アンダーカットがある場合でも、比較的小さなものであれば、スライドを使わずに二方向抜き金型で取出すことができます。一般に 「無理抜き」と呼ばれますが、これは、金型とパーツ形状の関係が、洋服に使うスナップボタンのように、押してパチッとはめ、引っ張って外すような状態に なっている形状で、はめる際あるいは、外す際に微妙に変形します。したがって、このようなパーツの場合、変形によってダメージを与えないように、形状を考え、ふさわしい材料を選択することが必要です。

アルミ型で射出成形する樹脂パーツでは、エジェクション時に変形するのは、型ではなく、樹脂パーツです。無理抜きができるかどうかを判断するには、さまざまな要素を考慮する必要があります。アンダーカット自体の形状、パーツに使用する樹脂の特性、アンダーカットの周囲の形状、そして金型自体の形状(パーティングライン)などです。

図1と図2では、アンダーカット形状を紹介しています。「無理抜き」をうまく行うためには、図1のようなエッジを丸めた突起が必要です。図2のように、エッジが尖ったままであることは望ましくありません。パーツの他の部分に問題が無ければ、図1 のシリンダ内側の突起形状は、金型の溝形状に強く引っ掛かることなく、取り出すことができます。それとは逆に、図2のようにエッジが尖った形状は、金型の溝形状の中にはまってしまい、取り出すことが出来なくなってしまいます。無理に引き出そうとすれば、この部分が剥がれ落ちてしまいます。

図1:無理抜きのためにはエッジを丸めた突起が必要

図2:エッジが尖っていると、うまく取り出すことができません

「無理抜き」をうまく行うためには、選択する樹脂も重要です。パーツの形状によっては、樹脂に求められる特性として、エジェクション時に伸びたり、曲がったりが可能で、元の形状に戻ることが挙げられます。PP(ポリプロピレン)やLDPE(低密度ポリエチレン)には柔軟性があり、無理抜きに適しています。 逆に、ガラス入りナイロンはたいへん固いため、「無理抜き」には向いているとは言えません。

例えば、図1がボトルにはめる蓋である場合には、下図のような蓋の成形方法があります。図3と4は、蓋の内側も外側も可動側の金型のみで成形している例です。図5では、蓋のパーツはキャビとコアで成形しています。蓋の外側は固定側の金型で、内側 は可動側の金型で形成しています。

図3と4は、お勧めできない成形方法です。

図3では金型にリング状の突起部分を形成して成形することになるため、アンダーカット部分が金型に押し付けられている状態でパーツを抜くことになります。この ことで、取り出す際に樹脂が圧縮され、逃げ場がなくなったパーツは金型から引き剥がされるように押し出される可能性があります。

図4ではリング状の突起の代わりに、リブの上部を内側に曲げたベンド形状で成形することになるため、樹脂を圧縮することなく、曲げと引っ張りの挙動でパーツを 取り出すことができますが、変形する可能性が非常に高いことが難点です。変形は、エジェクト時に必要となる大きな力や、樹脂が設計どおりの形状に戻らない などの問題により生じる可能性があります。

図3:アンダーカットによって取り出しの際にリブが圧縮される成形方法

図4:樹脂の曲げと伸びの挙動で取り出す方法は、パーツが変形する可能性が高い

図 5 は、無理抜きに最も適した、金型のキャビコアで成形する例です。この方法では、パーツの外側は固定側、内側は可動側で成形します。樹脂が冷却し、金型が開いた時にパーツはコア側に残ります。パーツの外側に金型の壁がない状態なので、パーツが可動側から取り外される際に自由に伸びることができ、パーツのリング部分への損傷がない状態で取出すことができます。

図5:キャビコアで成形することで、金型を開いた後にパーツを「無理抜き」することができます

【ご参考】
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本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。