樹脂パーツに流路を作る理由はさまざまです。流路、トンネル、穴を使って、流体や気体、場合によっては固体を流すことが目的です。このような形状は医療機器に多く見られます。流路を射出成形によって形成するには、金型にスライドのコアやピンなどを使用します。Protomold 射出成形では、金型のピン形状をそのまま削りだすか、スチールピンを入れ子にして対応します。流路の成形をする場合でも特に、2つの流路が交差するパーツ形状では、技術的な課題をクリアする必要があります。その課題とは、流路を成形するための2つのピンが接する領域で、合わせ目が確実に形成されるようにすることです。図1ではその一例を示しています。
この方法の問題点となるのは、2つのピンが接する部分にカミソリの刃のような鋭い(鋭角な)エッジができてしまうことです。このようなデリケートな形状は、通常の金型の操作や樹脂の注入の過程でダメージを受けてしまうリスクが高くなります。この鋭角なエッジが損傷すると、その部分に樹脂が流れ、流路の内面という極めて除去が難しい場所にバリや駄肉を発生させてしまうことにつながります。
もちろん、パーツの設計において、金型でどのようにピンを使用して流路を形成するかを明確に指定する必要はありません。しかし、図1 に示すような形で交差する流路では、合わせ目が形成されることを考慮する必要があります。意図せずに、このような問題がおきる可能性のある合わせ目を設計した場合でも、解析結果としてProtoQuote® でハイライトします。ProtoQuote は流路の交差を識別するわけではありませんが、許容値以下の鋭角なエッジを検出して、図2のように金型が「尖った形状」になることをハイライトし、修正が必要であることを示します。作業を進めるためには、この問題を回避するための設計変更を行っていただく必要があります。以下に、このような合わせ目の問題をなくすためのシンプルな設計変更の方法をいくつか紹介します。
図3に示すように、流路を形成するためのピンの形状にテーパ(勾配)をつける方法があります。これにより、メインの流路の内径に接触する鋭角のエッジの長さがより短くなりますので、金型のダメージを低減することができます。
図4では、図3で示したのと同じことを、横の流路の直径全体を、メインの流路よりも小さくするという方法で実現しています。このような変更をすることで、鋭角のエッジを減らすことにつながり、図3と同様に金型のダメージを低減することにもつながります。
図5では、図3でのテーパの代わりに面取りを付けた場合の手法を紹介しています。面取りをすることによって直径を変更することなく鋭いエッジが形成されないようにすることが可能になるのです。
図5では、図3最後に図6では、横流路からメイン流路への流量を変化させたくない場合は、横流路の直径を大きくした上で、図5の手法を適用するという方法を紹介しています。これにより2つの流路が交差する部分の断面積も大きくなるので、設計で意図するような流量を確保することができます。なお、公差する部分の断面形状はメイン流路の直径方向に短く、長手方向に対して長い長穴形状になります。
ご参考:
■プロトラブズ樹脂部品設計ガイド
■ProtoQuote®無料解析&見積り
本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。