今回は単相電力と三相電力の違いについて、データセンター(DC)における効率性の観点から説明していきます。

北米全域の家庭には120Vの単相電力が供給されています。典型的な住居用のサーキットブレーカーボックスには、宅内に4本の電線(2本の通電線、1本の中性線、1本のアース線)が引き込まれます。2本の通電線は240VAC(交流:AC、電圧:V)の電気を送ります。

この電線は電子レンジや乾燥機などの大型家電製品に使用されます。一方、通電線と中性線の間の電圧は120VACであり、家庭内の他のすべての家電製品の電源に使用されます。しかし、北米の発電プラントでは230kVから500kVの超高電圧で三相電力を送電しています。

高圧電力線を注意深く見てみると、それぞれが電流を運ぶ3本の導体と1本の中性導体があることがわかります。三相電力の伝送線路は、単相伝送線路が必要とするような太い径の銅線を必要としないので、送電コストは相対的に安くすみます。

さらに、三相電力は接続サービスに柔軟性があり、通常の120VACサービスだけでなく、208VACも提供することができます。実際に、すべての産業用ビルは単相よりも多くのメリットがある三相電力を使用しています。

三相電力を使用するように(DCを設計または改装することは効果があるのですが、一部のDCは三相電力がもたらすメリットを理解していません。三相電力が実際にコスト削減を可能にするだけでなく、より効率的なDCを作り出す理由を理解するために、単相電力と三相電力の違いを見てみましょう。

  • ITインフラ運用最前線

単相電力の問題点

60Hzで動作する従来の120VACの交流単相電力サービスは、連続的な電力を供給できません。この周波数では、交流正弦波は1秒間に120回ゼロ点を交差することになります。電力はW(ワット)で測定され、Wは印加(回路または装置に電圧を与える)される電圧と、回路に流れる電流のアンペア数の積(W=V×A)であることを理解しておくと良いでしょう。

電圧または電流のいずれかがゼロ点を交差する時、供給される電力はゼロになります。実際には、この瞬間的なゼロへの低下は、回路内の機器に目に見えるほどの影響は及ぼしません。

例えばモーターの場合、回転電機子の機械的慣性はゼロ点を「乗り越え」ます(ただし、このゼロ点交差は累積されます。単相電力で動作するモーターは、三相電力向けに設計されたモーターよりも想定寿命が短いのです)。

一方、三相電力は120度の角度でずれた3つの正弦波からなります。この形式の電力は、それぞれ正確に120度ずつ離れた3つの独立した巻線を備えた交流発電機によって発生します。各電流(位相)は、別々の導体で運ばれます。

この位相関係によって、ITシステムに印加される電圧も電流もゼロにはなりません。これは、所与の電圧において三相電力がより多くの電力を供給できるということです。実際、単相電源の約1.7倍の電力になります。

近年、単一ラック構成での処理能力が倍増しています。少し前までは、1ラックにせいぜいサーバが10台収納され、5kW程度を消費していました。今では、終わりのない小型化と、止まらない技術の進歩により、同じラックに50~60台のサーバが搭載され、15kW以上を消費することもあります。

15kWのラックを120VAC単相電力で供給しようとすると、125Aが必要となります。その電流を安全に流すために必要な銅線の直径(AWG4)は、およそ0.25インチ(約6ミリ)にもなります。敷設作業は困難で、しかも銅線は高価です。

明らかに、単相はそのような負荷に対しては実用的とは言えません。一方、三相システムでは、各導体、AWG11の直径はわずか0.09インチ(約2ミリ)で、約42Aだけでまかなえます。

三相はどのように役立つか

選択する電力システムによっては、効率性と経済性をもたらすこともあれば、柔軟性がなく、コストアップにつながることもあり得ます。単相電力は、乾燥機や電子レンジが最大負荷となる一般家庭ユーザーにとっては理想的です。しかし、DCにおいては、三相電力がもたらす以下の利点を考慮することが求められます。

  1. 同じ電源から120VACと208VACの両方のデバイスを作動でき、必要に応じてPDUを組み合わせて対応することができます。

  2. 三相(四線)電力では、すべてのデバイスを120VACで稼働させることができますが、各位相間の電力を取ることで、208VACで稼働させることができます。

  3. 三相電力をサーバーキャビネットに直接供給することで、ケーブルの敷設コストは劇的に削減されます。

  4. 電気技師がACケーブルを敷設する作業と、トータルのインストレーション時間のどちらも短縮されます。

Raritan Blog

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