射出成形で樹脂パーツを成形するにあたって、肉厚を均一に設計することの重要性を今号ではご紹介してまいります。金型に溶融した樹脂を注入すると、液状の樹脂は最も抵抗の少ないルートを選ぶかのように流れ、形状の隅々を満たそうとします。ただし、樹脂は粘度が高いため、圧力をかけ続ける必要があります。また、樹脂は冷えるにしたがってさらに粘度が増し、固化していきます。成形されて出てきたパーツは固化していて、冷めているように感じられますが、しばらく収縮が続きます。設計に際してはこれらを踏まえることで、樹脂が均一に充填されたパーツができあがる射出成形の成功を導くことができるのです。
肉厚に関連する問題が発生する原因と、設計で回避する方法として、二つの例をご紹介します。まず一例目は、パーツの表面にデカール フィーチャとして凹みを設けたい場合です。デカールの凹み部分が大幅に肉薄になると、溶融した樹脂はまず、少しでも抵抗の少ない、より肉厚な箇所へ流れようとします。時には、他の肉厚のフィーチャを充填した後、最後にこの薄肉の凹み部分に樹脂が充填される場合もあります。また、薄肉部分の樹脂は冷却も早いため、樹脂流動の先頭がうまく融合せずに、外観不良や、構造上の欠陥につながるウエルドラインが形成されてしまう可能性があります。また、その薄肉部分の融合部にベント(排気)が設置できない場合には、樹脂の流動にともなって空気が圧縮されて気泡やヤケが発生することがあります。
この問題を回避するために、肉厚を維持したまま凹形状のデカール フィーチャを設計することは簡単で、片面を凹ませたら、反対側の面を同じ形で出っ張らせることです。この形状に設計することで、肉厚は均一化され、凹凸の部分が滑らかなフィーチャになっていれば、樹脂の流動もスムーズになります。(図1参照)
図1: 均一な肉厚になっている 1.1 と 1.3 では、樹脂は金型の中をスムーズに流れて充填、成形されます。しかし、1.2のように肉薄部分があると、樹脂の流れが妨げられることになります。 |
二つ目の例として、壁面に沿ってボスを配置する場合を紹介します。図2の左下 Bad boss と記載してある形状では肉厚になり、ヒケが発生し易くなります。この問題は、ボスを壁面から離してリブでつなげることで回避できます。リブ自体が厚肉にならないよう、リブはつなげる壁の肉厚に対して約半分程度にするのが理想的です。(ボスの肉厚も立ち上がり面に対して同様の寸法設定が理想的です。)
図2:ボスの位置が壁にとても近い場合、ボスを壁面の一部のように設計したくなるかもしれません(図の左下 Bad boss 部分)。しかし、そうすることで厚肉部分ができてしまい、ヒケが発生し易くなります。ボスを壁面につなげたい場合は、リブを配置する方法があります(図の右側Well designed bosses 部分)。 |
肉厚が不均一な形状では、ヒケが発生することに加えて、樹脂の充填が課題になることもあります。たとえば、溶融した樹脂が薄肉部分を通過して厚肉部分を充填しなければいけない場合、厚肉部分に樹脂が十分に充填しないうちに薄肉部分が冷え、固化し、厚肉部分にヒケやボイド(空洞)ができてしまうことがあります。 ゲートの位置を変えることで、改善できる場合もありますが、均一な肉厚に設計することが得策です。
パーツの形状が複雑なほど、樹脂の選択の重要度も増します。例えば、PC(ポリカーボネート)では、ほとんどの場合に厚肉部分でボイドが発生します。PP (ポリプロピレン)では、厚肉部分でヒケが発生しやすく、細かい気泡ができる傾向にあります。
まずはぜひ、パーツの3D CADデータをお送りください。材料をご指定いただければ、樹脂流動解析の結果によってゲート位置をご提案させていただき、パーツの薄肉、厚肉部についてもお見積りと同時に解析結果を24時間以内にお送りします。解析もお見積りも無料ですので、便利なツールとしてご活用ください。
ご参考:
■ProtoFlow 樹脂流動解析の詳細
■プロトラブズ樹脂部品設計ガイド
■ProtoQuote®無料解析&見積り
本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。