サイバー攻撃とは
サイバー攻撃とは、コンピュータシステム、ネットワーク、またはデータに対して何らかの侵害行為を行うことを指す言葉である。攻撃者は、データの盗難やシステムの妨害、詐欺行為などさまざまな目的で攻撃を行う。代表的な手口としては、マルウェアの感染やフィッシング詐欺、DoS攻撃やDDoS攻撃などが挙げられる。
コンピュータシステムやネットワークが攻撃対象となる理由は、それらが貴重な情報を管理しているからだ。多くの場合、個人情報や企業の機密情報、金融データなどが狙われる。特に中小企業は、セキュリティ対策が不十分な場合も多く、攻撃者にとって格好のターゲットとなりがちである。
本稿では、主なサイバー攻撃について、種類や被害事例、対策などを解説する。
企業を狙うサイバー攻撃の種類と手口
年々巧妙化するサイバー攻撃では、多種多様な手法が使われる。代表的な攻撃としては以下の4つが挙げられる。
- マルウェア
- ランサムウェア
- フィッシング攻撃
- DoS攻撃/DDoS攻撃
以下、それぞれについて見ていこう。
マルウェア
マルウェアとは、悪意を持って作成されたソフトウェアの総称であり、システムやデータに対する不正アクセスや破壊、情報の盗難などを行うものだ。具体的な例として、以下のようなものが挙げられる。
- ウイルス:ほかのファイルなどに寄生し、悪意のある動作を行う。自己増殖する特性を持つ。
- ワーム:自己増殖する点はウイルスと同様だが、寄生対象を必要とせず単体で活動することができる。
- トロイの木馬:正常なソフトウェアに偽装してシステム内に侵入する。単体で存在はできるが自己増殖する機能はない。
- スパイウェア:コンピュータに不正侵入し、ユーザーのオンライン活動を監視して個人情報を収集する。
こうしたマルウェアからの攻撃を防ぐには、こまめにセキュリティソフトやOS、アプリケーションのアップデートを実施し、常に最新の状態に保つことが必要不可欠だ。また、マルウェアはメールのリンクや添付ファイル、Webサイトなどを経由して侵入を試みるケースが多いため、リスクを最小限に抑えるには、エンドポイントセキュリティの強化が重要となる。
ランサムウェア
ランサムウェアとは、悪意を持つ攻撃者がユーザーのデータやシステムを暗号化し、そのアクセスを回復するために身代金を要求するマルウェアの一種である(参考記事:いかにセキュリティを強化するか? ランサムウェア対策の実践方法)。近年、特に中小企業をターゲットにしたランサムウェア攻撃が増加しており、その手口はますます巧妙化している。
ランサムウェアの一般的な感染経路としては、フィッシングメールや偽のソフトウェア更新が挙げられる。これらのメールには、信頼できる送信者を装ったリンクや添付ファイルが含まれており、ユーザーが誤ってクリックすることで感染が始まる。
防御策としては、最新のセキュリティソフトウェアの導入と定期的なバックアップが推奨される。また、社員の教育も重要であり、日頃から疑わしいメールに注意を払うことが求められる。
フィッシング攻撃
フィッシング攻撃は、サイバー攻撃の中でも非常に一般的であり、メールやメッセージなどを通じて被害者をだます手法である。特にビジネス環境では、企業や個人の機密情報を盗むために偽物のインボイスや請求書を送りつける手法が多用されている。
フィッシング攻撃の特徴はいくつかある。例えば、偽装メールの差出人は有名な企業や信頼できる機関を装っていることが多い。また、「すぐにログインしないとアカウントが停止される」「口座が凍結される」というように緊急性や重要性を強調する内容で、迅速な対応を促すことが多い。これにより、受け取った人は正規の通信であるとの錯覚に陥りやすい。
企業において効果的な対策としては、まず社員教育が挙げられる。フィッシングメールの特徴を理解し、不審なメールを見分けるスキルを身につけることが必要である。また、スパムフィルタやセキュリティソフトの活用も推奨される。加えて、二要素認証を導入することも、不正アクセスの予防に有効だろう。どのような対策をとるにせよ、フィッシング攻撃に対する警戒は常に怠らず、最新の対策を講じることが必要だ。
DoS攻撃/DDoS攻撃
DoS攻撃(Denial of Service attack)とは、攻撃者が大量のリクエストを特定のサーバに送信し、大きな負荷をかけることでサーバをダウンさせる攻撃手段である。DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)も大量のリクエストを特定のサーバに送信する点はDoS攻撃と同様だが、マルウェアなどを使って支配した複数のコンピュータを踏み台にして実行されるため、より強力で防ぎにくい。
DoS攻撃/DDoS攻撃への対策としては、まずネットワーク監視が挙げられる。異常なトラフィックを早期に検知することで、迅速に対応できるからだ。具体的には、トラフィックのフィルタリングや分散、リクエストのレート制限などが有効である。
サイバー攻撃による被害事例
サイバー攻撃による被害事例は年々増加しており、その被害も深刻である。以下に事例を紹介しよう。
被害が後を絶たない、ランサムウェア
先述の通り、ランサムウェアによる攻撃は巧妙化しており、被害は増加の傾向にあることは否めない。例えば2024年6月、ドワンゴがランサムウェアを含む大規模なサイバー攻撃を受け、同社が運営する「ニコニコ」のサービス全般が利用できない状態に陥った。
参考記事
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同年10月には、カシオ計算機のシステムがランサムウェアの攻撃を受け、システム障害が発生。サービスを一部停止する事態となっている。
