロッピーディスクを用意する必要がある)。起動オプションの「セーフ モード」や「前回正常起動時の構成」などのオプションを全て試しても起動しない……という事態が起きたときに出番となる。
作業方法は以下のとおりである。
<スタート>メニュー→<ファイル名を指定して実行>を選択し、表示されたダイアログで「ntbackup」と入力して、<OK>ボタンをクリック。すると、「バックアップまたは復元ウィザード」が表示される(図1)。
システム全体のバックアップ
<次へ>ボタンをクリックし、「ファイルと設定のバックアップを作成する」を選択して進めると(図2)、バックアップを作成する項目の選択になるので、「このコンピュータにある情報すべて」を選んで<次へ>ボタンをクリックする(図3)。
次に、バックアップの種類や、バックアップ先の指定を行う(図4)。「バックアップの保存場所を選択してください」では<参照>ボタンをクリックして、フォルダを指定する(ここでは、Eドライブに「backup」というフォルダを作り、そこを指定した)。バックアップの名前の欄は、標準で「Backup」と入っているが、必要に応じてわかりやすい名前をつけておくといい。以上で、バックアップの準備は完了だ。ウィザードを終了し、<完了>ボタンをクリックするとバックアップが始まる(図5)。
バックアップが始まると、進行状況は画面で確認できる(図6)。バックアップ対象の容量によっては、時間がかかることもあるので注意してほしい。全てのデータが書き込まれると、ASRセットがフロッピーディスクに書き込まれる(図7)。
これで、システム全体のバックアップが完了する。
指定フォルダのバックアップ
上記は、サーバのシステムに変更を加えるなど、システムの根幹に手を加える前に実行しておきたいバックアップ方法だ。通常の運用では、毎回すべてのデータのバックアップを取っておく必要はない。通常運用のときは、ユーザデータ(一部のデータ)のバックアップだけで問題ないことが多いので、フォルダ指定のバックアップもあわせて紹介しておく。
「バックアップまたは復元ウィザード」の起動後、バックアップを作成する項目で「項目を指定する」を選択して<次へ>ボタンをクリックする(図8。すると、バックアップ対象のフォルダを指定できるので、バックアップしたいフォルダ、もしくはファイルにチェックを入れる(図9)。フォルダにチェックした場合は、その中のファイルも自動的にバックアップのチェックが入る。今回は、前回作成したWebページのフォルダをバックアップの対象にしている。あわせて、「バックアップの名前」も「Backup_web」と変更しておいた。
システム復元の方法
続いて、システム復旧の方法を説明していく。ここでは、ファイルやフォルダの復元と、システムの復元の2パターンが選択できる。
先ほどと同様に「バックアップまたは復元ウィザード」の起動後、今度は「バックアップまたは復元」で「ファイルと設定を復元する」にチェックを入れて<次へ>ボタンをクリック。するとASRディスクが読み込まれ、バックアップの情報が表示される。そこで、復元対象を選択して、作業を行う。
まず、Cドライブにあるシステムに関わらないデータ全体の場合は、「C:」にチェックを入れて<次へ>ボタン(図11)、<完了>ボタンの順にクリックすると、復元が開始される(図12・図13)。
一方、システムの復元を行う場合は、「System State」にチェックを入れて<次へ>ボタンをクリックする(図14)。そこで実際に復元を開始しようとすると、「システムの復元は、別の場所に復元しない限り、常に現在のシステム状態を上書きします」というアラートが表示される。ここで<OK>ボタンをクリックすれば(図15)、復元が開始される(図16)。システムの書き戻しが完了したら再起動を要求されるので再起動をしよう。
これでシステムの復元は完了だ。システムが元の状態に書き戻されたか確認しよう。
OSが起動しないときの復元方法
深刻なトラブルが発生した場合、OSが起動しないことがあるかもしれない。そのようなときも、ASRを使ってシステムを復元できる。ASRでの復元手順は、まずOSのCD-ROMをセットし、CD-ROM起動する。青色のセットアップ画面の最下部に「Press F2 to run Automated System Recovery (ASR)」と表示されるので、ここで<F2>キーを押す。次に、作成したフロッピーディスクをセットして操作を進めれば、復元が始まる。以降はOSのインストール操作と同じなので、迷うことはないだろう
サーバシステムの拡張や増強
ここまでWindows Server 2003 R2を導入したサーバを安心・安定運用するための方法を紹介をしてきた。ただ、普段クライアントOSのWindows XPやWindows Vistaを使っていても感じるだろうが、マシン性能が低いと快適に作業はできない。サーバの処理が遅かったら、データの引き出しに時間がかかってしまい、クライアントユーザの操作にも影響してしまう。サーバにたくさんのデータを保存し、ハードディスクの空き容量に余裕がなくなってしまった場合も同様の問題が起きかねない。
ここからは、サーバをユーザが快適に使うためのポイントをまとめて紹介していく。
いま一度、今回の検証に使っている「Express5800/110Gd」のスペックを確認しておこう。
Windowsを快適に動かすためには、まずメモリが重要だ。メモリが多く搭載されていると、それだけ作業域が広がり、快適に動作するようになる。標準では512MB搭載されているが(検証機は1GB搭載済み)、Windows Server 2003 R2を快適に使うためには1GB以上、予算が許せば2GBのメモリを搭載することをお勧めする。
ハードディスクも容量が少なくなってきたら増設しよう。ハードディスクを内蔵できるベイに空きがあれば、その分増設できる。ただ、本体にある空きベイの全部にハードディスクを増設してしまうのはお勧めできない。本体内に熱がこもりやすくなり、ハードの故障につながりかねないからだ。
社内ネットワーク(LAN)も高速化しよう。よく使われているLANの規格は100BASE-TXで、100Mbpsタイプのものだ。しかし、ネットワークを介して大量のデータを、しかも複数人で扱うには物足りない。今では1000BASE-Tという、理論上100BASE-TXの10倍の速度に対応したものが普及しつつある。1000BASE-Tに対応したネットワークボードを追加すれば、ネットワークがボルトネックだった場合に対応できるだろう(Express5800/110Gdには標準搭載)。
ただし、ネットワークボードが1000BASE-TになったらそれだけでOKというわけではない。例えば、社内のネットワークがいくつかのHUB(ハブ)を中継していた場合は、その全てが1000BASE-Tに対応したものでないと、高速通信の恩恵を受けることができない。ネットワークの速度は、一番遅い規格に合わせられるからだ。
終わりに
本連載では、Windows Server 2003 R2の導入から、ファイルサーバ、Webサーバとして活用し、日頃の運用までを駆け足で紹介してきた。ここで紹介してきたことは、「サーバをまず動かしてみよう」という運用の第一歩にすぎないが、今後、サーバを運用していこうと思うサーバ管理者の一助になれば幸いだ。
(文 : 徳永卓司/デジカル)