世界的な購入意欲減退で売れなくなったテレビ市場

テレビ市場における新型コロナウイルスの感染拡大の影響は最初に中国市場で出てきた。新型コロナウイルスの感染拡大に対し、中国政府は都市の封鎖を実施、2月から一部の店舗の開店を許可せず、工場稼働スケジュールも延期させ、陸海空のすべての輸送の制限を行った。この結果、中国でのテレビ製造におけるサプライチェーンでの労働力や物資不足が発生した。

3月に入ると、中国での感染拡大の速度が鈍化する一方、欧州や米国での感染拡大が加速し、世界中の人々のテレビの購入意欲を減退させる結果を招いている。そのため、テレビ産業は現在、供給側と需給側の両方からの圧力にさらされる状況となっており、TrendForceでは、2020年第1四半のグローバルでのテレビ出荷台数予測を従来予測の4880万台から4460万台へと下方修正。第2四半期についても従前の4760万台から4410万台へと下方修正をしている。

さらにUEFA EURO 2020と東京五輪が2021年開催に延期されたこともテレビ需要を弱める結果となり、TrendForceでは通年のテレビ出荷台数を前年比5.8%減の2億520万台へと引き下げているが、今後も北米ならびにアジアの新興国地域での新型コロナウイルスの感染拡大が続く可能性があるため、テレビ出荷台数のさらなる下方修正の可能性も指摘している。

在宅勤務需要で販売増も通年での購買意欲低下に悩むノートPC

新型コロナウイルスの感染拡大により、グローバルシェアトップ6のノートPCメーカー各社は、その多くが中国を拠点としていることもあり2月、生産能力を大きく減少させることとなった。そのため、TrendForceでは2020年第1四半期のノートPCの出荷台数予測を従来の3500万台から2790万台へと下方修正した。その後、中国での新型コロナウイルス感染の収束が始まり、各ノートPCメーカーは生産工場の稼働率を70%に引き上げたが、上流のコンポーネントメーカーなどでの稼働率が依然としてあがっておらず、通常の供給レベルに戻るには5月までかかると見られている。

3月には、ノートPCの売り上げの50%以上を占める欧州と米国市場で新型コロナウイルスの感染拡大が進み、教育用Chromebookや在宅勤務用ノートPCの需要が急増したが、世界的なパンデミックが短期的に解消される可能性は低いとみられ、消費者の購入意欲の低下が2020年後半の感謝祭やクリスマスまで続く可能性もあるとTrendForceでは見ており、2020年通年のノートPCの出荷台数予測を従来の1億6240万台から1億5670万台に下方修正している。

需要減退が長引けば業界再編の可能性もあるスマホ市場

新型コロナウイルスの感染拡大で低迷する世界経済と同じく、家庭用電化製品も全体的に需要が減少することが予想されており、スマートフォン(スマホ)市場もそうした消費者の意識の変化に伴い、新機種への買い替えを延期する可能性が高まっているという。その結果、スマホの買い替えサイクルは長期化し、販売数を増やしたい供給側は端末価格を引き下げるなどの取り組みを強いられることになると見られている。

また、サプライチェーン全体のコスト(人件費、為替レートの変更に関連するコストなど)が上昇すると、スマホブランドの収益性が低下することも予想され、それが業界再編を引き起こすかもしれないともTrendForceでは指摘しており、生産台数の見通しを下方修正している。

各国での工場の操業停止に悩む自動車業界

新型コロナウイルスの感染拡大は自動車産業にも大きな影響をおよぼしている。感染拡大初期は、 中国の部品工場が稼働できず、その部品を輸入できないという理由から、日本、韓国、欧州の複数の工場での資材不足による操業停止が生じたが、最近は中国の工場が稼働を再開したものの、世界中に感染が拡大しており、各国内部での資材調達が難しくなったり、工場勤務者の感染判明による操業停止、当局による指示による操業停止などが各国で起こるようになっている。

特に欧州はイタリアとスペインがロックダウンを実施した後、ほかの欧州各国が追随しはじめ、米国も国家非常事態宣言を出したこともあり、多くの自動車メーカーの欧米地域での工場の操業停止を余儀なくされている。

新車の生産台数の低下に加え、ロシアとサウジアラビアを中心とした原油価格をめぐる攻防によって引き起こされた株式市場の混乱も新車購入意欲を減退させ、購入の延期や、最終的には買わないという選択する消費者も出てくることが予想される。そのためTrendForceでは、2020年第1四半期の世界の自動車販売台数について、前年同期比24%減とみており、市場の回復は早くても下半期に延期される可能性があるとしている。

  • TrendForce

    2020年第1四半期の半導体を活用する最終製品の出荷台数の新型コロナウイルスの感染拡大前後の予測 (出所:TrendForce)