勝敗を左右する「資源島」の攻防
ROBOMASTERは基本的に操縦ロボットによる対戦競技であるため、勝つためには技術力だけでなく、人間側の操縦能力やチームとしての戦略も非常に重要になる。
勝負を決める上で大きなポイントとなるのは、最も強力なロボットであるヒーローの働きだ。相手のヒーローを先に倒すことができれば、それだけで圧倒的に有利になる。どうすれば自分のヒーローを生かしつつ、相手のヒーローを倒せるか。そこが戦略上の基本的な方針となる。
見事だったのは、華南理工大学の戦い方だ。ヒーローは無敵のようにも思えるが、弾切れの状態からスタートするため、まず最初にフィールド中央の"資源島"に行って、弾丸を補給する必要がある。弾が無ければ、ヒーローも単なる大きな標的だ。ヒーローを倒すには、絶好のチャンスだと言える。
同大学は、相手のヒーローが資源島に入ったタイミングで、エンジニアがブロックを持って接近。ブロックを落として退路を断ち、動けなくなった相手のヒーローに対し、味方のヒーローとスタンダードで集中砲火を浴びせていた。他にも同じことをやろうとしていたチームはあったが、同大学はとにかく手際が良かった。
優勝したのは、この華南理工大学。決勝で対戦した山東科技大学は、ヒーローの走行性能を活かし、置かれたブロックを突破して資源島から脱出するなど善戦したが、華南理工大学の巧みな連係プレーの前に1-3で敗れた(決勝戦は5本勝負)。
前述のように、ベース以外のロボットは自律である必要は無いのだが、華南理工大学によれば、同チームのヒーローとスタンダードには、画像認識により、自動で照準を合わせる機能を持たせているそうだ。実際のところ、手動の操縦では、移動しながら小さな的に当てるようなことは非常に困難。優勝するためには、必須の機能と言えるだろう。
グローバル化に向けた取り組みも
ROBOMASTERへの参加チームは年々増加しており、2017年は202チームがエントリー。今回の決勝ラウンドには、そのうちの32チームが進出した。出場チームはもちろん中国が最も多いのだが、米国、 英国、 シンガポール、カナダ、ドイツなど、海外チームの参加もあったようだ。
DJIはROBOMASTERをよりグローバルな大会にしたいと考えており、海外からの参加者が増えることを期待。プロポーザル・ステージを通過し、2次ステージへと進んだ新規チームに対しては、2台のスタンダードロボットと1,500ドル(1ドル=110円換算で16万5000円)を支給するなど、資金面でのサポートも用意している。
2018年大会の優勝賞金は、なんと75,000ドル(同825万円)だという。すでにエントリーは始まっているので、出場を検討してみてはいかがだろうか(締め切りは12月10日)。詳細については、以下のWebサイトを参照して欲しい。
Now Accepting Registration for RoboMaster 2018
なお、ROBOMASTERのプロモーションの一環として、同社はこの競技をテーマにしたテレビアニメ「ロボマスターズ」を制作。日本ではWOWOWにて、10月から全6話が放送された。現在はAmazonのプライム・ビデオなどでのネット配信も行われているので、見逃した人も1話から視聴することができる。
プロデューサーのNakazawa Chen氏は、「大会を背景にした物語で、エンジニアの"魂"を伝えたかった。この作品を見た若い人が、将来、大学に入ってエンジニアを目指してくれれば嬉しい」と語る。実際のROBOMASTERに近い内容になっているので、競技の雰囲気を掴むのにも良いのではないだろうか。