規格指定のコンプライアンス・パターンで測定

テストに使用するデータ・パターンが異なると、「9 シリアル・インタフェースの物理層を形成する3大要素 - チャンネル(2)」でご紹介したように回路動作やデータの持つ周波数帯域の広がり、データ遷移密度(全ビットに対して、何%ビット遷移が発生しているか)が変わり、測定結果が異なることになるので注意が必要です。

また測定目的によって、複数のパターンを使い分ける場合が多く、指定されているパターンを使用します。規格によって、USB3.0やPCI Expressのように、これらのパターン生成がチップへの搭載が義務付けられている場合は簡単ですが、規格によっては1000BASE-Tのようにレジスタを設定しないと出力されなかったりする場合もあります。また出荷時にレジスタをマスクしてしまってテストできないケースもありました。そういう場合には、トランシーバのループバック機能を使って、外部の信号発生器からテスト・パターンをレシーバに入力し、トランスミッタから折り返し出力させる方法もあります。USB3.0ではレシーバに対し、低周波周期信号を入力しテスト・パターンを変更させる必要があるなど、規格、チップにより様々ですので、設計時に確認しておく必要があります。逆にHDMIのように特に指定がなかったり、アイドル時のパターンを使用したりする100BASE-Tのような規格もあります。

参考1.

「9 シリアル・インタフェースの物理層を形成する3大要素 - チャンネル(2)」でもご紹介したPRBS(Pseudo Random Bit Sequence)は、疑似ランダム・パターンとして良く知られているパターンで「5 シリアル・インタフェースの物理層を形成する3大要素 - トランスミッタ(2)」のスクランブラと同様にEXORと組み合わせられたn段のシフト・レジスタ(LFSR:Linear Feedback Shift Register)で生成されます。PRBS-n、PRBS 2n-1、あるいはPRBS 2n-1と表記され、データ・パターン長は2n-1となります(表7-4)。8B/10Bのシステムでは使用されませんが、規格参照ではなくトランシーバの手軽な特性評価に使用されたりします。64B/66B符号ではPRBS-9やPRBS-31が使用されます。

段数 データ・パターン長
7 127
9 511
11 2,047
15 32,767
20 1,048,575
23 8,388,607
31 2,147,483,647
表7-4 PRBSパターンとパターン長

参考2.

PCI Expressではレシーバ接続検出後のリンク・アップで、自分が送信したトレーニング・シーケンスと呼ばれるデータに対し、相手のレシーバからのトレーニング・シーケンスでの応答がない場合、コンプライアンス・モードに移行し、自動的に単純な40ビット・パターンをトランスミッタが出力します(図7-6)。このカラクリはUSB3.0も採用されています。コンプライアンス・パターンは、8B10B符号の中で1番長い5ビットの同ビットの継続(最低周波数:データ・レートの1/10)と1ビットごとに「1」と「0」を繰り返すクロック・パターン(最高周波数:データ・レートの1/2)を持ち、75%のデータ遷移密度を持ちます。レシーバ接続検出は、パルスを定期的に送信し、終端が接続されたことによる容量性負荷(時定数変動)で検出します。

シンボル K28.5- D21.5 K28.5+ D10.2
現在のディスパリティ 0 1 1 0
パターン 0011111010 1010101010 1100000101 0101010101

図7-6 PCI Expressのコンプライアンス・パターン

著者
畑山仁(はたけやま・ひとし)
テクトロニクス社 シニア・テクニカル・エクスパート