写真編集ソフトの定番「Photoshop」が、今年で25周年を迎えます。そこで、フォトグラファーやデザイナー、イラストレーターなど、このソフトを愛用している各界のクリエイターに、アニバーサリーイヤーを記念して、ご自身とPhotoshopに関するエピソード、そしてPhotoshopへのお祝いの言葉を寄せていただきました。
今回ご登場いただくのは、あべのハルカスやすみだ水族館、LOFTといった商業施設や美術館などのサインデザイン、CI、VI計画を多く手がける著名アートディレクター・廣村正彰氏が率いる「廣村デザイン事務所」のチーフデザイナー・衛藤隆弘さんです。
――はじめて触れたPhotoshopのバージョンと「第一印象」は?
大学の授業ではじめてふれたのがPhotoshop 5.5です。当時はグラフィックデザインよりも絵画表現に興味があったので、絵画のマチエールをデジタルで自由に操作、加工できることに多いに可能性を感じました。
その後は、デジタルツールならではのグラフィックデザイン表現を模索する中でIllustoratorの使用頻度が増え、併用するようになりました。
――普段の業務・活動におけるPhotoshopの使い方を教えてください。
サインデザインやVI開発の仕事が多いため、写真などの画像を用いる事はそれほど多くはありません。ただ、写真そのままの状態ではサインに展開できませんが、例えば二階調化することで、カッティングシートやシルク印刷で施工することが可能になるなど、サインデザインの表現の幅を広げるためにPhotoshopを活用しています。
――最もよく使う/気に入っているPhotoshopの機能は?
二階調化、カラーハーフトーン、チャンネルの操作などです。豊かな情報量を持つイメージを単純な「版」に置き換えるためのツールとして重宝しています。
半恒久的に設置されるサインデザインにおいては、カラー写真はあまりに生々しく、取り扱いにくい存在です。建築や環境との調和を考えながら、写真をモノクロにしたり、二階調化したり、網点にしてみたりと、最適な定着を目指してPhotoshopの機能を使用します。
――最後に、25周年の節目を迎えたPhotoshopへの激励の言葉をお願いします。
細かい話ですが、覆い焼きツールや焼き込みツールのアイコンがマスクや手であることは、暗室作業を経験した私にとって非常に納得感があるものです。そのことが、わずかながらもデジタルな作業に「リアリティ」を与えてくれています。これはPhotoshopが単に画像調整のソフトではなく、写真技術をベースに発展・進化してきた確かなツールであることの証拠です。
昨今は類似の機能を持ったソフトやアプリが多く登場していますが、Photoshopは写真や印刷というテクノロジーをベースとした、信頼感のあるツールであり続けてほしいと期待しています。