今回はMicrosoftの海中データセンター(DC)プロジェクトについて紹介します。
2016年、DC業界に大きな波紋を投じた「Project Natick」。Natickは、Microsoftによる海中DC調査プロジェクトの名称で、現代インフラの冷却コストを削減することを目指しています。
数十万に上るエンドユーザーの近くで、コンテンツプロバイダーにさらなる容量を提供できる可能性もあります。私たちはProject Natickから何を学び、何を現在のDCに適用できるでしょうか。
ジャーナリストのJames Vincent氏は2016年2月に「The Verge」の記事で以下のように述べています。
「DCを水中に配置することで、コンテンツを冷却できるのみならず、物流面でのメリットも得られます。Microsoftは、世界の人口の半分が海から200キロ圏内に居住していると指摘しており、海中システムであれば追加の容量が必要になった時に容易に導入できる可能性があります」
しかし、海中へのDCの配置は多くの課題をもたらします。Microsoftは陸上のDCの場合、エンジニアは必要なときにいつでもサーバーを修理・交換できますが、海中システムで目指しているのは、メンテナンスなしでも何年間も稼働を継続できることです。
稼働年数全体、できれば10年もの長期間にわたり信頼性を維持し、誰も現地にいなくても全自動で動作する、回復力の高い長寿命のDCを配備する好機だと捉えています。
同プロジェクトは、まだ初期段階ですが、DCのオペレーターにとって参考になるポイントがいくつかあります。
1つ目は、冷却コストが重大な懸念事項になっているという点です。大半のDCは当面の間、地上で稼働を続けるため、すぐにでも取り組む必要があります。サーモスタットは、ラックの状態の最適なインジケーターにはなり得ません。そのためDCは、環境センサに投資する方が賢明です。
センサはリアルタイムで記録を行い、DCIM(Data Center Infrastructure Management)ソフトウェアと同期することができます。蓄積されたデータにより、特定の高密度機器をグループ化すべきか、CRAC(Computer Room Air Conditioning:電算室空調)やCRAH(Computer Room Air Handing:電算室エアハンドラー)を調整すべきかといった判断を下せるようになります。
2つ目のポイントは、DCが地理的により広範囲に分散しつつあるという点です。これは、ここ数年間のクラウドコンピューティングやエッジ/コロケーションDCの増加を考えれば、驚くには値しませんが、いかに最適にリモートから機器を管理できるかという重要な疑問が生じています。
リモートデスクトッププロトコル(RDP)、仮想ネットワークコンソール(VNC)、内蔵プロセッサ(ESP)など、考慮すべきオプションは多数存在します。ソフトウェアツールとESPはいずれも多くのメリットをもたらしますが、KVMスイッチのようなリモートアクセスツールがもたらす信頼性は実現できません。リモートでの全自動展開や、いつかは海中DCを予定している企業にとって、この点は見過ごすべきではありません。
Project NatickはDC業界に変化をもたらすでしょうか? そうなる日が来るかもしれません。しかし当面、大半のDCにとって、現在の課題に対応することが最優先であることに変わりはありません。
今回で本連載は最終回となります。これまでの連載記事が皆様の業務の一助となれば幸甚です。
- 本連載は米国ラリタン本社が運営しているブログを翻訳・転載したものです。