新型コロナウイルス感染症の拡大による景気後退、円安、ウクライナ侵攻……これらに端を発したように、世界情勢は不安定になっています。世界経済への打撃は、巡り巡って私たちの給与や生活基盤にも関わってくるので、他山の石ではありません。
そんな中、「SDGsなんて理想論。今、取り組んでいる暇はないよ」と大なり小なり思われている方へお伝えしたいのが、“取り組まないこと”のリスク。今回は、今こそ、企業としても個人としてもSDGsへの取り組みを強化すべきであり、取り組まないことは、それ自体がリスクとなる理由を説明したいと思います。
→連載「あつみ先生が教える SDGs×ビジネス入門」の過去回はこちらを参照。
対策していない=「選ばれない企業」になるリスク
SDGsは17ものゴールに分かれており、貧困問題、環境問題、人権問題など幅広い分野の課題が挙げられています。そのため、自分の中で今一つ、整理できていない人も多いのではないでしょうか? 「実際に、うちの会社はどこから取り組めばいいのかわからない……」と。
とはいえ今、わからないからといってゴール達成に紐付く歩みを止めてしまうとどうなるか? 市場が活性化したころには対策をしている企業とそうではない企業で雲泥の差が付く――それがSDGsなのです。
もちろん全目標の達成を目指していくのが理想ですが、企業によって専門性や業務内容が異なるので、どんな大企業でも網羅するのは難しいこと。中でも優先度が高く、ホットな話題に関連する目標に着手していくのはいかがでしょうか。
例えば、目標13の「気候変動」。これは特に大手企業において、対策は必須と言えるものです。というのも、2022年4月から東証一部がプライマリ市場に変更になったことで、気候変動への対策の開示が義務化されたからです。
また、目標5の「ジェンダー平等」も優先度が高い課題です。労働人口の減少によって、採用市場では「良い人が採れない」状態から「そもそも応募すらない」という状態に移行してきています。
そんな中、“昭和”な価値観で男性優位の人事制度や、管理職に女性がいない状態であれば、どんどん“不人気企業”にランクインしてしまうでしょう。これは人材面のリスクだと言えます。
そもそも、これらの目標は取り組み始めてからすぐに結果が出るものではありません。数年がかりで進捗が見えてくる分野です。
例えば、店舗を複数持つ企業の場合。突然、全ての店舗を再生エネルギーに切り替えてはコストが高騰し、経営をいたずらに圧迫してしまいます。また、男性ばかりが勤務する会社で「女性社員を増やそう」と言い出しても、良い人材とマッチングするまでには、それなりのコストがかかるでしょう。急に女性社員を抜擢し始めたところで、理念が伴わなければ説得力に欠けることは言うまでもありません。
「選ばれる」企業になるには、今からSDGsに取り組んでおくことが必要です。「忙しいから」「わからないから」と後回しにしていると、いつの間にか周囲に「選ばれない企業」になってしまうかもしれません。