参考記事
カシオ計算機に不正アクセス、オンラインストアの一部サービス停止
こうした攻撃は、いつどこの企業に対しても実行され得るものであり、決して他人事ではない。企業はエンドポイントのセキュリティや脆弱性対策を強化するとともに、データの窃取を想定して重要データを暗号化しておく、攻撃者による感染端末や機密情報の暗号化を検知する仕組みを取り入れるといった対策を講じておくべきだろう。
Emotet(エモテット)の被害
Emotet(エモテット)は、最も広範な被害をもたらしているサイバー攻撃の一つである。Emotetは銀行の取引データなどの機密情報を狙ったマルウェアであり、特にフィッシングメールを用いて感染を広げるケースが多い。
Emotetの被害には、多額の金銭的損失やデータの漏洩が含まれる。例えば、企業の役員になりすましたメールにより、偽の送金指示が多発し、数億円規模の被害が生じた事例も報告されている。また、一度Emotetに感染すると、ネットワーク内の他のデバイスやシステムにも拡散する可能性が高い。
さらに、Emotetは他のマルウェアのゲートウェイとして機能し、追加の攻撃を招くリスクもあることは留意しておきたい点だ。
参考記事
中小企業でもできる!サイバー攻撃被害別撃退法(6) マルウェア「Emotet」の被害、まさかお寺にまで~防衛策強化とデータ保全方法を改善
億単位の被害になることも - インシデント発生時の具体的な損害を解説
セキュリティを強化する、サイバー攻撃対策の基本
サイバー攻撃対策の基本は、複数の施策を組み合わせた多層防御戦略を採用することである。まず、エンドポイントセキュリティを強化することが重要である。具体的には、ウイルス対策ソフトやファイアウォールを適切に設定し、最新の状態に保つことが求められる。
次に考えるべきは、ネットワークセキュリティの強化だ。暗号化技術の活用やVPNの利用は、不正アクセスを未然に防ぐことにつながる。また、従業員に対する情報セキュリティ教育も欠かせない。従業員がフィッシング攻撃に対する認識を持ち、対処方法を理解していることで、企業全体のセキュリティレベルが向上する。
以上の対策を継続的に実施し、定期的なセキュリティ診断を行うことで、サイバー攻撃に対するリスクを大幅に低減することができる。
それぞれの対策について、もう少し詳しく説明しよう。
エンドポイントセキュリティ
エンドポイントセキュリティとは、悪意ある攻撃者の侵入口となり得る企業内の各デバイスや、ネットワークの末端(エンドポイント)にあるPC、スマートフォン、タブレットといったエンドポイントを保護するための対策である。
エンドポイントセキュリティには、ウイルス対策ソフトウェアやファイアウォールの導入、エンドポイント検出・応答(EDR:Endpoint Detection and Response)ツールの使用などが含まれる。また、企業内でのセキュリティポリシーの遵守やソフトウェアの定期的なアップデートも重要な要素である。
最新のエンドポイントセキュリティ技術を駆使することで、企業はサイバー攻撃のリスクを最小限に抑え、安全な業務環境を維持することができる。
ネットワークセキュリティ
ネットワークセキュリティとは、企業内やインターネットを通じてデータの安全なやり取りを行うための技術と対策の総称である。この分野では、不正アクセスや情報漏洩を防ぐために、複数の防御手段が必要とされる。具体的には、ファイアウォールの設置、侵入検知システム(IDS:Intrusion Detection System)の使用、VPNによる暗号化通信の確保などが含まれる。
また、従業員の教育もネットワークセキュリティにおいて欠かせない要素だ。フィッシングメールはもちろん、人間心理の隙を突いたソーシャルエンジニアリング攻撃への対策として、従業員に対する定期的なセキュリティトレーニングを行うことが推奨される。このような多層防御を講じることで、日々進化するサイバー攻撃によるリスクを最小限に抑えることにつながるのである。
情報セキュリティ教育
全ての従業員が基本的なセキュリティ知識を持つことで、人為的ミスを減少させ、外部からの脅威に対する抵抗力が飛躍的に向上する。
具体的な施策としては、定期的なセミナーやワークショップを開催し、フィッシングやマルウェアの手口を学ぶ場を提供することが考えられる。また、情報の取り扱いやパスワードの管理方法についてのガイドラインを作成し、その遵守を徹底することも重要だ。
さらに、企業内のセキュリティ教育プログラムの効果を最大化するためには、最新のサイバー攻撃の動向や新たな脅威についても常に情報を発信し続ける必要がある。例えば、定期的な内部監査や仮想的な侵入テストを実施し、現行のセキュリティ対策の有効性を評価するといった具合だ。こうした実践的な取り組みによって、企業全体のセキュリティ意識が自然と高まり、サイバー攻撃によるリスクを未然に防ぐ基盤が築かれるのである。
サイバー攻撃から情報資産を守るために
本稿では、セキュリティとサイバー攻撃に関する基本的な知識と最新の動向について解説した。サイバー攻撃の多様な形態やその手口を理解することは、自社の脆弱性に対する警戒心を高め、結果として企業全体のセキュリティの強化につながる。
サイバー攻撃は年々進化しており、その対策に終わりはない。常に情報収集し、一歩先を行く対策を心掛けていただきたい。
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