平成23年9月に設立のBsize代表、八木啓太氏はLEDデスクライト「STROKE」の発表以来、テレビをはじめとするさまざまなメディアで「一人メーカー」として注目を集めている。一人メーカーでは、製品の企画、デザイン、設計から試作、量産、さらにマーケティングや営業までも一人でこなす。協業先も事業の成功には不可欠で、樹脂パーツの試作から少量生産では、プロトラブズのProtomoldとFirstcutが効率化に大きく貢献した。
課題
- パーツ設計における複数のオプションを迅速に検討したい
- 試作から量産への移行がスムーズにできる仕組みの実現
- デジタルだけでは表現できない設計者の意図を組んだ製造の実現
解決
- 無償のインタラクティブ見積りシステムProtoQuoteの活用
- 同じデータを切削加工、射出成形の両方で活用可能なサービス
- ProtoQuoteの自動解析結果をフォローするプロトラブズの人員体制
短納期かつ安価な設計オプションを検討
ビーサイズ株式会社の代表、八木啓太氏は製品開発のためのさまざまなスキルを戦略的に身につけたのち、独立を果たした。同社の設立と歩調を合わせるようにLEDデスクライトの「STROKE」を発売した。この成功の裏側に同氏の優れた開発戦略とともに柔軟なテクノロジーの活用があった。
「一人メーカー」であるBsizeでは、製品の企画、設計はもとよりパーツ加工を依頼するメーカーの開拓、組立、販売までも一人で行わなければならない。課題となってくるのが製品の試作、さらには量産にいたるまでの実際にモノを作るプロセスである。一人メーカーは自由闊達ではあるが、大企業のように資金や人的リソースに余裕があるわけではない。設計データを迅速かつ正確にリーズナブルなコストで「形」にできるかどうかは死活問題だ。それだけではない。加工先を探す際、リーズナブルなコストで、小ロットの製造を請け負ってくれる会社を探すことは、簡単ではない。
そんな時に出会ったのがプロトラブズである。プロトラブズが提供する切削加工サービス「Firstcut」、そして超短納期射出成形サービスである「Protomold」を活用すれば、パーツ一個から、数十個、数百個という小ロットの量産まで対応してもらえることがわかったのだ。
八木氏は、製品の設計に3D CADを使用している。この3Dデータをプロトラブズのインタラクティブな見積りシステムにアップロードすれば、数時間のうちに見積りが入手できる。この圧倒的なスピードも魅力だった。 魅力を感じた八木氏はSTROKEのスイッチ部分の設計検討から試作、最終形状のFIXまでのプロセスにFirstcutを活用して迅速に開発を進めることができた。
LEDデスクライト「STROKE」。色の再現性の指標、平均演色評価数(Ra)で90以上を実現。自然光下での本来の色を忠実に再現することができ、色比較・監査、臨床検査、美術館などの最も色に厳しい現場でも使うことができる。 |
試作だけでなく量産も短納期とコストパフォーマンスを実現
プロトラブズを活用できるのは試作だけではない。STROKEでは製品の樹脂パーツにProtomoldにより射出成形したものを使用している。通常、金型を起こすとイニシャルコストがかかる。特に、小ロット生産の場合には金型を使うと単価アップが避けられない。したがって当初はできる限り金型を起こさずにパーツの製造を進めることを志向していた。しかし、両面加工が必要なパーツでは切削加工でもコストがかかる。大きさ24mm程度の比較的小さなそのパーツについて、八木氏は金型を射出成形で進めることを決断した。
Protomoldを使えば、Firstcutの際にアップロードした3DCADデータを活用できる。見積りは数時間のうちに確認することができる。この見積りProtoQuoteでは、設計の検討も専用の3Dビューワ上でできるため、成形に影響する問題を潰してから発注のプロセスに進むことができるのだ。
設計上パーツをどのように配置するかで、成形性やコストなどさまざまな要素が変化するため、最適な配置の検討のために、ここでもProtoQuoteを活用した。ProtoQuoteの利用は無償である。そこで、さまざまなパーツの配置パターンを検討、モデリングして次々にデータをアップロードして価格を比較し、最適を選択して、発注という自然な流れを作ることができた。
デジタルだけでは表現できない設計者の意図を組んだ製造の実現
プロトラブズの見積りであるFirstQuoteとProtoQuoteは、3D CADデータをアップロードすると、数時間のうちに届く。この見積りはインタラクティブに操作可能で、使用する材料や製造する個数、仕上げなどを変更すれば即座に価格や納期に反映される。樹脂パーツの設計では成形性が問題になることは珍しくないが、プロトラブズは独自開発のソフトを並列処理する最先端のITを駆使した短納期システムで3Dデータを解析して、結果を3Dで表示する。設計上の調整が必要となる箇所が一目瞭然である。問題がなければ、あとはワンクリックで発注できる。この効率的なプロセスに人手が入り込む余地はなさそうに見える。しかし、実際には見積りが届くと、プロトラブズから電話連絡がある。そこで、発注者は実際、より細かく自分のニーズやパーツの目的などを伝えることができる。射出成形に詳しくなくても、サポートを受けながら成形性を満たしたモデリングをすることもできるのだ。
八木氏も前述のパーツの最終形状をFIXさせた後、プロトラブズの担当者に「コストを下げたい」という意向や、そのほかのさまざまなアイデアを伝えた。ディスカッションをすることで例えばこのパーツは内部のパーツで意匠に関係ないことから金型に磨きをかけないことでコストを節約する、など柔軟な対応ができた。結果、パーツも単価換算で数百円に抑えることができたのでProtomoldを実用化することに決定した。
一人メーカーに限らず、効率的な開発を目指す現代のメーカーにとっても今後注目していくべき製造方法ではないだろうか。
ビーサイズ株式会社
ビーサイズ株式会社 代表取締役
八木 啓太 氏2011年創立の家電製品開発を行うベンチャー企業で、「美、真、善」という理念による独自の家電製品の企画、製造、販売を行なっている。LEDデスクライト「STROKE」は、発表から大きな話題を集める。さらに、開発から販売にいたるまでのメーカーとしての全てを一人で行う「一人メーカー」としての取り組みが話題になり、メディアでも大きく取り上げられた。増産が続くSTROKEに続き、ワイヤレス型充電器などのユニークな製品の開発を積極的に推進。
本連載は、「日経ものづくり」2013年3月号に掲載されたコンテンツを再編集したものです。
プロトラブズおよびProtomold射出成形の詳細:http://go.protolabs.co.jp/