サーバのアドバンテージをデスクトップにも

日本アイ・ビー・エム システム製品事業 システムx事業部 テクニカル・セールス 後藤有希子氏

IBM System xサーバーは、ハードウェア設計から運用管理ソフトウェア、豊富な実測データに基づく構成支援ツールなど、多方面からの取り組みによってエネルギー効率の高いコンピューティング環境を実現する。日本アイ・ビー・エム システム製品事業 システムx事業部 テクニカル・セールス 後藤有希子氏は、「System xサーバーのアドバンテージを生かし、ユーザーが直接利用するデスクトップ環境の効率改善を実現することもできる。そのためのソリューションが『デスクトップクラウド』」と語る。

サーバーの高効率化は、データセンター内部の話にとどまらない。現在のサーバの処理能力は、プロセッサーの進化もあり想像以上に強力になっているうえ、高速なネットワーク環境が普及したこともあって、以前は実用環境として利用するのはためらわれたようなシステムが問題なく利用できるようになっているケースも少なくない。

そうした例の1つがデスクトップクラウドだ。これまでデスクトップクラウドは「レスポンスが悪い」「動作がもたついて使いにくい」といったイメージを持たれていたが、現在はこうした問題点はほぼ解消されており、環境によってはユーザーの手元に設置するクライアントPCよりもパフォーマンスが高い例も見られるようになってきている。

そもそも、デスクトップクラウドとは、ユーザーが日常業務で利用するクライアントのデスクトップ環境をリモートサーバ上で実行し、その画面をユーザーの手元の端末に表示するという「リモートデスクトップ環境」を基本とするサービスだ。

「当社は以前から、VMware ViewやCitrix XenDesktopといった製品をベースにしたデスクトップクラウドソリューションを提供してきたが、昨今の電力状況や見直しが進んでいる災害対策などを背景に、改めてデスクトップクラウドに注目が集まっている」(後藤氏)

システム復旧に在宅勤務、災害対策としても有効

一口にデスクトップクラウドと言っても、さまざまなシステム構成が考えられ、それぞれ機能や特徴が異なってくる。典型的な構成は、ユーザーの手元にはシンクライアント端末を配置し、コンピューティング処理はすべてサーバ側で実行する形態だ。

後藤氏はデスクトップクラウドのメリットについて、「ユーザーが利用するデスクトップ環境をサーバ上で一括して管理できるため、OSやアプリケーションのアップデートやセキュリティパッチの適用といった日常的な運用管理業務の負担が大幅に軽減されること」と説明する。

デスクトップをリモートで実行するというと、「処理速度が遅いのでは?」と思ってしまうかもしれない。だが実は、更新直前の古いクライアントPCを直接利用するよりも、デスクトップクラウドのほうがパフォーマンスが高いことも珍しくないのだ。

シンクライアント端末は構成がシンプルな分故障の可能性も低いし、パフォーマンス面で旧式化する心配もないため、定期的なクライアントPCの更新というコストのかかる作業から解放されるメリットも大きい。また、セキュリティ面でもローカルにデータが保存されることはないため、ユーザーが個別にセキュリティを維持する負担を回避でき、サーバ側で一括して手厚い保護を行えるようになる点も企業ユーザーに取っては無視できない大きなアドバンテージだ。

災害復旧という観点からは、ユーザーの作業環境を安全なデータセンターで一括して保存できる点が大きな強みとなる。従来型のクライアントPCでは、ユーザーの環境が壊れてしまうと復旧には多大な手間がかかるうえ、最後に作成したバックアップの時点まで戻るのが精一杯だ。これに対し、デスクトップクラウド環境が構築されていれば、仮にオフィスのシンクライアント端末が使用不能になったとしても別の端末からアクセスすれば即座に元の状態に戻れるし、オフィス自体が利用不能になったとしても自宅のPCからサーバに接続することで業務に復帰することも可能だ。

震災後の電力事情に配慮して在宅勤務を取り入れる企業も増えているようだが、デスクトップクラウドなら、オフィスにいるのとほぼ変わらない環境を在宅勤務ユーザーに提供できる。省電力に関してはシステム構成にもよるが、クライアントPCをシンプルな構成のシンクライアント端末に置き換えることで電力消費量が減らせるので、サーバやネットワークが消費する分を差し引いても最終的に消費電力を削減できるケースも少なくないだろう。

デスクトップクラウドに最適なサーバとは?

後藤氏は、デスクトップクラウドのメリットを最大限に享受するには、「何よりもサーバの集約率を可能な限り高くすること」と指摘する。端的に言えば、1台のサーバでクライアント環境をいくつホストできるかがカギとなるわけだ。集約率が低いとサーバの台数が増えてしまうことになり、運用管理の点で好ましくない。

同氏は、集約率の高さで群を抜いている同社製品として、ブレードサーバ「BladeCenter HX5」を挙げる。「BladeCenter HX5は第5世代Enterprise X-Architecture(eX5)に基づいて設計されており、ダブル幅で4ソケット構成が可能という高度な処理性能を持つ。さらに、最大で10コア(2.40GHz)のプロセッサにも対応しているため、膨大な処理能力を少ないフットプリントに高密度で集約できる」

IBM BladeCenter HX5

eX5アーキテクチャの特徴として、プロセッサの処理能力とメモリ搭載量を独立して拡張できるため、クライアントの処理がプロセッサ依存型であってもメモリ依存型であっても最適な構成を採ることが可能だ。

デスクトップクラウドが本来目指していたのは、分散したクライアントPCを集約することで運用管理の効率を高め、セキュリティやコンプライアンスを向上させることだ。確かに、デスクトップクラウドでは高効率なサーバにクライアント環境を集約することでエネルギー効率の改善にも寄与できる可能性もあるうえ、さらに耐障害性も向上する。もちろん、そのためには集約率かつ耐障害性が高く、業務を止めない高可用性を実現したサーバを準備する必要があるのは言うまでもない。

IBM System xサーバーはこうした要望にこたえる実力を備えており、さらにブレードサーバなら小規模から始めて段階的に規模を拡張していくといった場合に最適なシステムと言える。

震災以後、企業はITシステムに対して何らかの見直しを避けられない状況になっているが、最新の高効率サーバを活用することで企業内のクライアント環境を刷新し、デスクトップクラウドに移行することを検討してみる価値はあるのではないだろうか。