題名にふさわしい記事に仕立てることを目指してみましたが、実際のところ、射出成形で製作する部品を設計するうえでの基本的なルールはここ何年も変わらず、これからも変わることはないでしょう。そこで、確信をもって開発プロジェクト進めていくための基本ルールをあらためて振り返ることにしました。
以下のリストをプロトラブズの技術者に提示し、優先順位の高い項目から並べ直すよう依頼してみました。ところが、答えは「どれも最重要」でした。「一つでも条件を無視すると、良い結果にはつながりません。」ということなので、今回は「短納期射出成形を成功させるための4つの最重要ルール」をご紹介してまいります。
1a). 肉厚を均一にする
1b). 適切な抜き勾配をつける
1c). 使用する材料の特性を理解する
1d). Protomold の製造プロセスを理解する
均一な肉厚
肉厚が均一でないことによって、さまざまな問題が発生する可能性があります。ゲートの位置にもよりますが、樹脂が肉厚の薄い部分を通過した後、厚い部分に 流れて充填されるような場合には、充填が不完全に終わる「ショートショット」が発生する可能性があります。また、樹脂は冷えると収縮するため、肉厚の厚い 部分のほうが、薄い部分より大きく収縮することでソリが発生することもあります。
それでは、肉厚が均一(または、ほぼ同じ)として、肉厚はどの程度が良いのでしょうか。薄過ぎると強度に問題が出てきますし、厚 過ぎると、大幅な収縮によって意匠的に見にくく、問題の発生源になり得るヒケが起きます。また、金型に接している製品表面と肉厚中心部の収縮差や溶融樹脂 から発生するガスの影響により、肉厚が厚い場合には、表面や内部に気泡が発生して、パーツの強度が弱まることにつながります。理想的な肉厚は、パーツに求められる機能や使用する樹脂によって異なります。適切な肉厚に関する情報は、プロトラブズ樹脂部品設計ガイドの「樹脂の種類と推奨肉厚」でご紹介しており ます。ProtoQuote見積りでは肉厚に関するアドバイスも提示しますが、設計時に樹脂の特性を加味することが理想的です。
製品表面に凹凸形状を追加する場合、周辺の肉厚より厚くする必要はありません。そのような場合には、完全なソリッドではなく、肉抜きをした形状として設計することで対処できます。
適切な勾配
野球選手がスライディングをしたときのユニフォームの状態、思い浮かぶでしょうか?ベースに向かって思いっきり滑り込んだときに、激しい摩擦が生じてズボンがすり切れることもあります。実は、抜き勾配のついていない面を金型から外すときにも同じような現象が起きるのです。パーツを設計する際に適切な抜き勾配をつけることで、スムーズに成形品を離型させることができます。必要な抜き勾配の角度は、製品の高さ(深さ)や形状、シボ加工の有無など形状のフィーチャによって異なります。
抜き勾配は、型開き方向に対して平行な面には、可能な限り付加するのが理想的です。アンダーカット形状に対応するスライド構造の場合もスライドの開口部分と平行になる面に抜き勾配を付加する必要があります。また、固定側と可動側両方の金型面が接触するするすり合わせ面が型開き方向 に対して平行な場合にも抜き勾配が必要になります。抜き勾配に関する詳細は、プロトラブズ樹脂部品設計ガイドの「パーツにはR(丸み)と抜き勾配を設け る」でご紹介しています。設計されたパーツの 3D CAD データをアップロードすることで、抜き勾配を追加する必要があるかどうかの解析結果の図解を含む無料見積り「ProtoQuote」を平均3時間で入手できます。
樹脂の特性について
さまざまな樹脂が存在し、その特性は多様なため、ここでは詳細は割愛しますが、部品の成形に影響を与える可能性のあるポイントをご紹介します。
強度などの機械的特性を考慮した場合、樹脂自体の強度が高ければ部品の肉厚(使用する材料の量)は少なくてすむ可能性があります。
収縮率は樹脂によって異なりますが、必ず成形性に影響を与える特性です。特に、ガラス繊維などが添加されている樹脂の場合は、溶融した樹脂が流れる方向によって、収縮が均等にならないため注意が必要です。
樹脂の粘性や、小さなフィーチャを充填しきれるかどうかも樹脂によって異なります。
上記も含め、樹脂に関する基本情報は、プロトラブズ樹脂部品設計ガイドの「樹脂の選定」でも紹介しています。
Protomold のプロセス
短納期射出成形サービス Protomold は、一般的な射出成形と同様の手法を組み入れていますが、圧倒的な早さと、安価にパーツを入手できることが特長です。このメリットを実現するための条件がいくつかあります。
これら要件の詳細は、プロトラブズ樹脂部品設計ガイドの「Protomoldに特化した設計ガイドライン」の中で説明しています。
本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。