進捗・スケジュール管理とは?
『進捗・スケジュール管理』とは、PMBOK準拠の弊社プロジェクト管理方法論PMM※1で定義されている、プロジェクトマネジメントの管理領域の1つである。計画フェーズにおいて進捗管理計画やスケジュールを作成し、後続フェーズにおいて進捗確認やスケジュールの見直しなど進捗・スケジュールに関する管理業務を実施する。
※1 Hitachi Consulting Project Management Methodology
今回はこの進捗・スケジュール管理に関連したお話である。
事実に即した進捗報告を得るために
ユーザー企業のプロジェクトマネジャーの立場でシステムインテグレーターと相対したり、システムインテグレーターのプロジェクトマネジャーの立場でプロジェクトチームと相対したりする場合、進捗報告における虚偽はプロジェクトマネジメントにおける深刻なリスクである。
この程度の遅れならば取り返せるといった主観的な判断が横行し、進捗報告の場が形骸化してしまうと、それまで上手くいっていたかのように見えたプロジェクトが突然、問題プロジェクトに変わってしまうといった事態にもなりかねない。進捗報告を効率的かつ効果的に行っていくにはどうしたら良いだろうか?
工夫すべき(あるいは見直すべき)ポイントの1つが進捗の測定単位である。進捗報告において進捗率をパーセンテージで示すことがあるが、進捗率と実態が乖離していたという経験はないだろうか?
進捗率はサマリー情報として全体俯瞰に有益であるが、進捗率が実態に基づき正しく算出されていることが前提となる。作業担当者やリーダーの主観に基づく進捗率などはもってのほかであり、事実に基づく算出結果としての進捗率のみが報告されるような仕組みづくりが必要である。
仕組みづくりの一例を挙げると、まず進捗測定の基礎単位として「カウントできるもの」を選ぶ。ITシステム開発プロジェクトであれば、インタフェース数やプログラム数などが該当する。次に作業現場より実態情報を収集する。末端での作業実態を正確に把握した上でサマリーとしての進捗率をパーセンテージで表現することが徹底されれば、前述のような問題は起こらない。
工夫すべきポイントの2つ目は進捗報告フォーマットである。プロジェクトにおいては複数の作業者が分担して作業を実施していく。作業停滞を見逃さないためには、作業責任の所在を可視化する必要がある。
例えば、複数の作業ステップにより一連のタスクが完了するような場合(ドキュメント作成→1次レビュー→レビュー結果対応→2次レビュー→……)は、作業ステップごとに実績数を記述する。また報告書として『先週からの繰越』『今週の予定・実績』『来週の予定』と3週分の報告があると、進捗報告の場において、関係者間で作業停滞状況と責任を正しく情報共有することができる。
その他にも、タスクの粒度を見直す(1つのタスクの実施時間が長いと遅れが分かりにくくなる)、タスクの終了条件を明確にする等、工夫できるポイントはいくつもある。関係プロジェクトにおける進捗報告の現状を改めて見直し、現状に即した虚偽発生リスクへの対策を講じていただきたい。
進捗遅延への対応力
大半のプロジェクトは計画通りに進まない。プロジェクトマネジャーには進捗遅延への対応力が求められる。対処療法よりもむしろ、前章で述べたようなリスク回避の仕組みづくりが重要である。遅延の認識が早ければ早いだけ、選択可能な対応策は多く、被害を軽微で食い止めることができる。
では遅延発生時の対応はどうあるべきだろうか? 遅延が発生した状況においては、何よりも客観的に事実を捉えることが重要である。遅延発生の当事者は、焦りと責任感に駆られ、非現実的なリカバリープランを提示しているかもしれない(「5日遅れですが、今週末の土日出勤で何とかします」)。理論に矛盾がないか、冷静かつ客観的に状況分析に努める必要がある。
特に遅延が1週間を超える場合、もはや当事者レベルで解決できる状況ではない。当事者だけでなくプロジェクト関係者全員で遅延を受け止め、対応策を講じていく必要がある。関係者の中には「これは他人の問題である」と考える人もあるだろうが、プロジェクトの成功という共通のゴールに向けては「これは自分の問題である」と考えてもらえるような雰囲気づくりが重要である。
最後に進捗・スケジュール管理において一番のポイントを述べる。それはプロジェクトの初期の段階で『事実が全てであり、隠し立ては一切なし』というルールをプロジェクト内に確立することである。手段としては、正直に遅延等の問題を報告した場合にはプロジェクトマネジャーも一体となって問題の解決を図っていくが、逆に虚偽報告が後日明らかになった場合はペナルティを課す(担当者および責任者を更迭する等)といった具体的なプロセスを定義することなどが挙げられる。
異なる企業から構成されるプロジェクトチームであればある程、文化や利害の違いは避けられないが、同じプロジェクトチームとしての仲間意識を醸成し、上記ルールに従ったプロジェクトマネジメントが行えれば、プロジェクトが失敗する確率が大きく下がるはずである。