製品を開発するうえで、適切な樹脂を選択することは設計と同様に大切なことであり、時には難しいものです。書籍やWebには多くの情報が掲載されていますが、選択した樹脂が最適なものかどうかは、実際にパーツを製作して、試作、テストするまではわからない可能性があります。

その製品の要件が明確で、選択するべき樹脂が明確な場合もありますが、一方で、要件自体はそれほど厳しくないために、樹脂選択の幅が広くて悩むことがあるかもしれません。最も苦労するのは、競合するいくつもの要件に対して、コスト、外観の仕上がり、成形性、そして機能性をちょうど良いバランスで満たすような材料を見つけなければならないときでしょう。量産に入る前に、できる限り全ての要件を満たす材料を選ぶことは容易ではありません。

試作目的で、同じ3D CADデータから、複数の材料でパーツを射出成形した例

樹脂の物性に関する情報を検討することは、材料を絞り込むことに役立ちますが、「これぞベスト」という解を得ることはなかなかできないものです。パーフェクトな樹脂と、次に最適と思われる樹脂の差分は一見小さいと思われても、そのパーツを何万個も生産することを考慮したときには、最適な材料を探すことに費やした努力と時間は決して無視できない結果を産むことがあります。最終候補に上がった材料を効率的に比較できれば、安心して量産に展開できます。

通常は、樹脂を選択して試作、評価してその樹脂で製品化を進めることにするか、別の樹脂も試すことにするかを決めるのではないでしょうか。そして急に、もっと適切と思える樹脂が見つかっても、開発スケジュールとコストを考慮すると、最初の樹脂で量産を進めざるを得ないという結論に達する場合もあることでしょう。

このような場合でも、予算やスケジュールへの影響を最小限に、選択肢に挙がった樹脂すべてを同時に試作、比較するという解決策があります。プロトラブズでは、射出成形と切削加工サービスにて対応しています。

1. 射出成形で試作する場合、まず始めにパーツの成形性を確立しましょう。

プロトラブズでは、無料で何度でも成形性解析とお見積りをさせていただきますので、3D CAD データをアップロードしてみてください。

2. 収縮率が大きく異なる樹脂の場合は、Firstcut 切削加工によるパーツ製作をご検討ください。嵌合評価などを実施できます。

切削加工できる樹脂は以下を用意しております。
- ABS、PBT、PC/ABS、PEEK、POM、アクリル、ナイロン、ポリカーボネイト、ポリプロピレン、塩ビ

同程度の収縮率の材料に絞りこめた場合や、公差がそれほど厳しく問われない場合には、Protomoldによる射出成形で試作をお勧めします。ただし、射出成形の場合、樹脂固有の収縮率に応じて、異なる金型を製作する必要のある場合もあります。先に Firstcut 切削加工でパーツを製作することで、金型を複数製作しなくて済むこともあります。

まず、Firstcut による CNC 切削加工で試作を行い、それに続いて Protomold による射出成形でパーツを製作することで、多くの樹脂の可能性を検討することにより、金型費を抑えることができます。試作のメリットは紙面の物性情報だけでは得ることができない以下のような機能を確認できる点にあります。

-色の比較
- 透明度
- 落下、衝撃、耐光などの試験
- 必要な強度を満たすためのガラス含有度
- ヒケやそりの発生具合

複数の樹脂でパーツを作ることで、開発スケジュールを守りながら、より厳密な比較検証を行うことができます。期待値だけでなく、実際に確認できる内容としては、市場性(展示会などでの反応)、機械的な物性、他の部品との嵌合、環境試験などがあります。このようなアプローチによって最適な組み合わせを導き出すことができ、場合によっては期待値を上回る結果を得ることもできるかもしれません。

複数の樹脂による試作を実施することに伴う追加コストは少なくて済み、得られるメリットは絶大です。唯一の制約は、前述したように、一つの金型から同寸法のパーツを製作するためには、ほぼ同じような収縮率の樹脂を使う必要があることです。異なる収縮率の樹脂を比較したい場合は Firstcut による切削加工が適しています。

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Protomold 樹脂特性ガイド

本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。