空を駆ける世界大会「レッドブル・エアレース」。2017年は、室屋義秀選手が自身はもちろんアジア人としても初の年間チャンピオンに輝いた。そしていよいよ2018年シーズンが2月2日・3日、アラブ首長国連邦の首都、アブダビでスタートする。筆者もアブダビに入り、最新の情報をお届けする予定だ。
空の一騎打ち、レッドブル・エアレース
レッドブル・エアレースの概要については昨年、初心者でもわかる解説記事を書いているので、まだエアレースを知らない方は是非お読みいただきたい。
一言で言えばF1レーシングカーのように、特別に設計されたエアレース専用のプロペラ飛行機を操り、レースを周回して時間を競う「空のモータースポーツ」だ。モータースポーツと異なるのは1機ずつ飛行してタイムを計測する点で、14人の選手が7組に分かれて一騎打ちする「ラウンド・オブ14」、勝ち残った8人の選手が4組に分かれて一騎打ちする「ラウンド・オブ8」、そしてそれに勝ち残った4人がタイムを競う「ファイナル4」で順位を決定する。1機ずつ飛行するためじっくりと観戦でき、初心者でもわかりやすいのも特徴と言えるだろう。
ルール変更、オーバーGでも競技継続
基本的なルールは昨年の解説内容から変わっていないが、今シーズンから変更された点が1つある。旋回中や宙返り中の荷重が規定を超える「オーバーG」の扱いの変更だ。
2017年までのルールでは、10G以上の荷重を0.6秒間継続するか、12G以上を一瞬でも計測した場合、失格となり敗退するという厳しいものだった。その判定が審判から下されれば、選手は即座にフライトを中断して機体を上昇させ、コースから離れなければならない。2018年の新ルールでは、12G以上で失格は変わらないものの、10G以上を0.6秒間継続した場合は「2秒間のペナルティ」が加算されるだけで競技が継続されることになったのだ。
この変更について室屋選手は「オーバーGにならない技術を磨いてきた自分には関係ない。観客は最後までフライトを見られるので良いだろう」とクールに語った。室屋選手の言葉が意味するのは「ペナルティは、受けなければどうということはない」という、アスリートらしい意気込みだろう。しかしオーバーGでも失格にならず逆転の可能性があるという、手に汗握る新たなルールになったことは間違いない。
今季デビューの新選手は「レッドアローズ」の元リーダー
昨年、1軍にあたる「マスタークラス」で戦った14名の選手のうち、ピーター・ポドランセック選手(スロベニア)はシーズン終了とともに引退。このため、2軍にあたる「チャレンジャークラス」からベン・マーフィー選手(イギリス)が昇格して新たにマスタークラスに参戦することになった。
新人と言っても、マーフィー選手はイギリス空軍でハリアーGR7戦闘機のパイロットを経て、空軍のアクロバットチーム「レッドアローズ」の隊長を務めたのち、民間アクロバットチーム「ザ・ブレーズ」のリーダーを務めながらチャレンジャークラスにも参戦してきたという一流アクロバットパイロットだ。
3大会の開催地が未定。千葉(日本)戦はあるのか?
ところで2018年の開催地だが、実は8戦中3戦の場所が決まっていない(2018年2月1日時点)。そして、これまで3年連続で開催されてきた千葉の開催が依然未定なのだ。
昨年に引き続いて開催されるのは第1戦アブダビ(UAE、本戦は2月3日。以下同様)、第4戦ブダペスト(ハンガリー、6月24日)、第6戦カザン(ロシア、8月26日)、第7戦インディアナポリス(アメリカ、10月7日)の4都市。そして第2戦は初のフランス開催となる、カンヌ(4月22日)に決定した。
決定していないのは、まず第3戦が5月27日にヨーロッパのどこか。そして第5戦(8月5日)と最終戦(11月、日未定)はアジアとだけ公表されている。千葉戦の開催は未定で、どちらの日程になるか、そもそも開催されるのか不明だ。昨年末にこのニュースが流れた際、熊谷俊人 千葉市長はTwitterで「千葉市開催に向けて実行委員会と一緒になって関係機関と協議を行なっている段階」と説明しており、その後も協議が続いているものと思われる。
開催地に一抹の不安を残しつつも、2018年のレッドブル・エアレース開幕は2月2日(予選)、3日(本戦)に迫った。初戦はアラブ首長国連邦(UAE)の首都、アブダビだ。