今回は、リモートサーバ管理において、KVMスイッチ、内蔵プロセッサ、ソフトウェアソリューションが果たすそれぞれの役割について解説します。
IT管理者は、社内およびリモートにあるサーバ管理に関して、数多くの業務を抱えています。特に、オンサイトか別の場所かに関わらず、複数のシステムにアクセスする必要のある環境においてはなおさらです。
幸い、リモートサーバ管理に関しては数多くのソリューションが存在します。それぞれ独自の特徴を備えていますが、状況によっては管理対象すべてを網羅するために、組み合わせて使用することもできます。
包括的で多様なオプション
リモートサーバ管理に関しては、多様なオプションを利用できます。調査会社である米ESG シニアアナリストのMark Bowker氏によると、KVMスイッチは「モニター、キーボード、マウスケーブルを、切り替えボックス、モニター、キーボード、マウスを含む集中コンソールに集約」するものであり、サーバを物理的に直接操作する必要のある小規模のデータセンター(DC)や、「セキュリティの制約が厳しい」環境で一般的に使用されています。
KVMの次のステップが、組み込み型管理です。これは「サーバベンダーが、システムの状態を監視するチップセットを組み込む方式」と、Bowker氏は述べています。
こうした内蔵プロセッサを使用することで、ITチームは独自のエージェントをインストールする必要がなくなり、実際にはオンボードツールを使用して設定やファームウェアアップデート、障害検知を実行できます。また、これらのプロセッサをアラートや監視レポートのために、集中システムに接続することもできます。
真のリモート管理を実現するには、仮想ネットワークコンソール(VNC)やリモートデスクトッププロトコル(RDP)などのソリューションに立ち返ることも可能です。
RDPではネットワークを通じてサーバに接続し、当該システムに関する「従来のウィンドウを表示」すると、テクノロジーアドバイザリーおよびコンサルティングを手がける米Server and StorageIO シニアアドバイザリーアナリストであるGreg Schulz氏は述べています。
Schulz氏によると、VNCは実際には「オペレーティングシステムのビュー」を提供するとともに、オンサイトまたはオフサイトの下位レベルの機能までサーバの詳細を明らかにします。「例えばVNCツールを使用して、ホスティングサイトの専用プライベートサーバに接続したり、自分の環境内で仮想マシンを実行している物理サーバの1つに接続したりすることができます」とコメントしています。
KVMがもたらすメリット
RDP、VNC、内蔵プロセッサは、遠隔地からの管理や診断タスクを実行できるため検討する価値はありますが、オンサイトおよびリモートのアクセスツールとして従来のKVMに取って代わるものではありません。
ラリタンのシニアプロダクトマネージャであるRichard Dominachによると、この理由は「KVMが確かな信頼性を備えており、サーバへの接続にサーバ自身のネットワーク接続を使用しないためです。またKVMは、ソフトウェアエージェントや基盤となるOSおよびネットワークに依存しません」と述べています。
サーバなどハードウェアの故障や、ネットワーク経由でのサーバの接続能力に影響を及ぼすものがある場合、直接KVM接続で診断を実行し、すぐに復旧できます。
KVMには、サーバへのアウトオブバンド接続に加え、そのほかにも多くのメリットがあります。Dominachによると「例えばKVMスイッチは、『複数ベンダーのサーバへの異なる種類のアクセス』を実現できるため、ベンダーに関係なく同じコンソールエクスペリエンスを得ることができます。また、そのほかのリモートサーバ管理ツールには比較的高性能なものもありますが、長年にわたるKVMソリューションの詳細な機能に匹敵するものはまだありません」と述べています。
また「サービスプロセッサのKVM-over-IP性能は限定的で、日常的なITメンテナンスには十分ですが、放送、ビデオ、科学、その他のダイナミックアプリケーションへの高性能なリモートアクセスが必要な多くのユーザーには不十分です。こうした高度なユーザーは、高性能KVMスイッチでしか得られない超高速のIPアクセスと特別な機能を必要としています。このようなお客様が求めているものは、超高速のレスポンス、毎秒30~60フレームで1920 x 1080の動画、24ビットカラー、デュアルビデオカード、マルチモニター、デジタルオーディオ/ビデオ(DVI、HDMI、DisplayPort)などです」とも語っています。
適切なツールの選択
真のリモートアクセスと管理が必要な場合は、RDPやVNCなどの選択肢を採用します。KVMのメリットとVNCやRDPの柔軟性を備えたハイブリッドソリューションの構築はいつでも可能だということです。どのサーバで、どのソリューションを使用するかを選別や、状況に応じてどちらか一方を使用するか選択できる真のハイブリッド設定とすることも可能なのです。
まずはじめに
どのリモートサーバ管理ソリューションを使用するのかを選ぶ前に、まずビジネス要件について検討し、一連の質問を自問してみる必要があります。Server and StorageIOのSchulz氏は、次のように話しています。
「重要なのはバランスです。そもそも何を目指しているのか、最も頻繁に遂行したいことは何か、1日または1週間に何回、物理的にサーバのコンソールのところに行く必要があるか、ネットワーク経由で接続する代わりに、コンピュータルームにいる頻度はどのくらいか、そのためにどのくらい時間を費やしているのか、所有しているサーバは何台か、といったことです」
実行計画
環境の把握: まず、ビジネス要件を理解し、環境を分析することから始める必要があります。大半のDCはKVMからメリットを得られますが、KVMは導入できる唯一のソリューションというわけではありません。
時間について検討: IT管理者は心配事がたくさんあるため、VNCやRDPなどの真のリモートソリューションの導入を検討し、問題が生じるたびに物理的にサーバのところに行くのではなく、デスクから、あるいは施設から離れていても状況に対処できる選択肢もIT管理者に与える必要があります。
重要なヒント
KVMへの依存度は業界によって異なる: ラリタンのDominachによると、業界によってはKVMスイッチが依然として主力ソリューションになっている企業があります。
Dominachは「多くのお客様は、独自の必須機能のためにKVMスイッチを使用し続けています。これには、テスト/開発ラボ、放送、エンターテインメント、科学、産業、政府、軍事、その他セキュリティ重視のセグメントなど、特定の顧客セグメントが含まれます」とコメントしています。
距離のメリットを生かす: IT管理者の中には、KVMだけに集中するよりも、リモートからより多くのタスクを実行できたほうが、効果的にDCの環境に対処できる場合があります。ESGのBowker氏は次のように述べています。
「仮想化とリモートセッションベースのコンピューティングが急速に浸透するにつれて、物理的にデータセンター内のサーバの前にいる必要性は大幅に低下しています。管理者はデスクにいながらリモートコンソールを通じてリモートからログオンし、ローカルでサーバのところにいる場合とまったく同じように表示できます」
重要なポイント
サーバ管理には、KVMスイッチ、内蔵プロセッサ、仮想ネットワークコンソール、リモートデスクトッププロトコルなど、すべてが選択肢となります。
KVMは依然として信頼性の高いソリューションであるため、多くのDCで今後も主要なソリューションになると思われます。
KVMとVNCまたはRDPを併用するハイブリッド設定を検討することも可能でしょう。
- 本連載は米国ラリタン本社が運営しているブログを翻訳・転載したものです。