スーパーコンピューティングというと男性の世界という印象を持たれるかも知れないが、実は、重要な役割を果たし、高い業績を上げている女性が多い。
顕著な業績をあげた女性研究者に贈られるAthena Lecturer Awardは、今年は、ローレンスバークレイ国立研究所のKatherine Yelick氏が受賞した。
Unified Parallel C言語の開発など、大規模並列処理や並列処理の性能解析、モデリングなどの分野で業績を上げたことが評価されたものである。
また、今回のSC13での最初の基調講演は、インテルフェローのGenevieve Bell氏のThe Secret Life of Dataと題する講演であった。
ビッグデータという言葉は、最近、注目を集めているが、1000年前からビッグデータは重要な役割を果たしていたという。英国の征服王Williamは、戦費をまかなうため、各戸の所有する農地の面積や家畜の頭数をもれなく調べ、Domesday Bookと呼ばれる徴税台帳を作った。初版は1086年に作られ、羊皮紙に書かれたこの台帳は、その後、900年も使われ続けた。これは最初のビッグデータであり、データの収集、データの記録と、そのデータから有用な情報を抜き出すというビッグデータの3要素を備えているという。
そして、現在のビッグデータは、事実の集積、解析と可視化、そしてアルゴリズムの3要素から成り立っている。しかし、これは機械的にデータを分析するのではなく、データの山から何を見つけ出すかは、人間的な作業であると述べていた。
今回のTop500でも前回に続いて1位を守った中国の天河2号に関して、Scalable Computing on Tianhe-2と題する招待講演を行ったのは国防科技大のYutong Lu教授である。
天河2号の概要、そして、独自開発のTH Express 2インタコネクトの詳細と、それを使うカスタムのMPI、H2IOと呼ぶIO構造、そしてアプリケーションの開発状況について講演を行った。
Student Cluster Competitionは、壁のコンセントから26Aという電力制限の範囲内のサーバ機器を使用し、LINPACKや課題として出されるHPCアプリケーションプログラムの実行性能を競う競技で、チームのメンバーは学生6人に限られる。アジアでは予選が開かれるほどの激戦で、SCでの本選に出場するには高い技術が要求される。
今回のStudent Cluster Competitionに出場したUniversity of the Pacificのチームメンバは全員女性であった。
スーパーコンピューティングの分野では、多くの女性が活躍しており、科学技術の分野の中でも女性比率の高い分野であると思う。このUniversity of the Pacificのメンバーも心強い限りで、日本でもこのような理系女性が増えて貰いたいものである。
来年のSC14は、ニューオルリーンズで開催される。この大会委員長を務めるのは、ローレンスリバモア国立研究所のTrish Damkroger氏である。また、過去のSCでも何回も女性が大会委員長を務めており、スーパーコンピューティングの分野では、女性の貢献は大きく評価されている。