写真編集ソフトの定番「Photoshop」が、今年で25周年を迎えます。そこで、フォトグラファーやデザイナー、イラストレーターなど、このソフトを愛用している各界のクリエイターに、アニバーサリーイヤーを記念して、ご自身とPhotoshopに関するエピソード、そしてPhotoshopへのお祝いの言葉を寄せていただきました。
今回ご登場いただくのは、『トイ・ストーリー3』などピクサーにおける作品制作で活躍した後、独立してアニメスタジオ「トンコハウス」を設立。同スタジオから発表した初の短編アニメーション作品『ダム・キーパー』がアカデミー賞ノミネートを果たした、アニメーション監督/アートディレクターの堤大介さんです。
――はじめて触れたPhotoshopのバージョンと「第一印象」は?
1998年に一番初めに就いたアニメーションの仕事で触れて、それ以来ずっと使っています。バージョンはPhotoshop5.0だったかと思います。
僕は大学で油絵を勉強していて、そのときはEメールすら使っていなかったので、油絵からいきなりPhotoshopに移行しました。なので、最初はどうやっていいか全く分からなかったですね。しかもその当時、Photoshopを使ったという絵はリアルを追求する写実的な物が大半で、僕にとって魅力的な物がほぼありませんでした。
ですが、Photoshopでアナログ的な画風を実現するアーティストの作品に出会えたことで、その偏見は変わりました。Photoshopでもこんな描き方ができるんだ!と感動して、自分もこういう風に描けるようになりたいと思ったのが、きちんとこのソフトを学ぶきっかけになりました。
――普段の業務・活動におけるPhotoshopの使い方を教えてください。
本当に基本的な機能だけを使っていて、使用頻度が高いのはブラシツール、それと調整レイヤーです。
『ダム・キーパー』では、調整レイヤーを多用したこの作品ならではの作り方を苦心して編み出しました。例えば部屋の中の暖色系の光と、窓から差し込む寒色系の光があったとして、それらを一度に描かず、それぞれを独立した調整レイヤーに割り当てて扱うようにしました。そうやってレイヤー分けをすることで、他のアーティストに依頼したカットをすべて自分たちで詳細にチェックすることができるようになりました。
――最もよく使う/気に入っているPhotoshopの機能は?
『ダム・キーパー』の制作では1カットずつPhotoshopで絵を描いていったので、多くの作業をPhotoshopで行っていて、それ自体がなくてはならないものでした。
この作品の制作では大半の作業をPhotoshopで行っていたのですが、カットをつなげてアニメーションにする作業については別のソフト(TVPaint Animation)で行いました。なので、欲を言えばアニメーション機能をより強化していただけるとうれしいです。すべての制作をPhotoshopで行えたら本当に理想的ですね。
――最後に、25周年の節目を迎えたPhotoshopへの激励の言葉をお願いします。
僕はずっと自分のキャリアの中でPhotoshopだけをずっと使ってきました。ほかのソフトに触ったこともあったのですが、すぐに飽きてしまって、ずっとPhotoshop一筋ですね。
Photoshopは多くの新機能を追加し続けているツールですが、絵を描くための道具としては、まだ発展の余地があるのではないかと感じます。すでになくてはならないツールではありますが、もっと「絵描き」に優しくしてもらえたらと願ってやみません。
『ダム・キーパー』の日本語対応Blu-ray&書籍が発売
アカデミー賞にノミネートされた短編アニメーション『ダム・キーパー』日本語字幕収録版のBlu-rayディスクが、3月16日に発売。
それに先駆けて、英語版で刊行されていた書籍「アート・オブ・ダム・キーパー」の日本語版も、2月20日に先んじて発売されます。
これまで気になってなかなか手が出ていなかった人も、ここで初めて知った人も、興味を惹かれたらぜひ手にとってみてください。
「Photoshop」を愛用するクリエイターの声をお伝えしてきた連載『Photoshopと私』は今回で最終回。25人目のクリエイターは、この記事を読んでくださったあなたです。これまでありがとうございました!