シリアル・インタフェースでは何を測定するのか?
高速シリアル・インタフェースでは、レシーバが受信した信号からクロックを正しくリカバリし、そのクロック点で正しく論理値を判定してデータをリカバリできることが重要となります。
そのためには
- データ・ラッチ点にて所望の信号レベルが確保されているかどうか?
- ラッチ点から信号のエッジ位置までの時間が確保されているかどうか?
が重要となります。その観点で見た阻害要因、つまり信号劣化の要因は、
振幅方向に関するもの
- 信号レベルの低下
- 信号のなまり、ひずみ
- レベルの変動
- ノイズ
時間軸方向に関するもの
- デューティ・サイクル、UI(Unit Interval:ビット周期)の変動
- ジッタ
があります。
その結果、主な評価方法は、
- トランスミッタ/ソース:アイ・ダイアグラムとジッタの評価(図6-1)
- レシーバ/シンク:ジッタやノイズなどのストレスを持った信号を入力し、正しく受けられることの確認(図6-2)
となります。
各々についてはまた後ほど詳細にご説明します。
ここではどんな計測器を使用するのか?
トランスミッタやレシーバ測定の個々に解説する前に、高速シリアル・インタフェースの物理層測定で使用する主な測定器についてご紹介します。
リアルタイム・オシロスコープ
後述のサンプリング・オシロスコープと区別する意味で、ここでは一般的なオシロスコープをリアルタイム・オシロスコープと呼ぶことにします。
トランスミッタやソース機器のアイ・ダイアグラムやジッタなどの物理層の電気的特性を測定するための中心的なツールは、リアルタイム・オシロスコープです(写真6-1)。リアルタイム・オシロスコープはデバッグやトラブルシューティング、コンプライアンス・テスト、レシーバ・テストのジッタ校正などに広く利用されます。アナログ技術で実現されていた時代のリアルタイム・オシロスコープの周波数帯域は、1GHzがせいぜいでしたが、デジタル化とその後の半導体技術、特にシリコン・ゲルマニウム(SiGe)などの高ft(遮断周波数)の半導体の登場により、扱える周波数帯域が飛躍的に高くなり、今日では30GHzを超えています。A/D変換のサンプル・レートも(単発で)捕捉できる信号の周波数を決定しますが、100Gサンプル/秒も実現されています。
図6-3のようにサンプルが逐次リアルタイムに行われることから、リアルタイム・オシロスコープと呼ばれます。100Gサンプル/秒の場合、10ps間隔で信号がサンプルされることになります。ただし、そのままでは十分な確度が得られないため、サンプルとサンプルの間を補間し、分解能を向上させます。
今日の多くの標準規格のコンプライアンス・テストで利用され、アイ・ダイアグラムやジッタ測定、規格認証テスト(コンプライアンス・テスト)は、オシロスコープに搭載したソフトウェアで実行します。これらは汎用および規格別に用意されています。
例えば筆者らの例ではDPOJETジッタ&アイ・ダイアグラム解析ソフトウェア(図6-4)が、PCI Express、USB3.0、SATA/SAS、FibreChannel、XAUI、10GBASE-CX4、SRIO、OBSAI、DisplayPort、LVDS、V-by-one HS、MIPI D-PHYなどに標準あるいはモジュール追加で対応。一方、DVI、HDMI、USB2.0、Ethernet(10/100/1000BaseT)、IEEE1394.aなどには専用のソフトウェアが対応します(図6-5)。またUSB3.0、PCI Expressは規格団体でも標準テスト・ソフトウェアを用意しています。