市場動向調査企業である台湾TrendForceは10月26日、中国・上海で「コンポーネント業界の開発動向とチャンス」と「産業革新とアプリケーション動向の見通し」をテーマに、2018年の半導体・ディスプレイ・IT業界予測発表会を開催した。このイベントには、半導体、人工知能(AI)、ネットワーク通信などのハイテク産業の従事者から、金融機関や主流メディアの関係者まで、500名余の専門家が出席した。

今回のイベントでは、メモリ、半導体部品、ディスプレイ、LED、5G、IoT(Internet of Things)、AI、自動運転車、新エネルギー車向けバッテリなど幅広いホットな話題が取り上げられ、TrendForceのベテランアナリストが2018年の動向を予測した。この連載では、このプレゼンテーションを要約して紹介していきたい。

図1 会場風景:開会の挨拶をするTrendForce理事長のC.L. Liu氏と会場を埋め尽くす聴衆 (画像提供:TrendForce)

どうなる? DRAM市場の需給ひっ迫

図2 DRAMeXchange調査担当VPのKen Kuo氏 (画像提供:TrendForce/DRAM eXchange)

TrendForceによるDRAM市場の最新分析では、2017年にPC向けDRAMの価格が2016年と比較して平均60%上昇すると予測されている。スマートフォン(スマホ)の世界的な出荷台数の増加により、モバイルDRAMは、 DRAM製品のアプリケーション中、最大のカテゴリになっているほか、サーバ向けDRAMもクラウドコンピューティングとビッグデータのおかげで需要が急速に増加している。

TrendForceのメモリ調査部門であるDRAMeXchangeの調査担当バイス・プレジデントを務めるKen Kuo氏は、「2017年にDRAMのビット出荷量は20%近く増加すると予測している。この増加率は、ここ数年の増加率よりも低い。さらに微細化への技術移行の減速と、DRAMサプライヤの設備投資への消極的な姿勢のために、DRAMは供給不足をきたしている。DRAMサプライヤが生産量を増やすより利益を高く維持することを目指してきたからである。TrendForceは、2018年のDRAM業界はSamsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyにより支配されると予想している。これらトップサプライヤ3社は、いずれも生産能力を大幅に拡大するつもりはないので、DRAMの高価格は2018年も継続し、彼らに健全な利益をもたらすだろう」との予測を述べた。

AIの半導体産業への影響が拡大

図3 TrendForce調査マネージャーであるJian-Hong Lin氏 (画像提供:TrendForce/DRAM eXchange)

世界のトップ3のスマホブランドとモバイルSoCの主要サプライヤは、すべてAIアクセラレータICやアプリケーション開発キットなどのハードウェアおよびソフトウェア製品を提供している。

「AIは2018年の半導体業界に大きな影響を与えるだろう」とTrendForceの調査マネージャーであるJian-Hong Lin氏は述べている。Lin氏は、AIは2つの側面から半導体産業に影響を及ぼすと考えているという。

まずはじめに、AIはセンサ、ハードウェアアクセラレータ、メモリソリューション、ネットワーキングアーキテクチャなどの新製品やテクノロジーとともに関連アプリケーションが登場するにつれて販売チャンスが生まれるという点。これらの技術が登場すれば、データセンターやサーバのアップグレードも促進される。一方、インダストリアル4.0というコンセプトの下で、AIが製造の変革の一環として半導体製造に導入されつつある、という。

もう1つは、AI技術が2018年の半導体製造の現場でますます重要な役割を果たすという点。サプライヤは、新たな生産モデルを採用し、さらなる市場機会を求めてさまざまな運用上のプレッシャーに直面しながらもプロセスのやり方を高度化させることで差別化する必要があるという。

次回は11月9日に掲載です