連載の終りに…

14回続いた本連載も今回が最終回である。"PM力"向上をテーマとした本連載では、プロジェクトマネジメントに関する構成要素を整理した上で、プロジェクトマネジャー個人および組織の視点それぞれに役立つと思われる参考情報を、『12のレッスン』として展開してきた。

図1: プロジェクトマネジメントに関する構成要素

まとめとなる最終回では各回のポイントを再整理した上で、特にユーザー企業における"PM力"向上という観点で、コンサルティングファームの活用方法をご紹介する。

『12のレッスン』のおさらい

本連載で展開してきた"PM力"向上のための12のレッスンは、プロジェクトマネジャー個人の視点としての9つのレッスンと、企業等の組織の視点としての3つのレッスンで構成していた。各レッスンにおけるテーマおよび主なトピックは以下のとおりである。

図2: 12のレッスン(サマリー)

このように各回約2つのトピックを取り上げてきた訳だが、読者の皆さんにとって少しでも参考になる部分はあっただろうか? 本連載でテーマとした"PM力"向上に対して、少しでも役立つ情報が提供できたのであれば幸いである。

ユーザー企業におけるコンサルティングファーム活用のポイント

さて最終章である。本章ではユーザー企業におけるコンサルティングファーム活用のポイントと題して、最後のレッスンをお届けしたい。

本連載の初回でもご紹介したとおり、プロジェクトマネジメントは自社にとって重要である、という認識がシステムインテグレーターのみならず、ユーザー企業にも広がりをみせてきている。投資対効果を考慮し、貴重な経営資源を投じたプロジェクトがもし失敗すれば、株主を筆頭とする多くのステークホルダーに多大な影響を及ぼすことは想像に難くない。よってプロジェクトの成功確率を上げるために"PM力"を強化する必要があるが、特にプロジェクト型のビジネスを展開していないユーザー企業の場合、自社で経験可能なプロジェクト数は限られている。現在進行中または次期プロジェクトを成功させるための短期的な視点と、限られたプロジェクト機会を有効に活用するという中長期的な視点の両方で"PM力"向上を考えていく必要がある。

まず短期的な視点で考えた場合、直近のプロジェクトを成功させることが必要であるが、プロジェクト型のビジネスを展開していないユーザー企業では、『プロジェクト』は特定の『業務改革(プログラム)』における施策の1つとして実行されることが多い。よって、各プロジェクトを成功させることは勿論のこと、それ以上にプログラム全体として成功に導くことが求められる。

図3: ユーザー企業におけるプロジェクトの位置づけ

ここで重要となるのはプログラムの構想策定能力である。現状を分析し、解決すべき本質的な課題を見抜き、実施すべき施策を策定する、といういわゆる"超上流"工程の検討が不十分であると、その後の実行計画立案や各施策(プロジェクト)に対する諸作業において手戻りが発生するリスクが高まる。また時間の経過や関係者の増加に伴い希薄化するプログラムの意義を維持するために、プログラム全体を監視したり、啓蒙活動を続けたりする必要がある。これらの活動が行われないと期待効果が十分に得られないリスクが高まる。

上記を解決するためには、いわゆる仮説検証・課題解決能力とプロジェクトマネジメント能力の両方が必要である。短期的視点で考えれば、自社の要員でカバーできないリソースを外から調達するという選択肢がでてくるが、その選択肢の一つがコンサルティングファームである。実際、下図におけるプログラムの構想策定~実行計画立案、PMO業務や各施策(プロジェクト)の初期フェーズ(ITシステム構築プロジェクトであれば要件定義フェーズ)にコンサルティングファームを活用するユーザー企業が増えている。

図4: ユーザー企業におけるコンサルティングファーム活用ポイント

お勧めなのは、短期的視点で"PM力"向上のカンフル剤としてコンサルティングファームを活用しつつ、中長期的視点での自社要員育成に取り組むアプローチである。具体的には将来のPM候補生と考える自社要員を戦略的にプログラムに割り当て、コンサルティングファームの要員と二人三脚でプログラムに取り組む体制を組むことで、自社経験のみならず他社経験も踏まえたベストプラクティスとしての"PM力"向上を図ることができるのである。

HCM的観点に立ち、どこまでを自社として持つべきか、どこからは外部から調達するか、プロジェクトマネジメント領域に関しても戦略的な判断が求められている。自社の"PM力"向上の一助として、コンサルティングファームの効果的な活用をご検討いただければ幸いである。