IntelとAMDの決算発表が先ごろなされた。両社ともカレンダー通りの決算日なので、発表された決算は2023年の第4四半期(10-12月)と2023年通年の決算でもある。
両社の決算発表はいつもIntelの発表日の翌週にAMDという具合にスケジュールされているので、CPU/GPU市場でのライバルということもあって比較されることが多い。
IntelとAMDのビジネスの趨勢は半導体業界全体への影響も強く注目された決算発表だったが、注目分野であるAI半導体の勢いで明暗が分かれた決算だった。AIをいち早くクラウドサービスに取り入れたMicrosoftとGoogleは2023年は年間で2桁を超える売り上げ増を記録したが、その急成長を半導体で支えたのはNVIDIAで、2023年は同社の独り勝ちの年であったと言えるが、2024年に入り、IntelとAMDがどれだけAI半導体市場に食い込むかが大きな焦点となってくる。
市況とパソコンビジネスの回復に助けられたIntel
Intelは2023年に事業部の再編を実施。パソコン用半導体(CPU/GPU)のビジネスを統合したCCG(Client Computing Group)、データセンター用半導体ビジネスをDCAI(Data Center&AI Group)、ファウンドリビジネスをIFS(Intel Foundry Services)に纏めた。これで各分野別の実績がよくわかるようになった。この分野分けにしたがって2022年との比較も出しているので、進捗状況は非常にわかりやすい。
結論から言ってしまうと、Intelは通年で黒字化を果たし、2022年との比較では財務体質はかなり改善しているが、各分野別の昨年対比をよく見るとAI半導体での実績で大きく出遅れている様子が見て取れる。伝統的に大きなシェアを持つパソコン分野で総売り上げの57%を稼ぎ、流通在庫の調整が進み市況の改善とともに総じてビジネスが回復したとみるのが妥当だろう。
パソコン分野では「AI PC」をマーケティングの主軸としている事でも、この分野でのAI化を推進していくのが今年のIntelの大きなテーマであるらしい。
しかし、目をデータセンター市場でのCPU/AI Acceleratorの実績に向けてみると、2022年との比較で20%のダウンで、サーバー用CPUでは引き続きAMDにシェアを奪われている印象だ。
AI AcceleratorでのNVIDIAへの反撃の兆しもまだ見られない。2023年末に公開された大規模なAI Acceleratorである“Gaudi 3”を採用する予定の大手顧客名が発表されるのではないかと期待したが、それもなかった。次に述べるAMDとの同分野での比較で明らかなように、現在、Intelはデータセンター市場で大きな存在感を発揮できないでいる。
多くの注目が集まるファウンドリビジネス(IFS)は、政府補助金も受けることを期待しつつ巨額投資を行っているが、新工場の立ち上がりはまだで、IFSの大手顧客の名前も発表されなかった。「4年間で5つの新たな先端プロセスノードを加える」、という大きな目標に向かって前進しているということだが、ファウンドリ市場全体でのIntelのシェアはまだ2%程度くらいというアナリストの報告もあり、この分野での実績を見定めるにはまだ時間がかかりそうだ。Intelはファウンドリビジネスに特化したイベント「IFS Direct」を2月21日に予定しており、その全容はその時に明らかにされると見られる。
MI300A/Xシリーズで着実にAI半導体市場に足場を築くAMD
AMDの決算結果はAI分野での期待が大きかっただけに、実績としての数字は目を見張るものではなかったので、決算発表直後、株価は多少下落したが増収増益の基調をしっかり示して、その後の株価は上昇している。
AMDとIntelの際立った違いは、分野別の数字を追っていくとよくわかる。2023年第4四半期における売り上げ全体の37%を占めるデータセンター分野での伸び率は前年同期比38%増となっており、この数字は従来通りサーバー用CPU市場においてIntelからシェアを継続して奪取しているのに加え、2023年に発表したAI Accelerator「MI300シリーズ」が順調に売り上げを伸ばしている事を示している。2024年1月に入ってからはMI300Xの出荷も開始した模様で、さらなる成長に期待がかかる。データセンター市場向けの半導体製品は大規模で複雑だが、高付加価値で利益率も高い。粗利率の比較ではIntelの40%に対し、AMDは47%で大きくリードしている。
2023年、この製品群を発表した際、CEOのLisa Suは高らかにNVIDIAへの挑戦を宣言しており、時間の経過とともにその成果が明らかにされると予想されるが、現在AI半導体市場で独り勝ちのNVIDIAを相手に今後どれだけ実績を上げるかは大いに期待されるところである。この分野では大手顧客としてChatGPTを武器に大きくリードするMicrosoftをはじめとして、METAやOracleなどの名前がすでに発表されていて、今後顧客リストに他の大手プラットフォーマーが登場するのは時間の問題という印象を持つ。
AI半導体の王者NVIDIAの決算は今月末に控えている。大方の予想通り過去最高の売り上げ/利益で「世界最大の半導体メーカー」の冠を獲得するとみられるが、今年のIntel/AMDのチャレンジがどれだけのものになるか、今後の3社の動きに注目したい。