勝敗を左右する「資源島」の攻防

ROBOMASTERは基本的に操縦ロボットによる対戦競技であるため、勝つためには技術力だけでなく、人間側の操縦能力やチームとしての戦略も非常に重要になる。

  • フィールド中央にある

    フィールド中央にある"資源島"。ここで弾丸を補給できる

  • 大型弾と通常弾があるが、大型弾を補給できるのはここだけ

    大型弾と通常弾があるが、大型弾を補給できるのはここだけ

  • 資源島は杭だらけで渡りにくいが、両側にブロックを置くと…

    資源島は杭だらけで渡りにくいが、両側にブロックを置くと…

  • このように床がせり上がり、通りやすくなるという仕掛けも

    このように床がせり上がり、通りやすくなるという仕掛けも

  • 資源島の近くには、このようなゲームも。ここからパネルを撃つ

    資源島の近くには、このようなゲームも。ここからパネルを撃つ

  • 適切な順番でパネルを撃つと、攻撃力や防御力が上がるボーナスが

    適切な順番でパネルを撃つと、攻撃力や防御力が上がるボーナスが

勝負を決める上で大きなポイントとなるのは、最も強力なロボットであるヒーローの働きだ。相手のヒーローを先に倒すことができれば、それだけで圧倒的に有利になる。どうすれば自分のヒーローを生かしつつ、相手のヒーローを倒せるか。そこが戦略上の基本的な方針となる。

見事だったのは、華南理工大学の戦い方だ。ヒーローは無敵のようにも思えるが、弾切れの状態からスタートするため、まず最初にフィールド中央の"資源島"に行って、弾丸を補給する必要がある。弾が無ければ、ヒーローも単なる大きな標的だ。ヒーローを倒すには、絶好のチャンスだと言える。

  • ヒーローはまず、資源島で弾丸を補給しないと、戦力にならない

    ヒーローはまず、資源島で弾丸を補給しないと、戦力にならない

同大学は、相手のヒーローが資源島に入ったタイミングで、エンジニアがブロックを持って接近。ブロックを落として退路を断ち、動けなくなった相手のヒーローに対し、味方のヒーローとスタンダードで集中砲火を浴びせていた。他にも同じことをやろうとしていたチームはあったが、同大学はとにかく手際が良かった。

  • ベスト4決定戦:華南理工大学(赤)vs東北大学(青)の1本目。華南理工大学の戦略により、あっという間に東北大学のヒーローが活動停止に

優勝したのは、この華南理工大学。決勝で対戦した山東科技大学は、ヒーローの走行性能を活かし、置かれたブロックを突破して資源島から脱出するなど善戦したが、華南理工大学の巧みな連係プレーの前に1-3で敗れた(決勝戦は5本勝負)。

  • 決勝戦:山東科技大学(赤)vs華南理工大学(青)の1本目。資源島に閉じ込められた山東科技大学のヒーローだったが、強引に包囲網を突破

  • 決勝戦:山東科技大学(赤)vs華南理工大学(青)の4本目。最後はお互いのヒーローがベースを攻撃しあう乱戦になったが、華南理工大学が制した

前述のように、ベース以外のロボットは自律である必要は無いのだが、華南理工大学によれば、同チームのヒーローとスタンダードには、画像認識により、自動で照準を合わせる機能を持たせているそうだ。実際のところ、手動の操縦では、移動しながら小さな的に当てるようなことは非常に困難。優勝するためには、必須の機能と言えるだろう。

  • 表彰式で喜びを爆発させる華南理工大学チーム

    表彰式で喜びを爆発させる華南理工大学チーム

  • 華南理工大学のロボット。ヒーローは手前から2台目

    華南理工大学のロボット。ヒーローは手前から2台目

その他の試合の動画はこちら

グローバル化に向けた取り組みも

ROBOMASTERへの参加チームは年々増加しており、2017年は202チームがエントリー。今回の決勝ラウンドには、そのうちの32チームが進出した。出場チームはもちろん中国が最も多いのだが、米国、 英国、 シンガポール、カナダ、ドイツなど、海外チームの参加もあったようだ。

  • ドイツのKoblenz-Landau大学チーム。ロボカップにも出場している

    ドイツのKoblenz-Landau大学チーム。ロボカップにも出場している

DJIはROBOMASTERをよりグローバルな大会にしたいと考えており、海外からの参加者が増えることを期待。プロポーザル・ステージを通過し、2次ステージへと進んだ新規チームに対しては、2台のスタンダードロボットと1,500ドル(1ドル=110円換算で16万5000円)を支給するなど、資金面でのサポートも用意している。

  • スタンダードはデザインもクール。これだけでも製品化したら売れそう

    スタンダードはデザインもクール。これだけでも製品化したら売れそう

  • 車輪はメカナムホイール。しっかりしたサスペンションを搭載している

    車輪はメカナムホイール。しっかりしたサスペンションを搭載している

  • 搭載カメラ。この映像で、FPSゲームのようにロボットを操縦する

    搭載カメラ。この映像で、FPSゲームのようにロボットを操縦する

  • リア側にあるLEDバーを見ると、HPの残量がどのくらいか分かる仕組み

    リア側にあるLEDバーを見ると、HPの残量がどのくらいか分かる仕組み

2018年大会の優勝賞金は、なんと75,000ドル(同825万円)だという。すでにエントリーは始まっているので、出場を検討してみてはいかがだろうか(締め切りは12月10日)。詳細については、以下のWebサイトを参照して欲しい。

Now Accepting Registration for RoboMaster 2018

なお、ROBOMASTERのプロモーションの一環として、同社はこの競技をテーマにしたテレビアニメ「ロボマスターズ」を制作。日本ではWOWOWにて、10月から全6話が放送された。現在はAmazonのプライム・ビデオなどでのネット配信も行われているので、見逃した人も1話から視聴することができる。

ロボマスターズ公式サイト

プロデューサーのNakazawa Chen氏は、「大会を背景にした物語で、エンジニアの"魂"を伝えたかった。この作品を見た若い人が、将来、大学に入ってエンジニアを目指してくれれば嬉しい」と語る。実際のROBOMASTERに近い内容になっているので、競技の雰囲気を掴むのにも良いのではないだろうか。

  • Nakazawa Chen氏は、今回の取材で、中国語の通訳も務めてくれた

    Nakazawa Chen氏は、今回の取材で、中国語の通訳も務めてくれた

  • 会場にはアニメのPRコーナーも。もちろん中国でも放送されている

    会場にはアニメのPRコーナーも。もちろん中国でも放送されている