IAサーバを構成するコンポーネントの中で最大の電力を消費するのはやはりプロセッサだ。IBM System xサーバはインテルのプロセッサを搭載しているため、その消費電力量の削減がシステム全体の消費電力量の削減にも大きく影響する。ここでは、インテルのマーケティング本部 エンタープライズ・プラットフォーム・マーケティング 統括部長の徳永貴士氏に、省電力に関する技術を中心にインテルの最新プロセッサの特徴について話を聞いた。

インテル マーケティング本部 エンタープライズ・プラットフォーム・マーケティング 統括部長 徳永貴士氏

消費電力を維持したまま性能は40%向上

インテルは4月5日、IAサーバ向け最新プロセッサ「インテル Xeonプロセッサー E7ファミリー」(以下、E7)を発表した。E7は、同社のプロセッサの中でも最大となる10コアを集積したうえでハイパー・スレッディング・テクノロジーを実装しており、1プロセッサ当たり最大20スレッドの同時実行が可能になった。アプリケーションによって差があるものの、前世代のXeon 7500番台アプリケーションサーバを用いたベンチマークで比較すると、40%の性能向上を果たしているという。一方、設計上の最大消費電力量となるTDP値はXeon 7500番台から変わっておらず、消費電力量を変えることなく大幅な性能向上を実現したことになる。

徳永氏は、「E7は、コア数の増加によって同時処理できるスレッド数が増えたことでパフォーマンスが大幅に向上しており、しかも消費電力を増えていないことで電力当たりの処理性能という観点からの効率も高まっている」と語る。

また、E7には同社が実現したユニークな技術として「Integrated Power Gates」が実装されている。この技術は、アイドル状態にあるプロセッサコアへの給電を個別に制御して停止させることで、コアの消費電力をほぼゼロに抑制するというものだ。E7はプロセッサコア数が増加しており、プロセッサ単体の性能も高いことから、従来と同等の処理を実行するだけならプロセッサの処理性能が余剰になることも想定される。しかし同技術によって、こうした場合にも電力を無駄に消費することなく、電力消費を最小限に抑えられる点はE7の大きなアドバンテージだと言えるだろう。

Xeon 7500番台とE7のベンチマークによる性能比較 出典:Intel Corporation

インテル(R) Xeon(R) E7-4870 プロセッサーの4ソケット構成におけるベンチマーク性能概要
http://www.intel.com/performance/server/xeonE7-4800/server.htm

古いサーバを使い続けるか、最新サーバに切り替えるか

さらに同氏は、省電力への取り組みの見逃せないポイントとして、低電圧型メモリモジュール(DIMM)のサポートを挙げる。サーバ仮想化の利用拡大などを考えれば、サーバに実装すべきメモリ容量は従来よりも大きくなるのが必至であり、メモリモジュールが消費する電力量も無視できない。もっとも、プロセッサ側で低電圧型メモリモジュールをサポートしていても、システム側でサポートしていなければ意味がないのだが、IBMのSystem xでは低電圧型メモリモジュールのサポートをいち早く開始しており、インテルが実装した省電力機能を生かせるサーバとなっている。

前世代に当たるXeon 7500番台がわずか1年前の製品であることを考えると、その進化の幅は驚くほどだ。さらに、現実のユーザーがサーバの更新を行うサイクルを考えると、性能向上幅は圧倒的な差になってくる。

徳永氏は、一般的なサーバの更新サイクルを踏まえ、「2006年時点のXeonプロセッサ搭載サーバと2011年の最新のE7搭載サーバの処理性能を比較すると、約18倍の処理性能が実現されている」と指摘する。つまり、従来18ラックのサーバで行っていた処理を1ラックのサーバで処理できるわけで、消費電力量で比較すれば93%もの電力が削減できる計算というわけだ。

もちろん、サーバを毎年買い換えるのは現実的ではない。しかし、サーバ関連の技術は毎年着実に進化を続けていることから数年経つとその差は圧倒的に広がり、古いサーバを長く使い続けるとその間の効率向上に背を向ける結果となってしまうことも確かだろう。

機能の向上も消費電力削減に寄与

このように、E7は直接的な消費電力量の削減においてさまざまな進化を遂げているが、機能の進化を生かして消費電力量の削減に繋げることも可能だ。徳永氏はE7の機能向上の例として、ハードウェアによる暗号処理高速化機能「インテル(R) AES New Instructions (インテル(R) AES-NI)」や、同時に2カ所のメモリ障害からも復旧が可能な「DDDC(Double Device Data Correction)」、Itaniumやメインフレームなどで実装されていたハードウェアの自律的な障害検知/回復機能「Machine Check Architecture Recovery」などの高信頼性機能が実装されたことを挙げる。

米国の暗号アルゴリズムの標準であるAESの処理がプロセッサでサポートされたことで、暗号処理のパフォーマンスは大幅に向上する。これはタスクの処理性能を引き上げることで、結果的に電力効率の向上につながる。また、ハードウェアレベルでの信頼性の向上は大規模なサーバ統合の実現につながるため、こちらも電力量の削減に寄与する技術と言えるだろう。

最後に徳永氏が触れたのは、インテルとIBMの開発段階からの密接な協力関係だ。同氏は、「インテルとIBMは、次世代のハイエンド製品に求められる要求仕様の定義を両社の設計企画チームが共同で策定するなど、密接な連携を維持している。両社は製品を発表する前から設計や技術検証を始めており、新しいプロセッサが発表されてからIBMがサーバの設計を始めるわけではない」という。

両社が問題意識を共有し、市場が求める機能や性能の実現に共同で取り組んでいるからこそ、高性能で高信頼、高効率なサーバであるIBM System xが実現できているのだろう。