DC結合ではDCバイアスを印加したり、DCをカットしたりする工夫が必要
PCI Express、USB3.0、DisplayPortなどAC結合されている規格では、オシロスコープの入力に直接接続することが可能ですが、ほとんどの高速シリアル・インタフェースはLVDSやCMLのためにDCバイアスが印加されており、そのままオシロスコープの入力に接続するとグラウンドに対しDC電流が流れて動作が変わってしまいます。
そこで様々な手段でDCバイアスを印加したり、DCをカットしたりします(表7-3)。パッシブとアクティブの2種類の手段があります。中でもディスプレイ系インタフェースのHDMIでは、シンク機器側がDCに終端され、ソース機器が電流を吸い込むように動作するので、ソース機器のテストでは、DCバイアスを印加する必要があります。使用にあたっては周波数帯域、リターン・ロス、挿入損失に注意します。特にパッシブのDCブロックとバイアスTeeはキャパシタを使用していますので、DCがカットされるだけでなく、低周波成分が減衰しますので、低周波パターンが流れる場合には注意が必要です。その点、アクティブではDCから使用できます。
パッシブ
- DCブロック:計測器側にDC成分が流れないようキャパシタでAC結合させるアクセサリです
- バイアスTee:AC信号にDCを印加したり、信号のAC成分とDC成分を分離したりするアクセサリです。AC信号はキャパシタCでDC成分がカットされ、DCはインダクタンスLでAC成分がカットされ、DCを外部電源に接続することで、AC+DCにバイアスが印加された状態になります。DCは通常は終端抵抗を通して電源に接続します(DC終端)
アクティブ
- SMA差動入力プローブ:差動SMA入力を持ち、プローブ内でシングルエンド化するプローブです。通常の差動プローブと異なるのは入力が50オームで終端されており、終端先をDCに接続すればDC終端可能なことです。電源はオシロスコープ本体から内部的に供給したり、外部から供給したりします。1つのチャンネルで差動信号観測が可能なので、3から4レーンの同時観測が可能です
- DC終端機能を内蔵したオシロスコープ:最近では外部アクセサリを併用しなくても内部的にDCバイアスを印加できるオシロスコープも登場しています。オシロスコープの周波数帯域フルに使用でき、外部アクセサリの周波数特性、挿入損失などに気を遣う必要がありません
DCブロック例(Picosecond Pulse Labs製5509) |
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バイアスTee例(Picosecond Pulse Labs製5542) |
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SMA差動入力プローブ例(テクトロニクスP7313SMA型) |
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DC終端機能を内蔵したオシロスコープの例(テクトロニクスDSA73304D型) |
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表7-3 DC結合時接続手段 |
著者
畑山仁(はたけやま・ひとし)
テクトロニクス社 シニア・テクニカル・エクスパート