既報のように、Top500の1位は前回に続いて中国の天河2号で、1位から5位までが前回と同じという結果になった。しかし、6位にスイスのPiz Daintが入り、ヨーロッパ第1位として表彰された。
Piz DaintはCrayのXC30スパコンで、CPUにはXeon E5-2670を使い、アクセラレータとしてNVIDIAのK20xを搭載している。その点では市販のスパコンであるが、ピーク演算性能が7.79PFlopsであるのにLINPACK 6.27PFlopsとピーク性能の80.5%を達成している。これはGPUを主体としたシステムとしては非常に高い性能比率である。その結果、2.325MWの消費電力で2697MFlops/Wと、上位のTop50スパコンの中では最も電力効率の高いシステムである。
Top500スパコンの方向性
Top500システムの国別のシェアとしては、米国が53%と約半分を占めるという状況は、ここのところ変わっていない。一方、中国のスパコンは急速に充実してきており、13%と米国に次ぐシェアとなっている。そして、日本は6%のシェアで3位である。
スパコンの消費電力は、次の図のように増加を続けている。
Top10のシステムの消費電力はこの5年で3倍、Top50のシステムは2.6倍、Top500のシステムは2.7倍であり、中下位が多数を占めるTop500スパコンに比べてハイエンドのTop10スパコンの消費電力の増加が著しい。
そして、GFlops/kWの電力効率を見てみると次の図のようになり、ハイエンドのTop10のシステムの方が、Top50やTop500のシステムより電力効率が高い。また、電力効率の改善のスピードもハイエンドのシステムが一番速いという傾向が見られる。
Top10のシステムは消費電力の伸びが大きく、電力効率の改善のスピードも速いということは、上位システムの性能の伸びは加速度的で、下位のシステムとの差が開いていることになる。実際、上位システムの性能の伸びは伝統的な10年で1000倍のペースが続いているが、下位システムの性能の伸びには鈍化の傾向が見られるという。
Top500の中で、最も電力効率の高いシステムは、東京工業大学のTSUBAME-KFCで3418MFlops/Wである。そして2位は筑波大のHA-PACS TCAである。3位はサウジアラビアのXeon E5にアクセラレータとしてAMDのFireProをつけたSANAMというシステム、4位はIBMのiDataPlexでXeon E5とNVIDIAのK20xのシステムである。これらのシステムは、順に311位、134位、59位、336位とTop50以下のシステムである。しかし、5位のPiz DaintはTop500 6位、ヨーロッパ1位のシステムであり、この大規模でこの効率は立派である。