今回は、ニューヨーク、上海、バンガロールでデータセンターを拡張することを考えてみましょう。リースやレンタルのコストが急上昇している中で、最も低コストで拡張できる方法はどのようなものでしょうか?
スペースを拡げる水平拡張の場合、巨額の不動産コストに加え、ケーブル配線や冷却能力の追加費用がかかります。運用コストの増加は、ボトムラインを圧迫するだけです。データセンター(DC)という競合がひしめく市場で優位に立つためには、コスト効果の高い方法を常に模索する必要があります。
不動産価格の高騰により、DCは拡張計画に影響を与えることなく、既存のスペースを最大限に活用することが求められています。これは複雑な問題のように思えるかしれませんが、解決策は至ってシンプルです。すなわち、面積当たりのコストを抑えながら、より強力なコンピューティングパワーを提供する方法を見つければよいのです。
そこで、このシンプルな解決策をどのようにして実現するのかということですが、答えは、PDU(Power Distribution Unit)の適切な選択によって実現できる垂直方向の拡張にあります。
垂直拡張 - DCを効率化する新しいコンセプト
DCを垂直方向にスケールアップする、すなわちラックの密度を高めれば、構造そのものを大幅に変更することなく、個々のラックまで配電を強化することで、電力密度を急速に拡大できます。DCの設計者や管理者は、乱立するサーバ群に対して、高密度ラックを構築してリプレースすることによる効率化の重要性を理解し始めています。
従来のインフラを備えたDCの大半は、1ラック当たり4~5KWまでは対応していますが、多くのケースで1ラック当たり20KWを超える要件が増えています。ビッグデータのストリーム処理が当たり前になるのにつれて、DCはさらに高密度のラックを取り扱う準備を整える必要があり、能力を最大限に引き出さねばなりません。
このことを念頭において、DCは新しい高密度サーバの導入を進めて高密度コンピューティング環境に移行しています。高密度化の主な理由としては、設備スペースの節約やエネルギーコストの削減などが挙げられます。
高密度ラックをサポートする最適なPDU
市場ニーズの変化に伴い、DCは将来の課題に備えて前もって計画する必要があります。高密度ラックは、さまざまな組織のROIを向上させる上で重要な役割を果たしますが、PDUも同様に重要です。事前に計画することにより、将来発生する要件を念頭に置いて設計されたPDUを準備し、それに投資することができます。将来のDCには、より長期のライフサイクルが求められるので、その実現に向けて綿密な戦略策定が必要です。
拡張計画における重要な項目として、PDUの選択があります。構造上の大幅な変更を行うことなく、個々のラックまで配電を強化できるPDUを優先して選択することで状況は変わります。1台のラックにより、多くのリソースを詰め込めば出力密度が増加することは明らかですが、冷却効率の圧迫やケーブル配線コストが増加することにより、運用コストを高騰させないよう注意する必要があります。
三相ラックPDU:垂直スペースを活用する理想的なアプローチ
三相システムにより、より大容量の電力供給が可能な三相PDUで電力回路を統合することができます。三相PDUに代表されるインテリジェントソリューションは、一本の三相電源ケーブルでラックに給電することで、バルク配線を抜本的に削減します。
このアプローチは、スペースが不要となるだけでなく、エアーフローを増加させ、冷却コストを削減します。高電圧で低電流になるということは、銅の使用量が少なく、軽量で、かさばらず、コストを抑えた、より細いケーブルが使えるということです。電圧変換を不要にすることにより、400Vの電力は208Vに比べて約2%~3%、120Vに比べて約4%~5%、エネルギーコストを削減します。
スマートなDCには、監視、報告、運用するスマートな方法が必要です。PDUもまた、運用効率を向上させるため可視性を提供する必要があります。適切な電力使用状況の監視、電圧レベル、湿度およびその他の環境要因の監視が不可欠です。また、DCの健全性のためには、インレットとアウトレットレベルで気圧と空気の流れを維持することも重要です。デバイスごとに監視システムを備えるとなると、費用がかかることは言うまでもなく、煩雑で実用的ではありません。配電機能とスマートな監視・可視化機能と組み合わせたPDUが最善の選択です。
カスタマイズ性は、DCが投資するあらゆるインフラにとって重要な側面です。硬直した統合フレームワークで構築されたPDUは、簡単には導入できません。ほとんどのDCでは、コンパクトであるだけでなく、要件に合わせてカスタマイズできるPDUを求めています。
例えば、アウトレットの数、位相バランシング、相の配置を交互にしたアウトレット、コード長、複数入力、リモート電源制御、個別のアウトレットメーター機能、ブレードサーバや高密度アプリケーション用の高出力、400Vの配電といったものが挙げられます。ラック当たり65KWの容量を備えた三相PDUも市場に登場したことにより、DCは膨大なデータフローを処理するために拡張する絶好の機会を得ることができたのです。
結論
要約すると、DCは山積する課題に照らして自らを改革する必要に迫られているということです。要求は増え続け、他社との競争もますます厳しくなります。競合他社の先を行くには、利用可能なわずかなスペースも捉える眼識を持ち、今日の運用を維持するだけでなく、将来的に拡張できるプロセスを構築するまったく新しい視点が必要です。各ラックを最適に活用し、垂直に拡張することが、実行可能で持続的な成長に向かうための方策となります。ラック密度を高めることができるDCは、競争の激しい市場において、明らかに優れたコスト効率を発揮するでしょう。
- 本連載は米国ラリタン本社が運営しているブログを翻訳・転載したものです。