ITとは?

IT※1とは業務の省力化や効率化を実現するための仕組みであり、プロジェクトマネジメントの構成要素を組織視点で整理したときの一翼を担う。プロジェクトマネジャーの作業負荷を軽減するための簡易ツールから複数プロジェクトに対するポートフォリオ管理を行うためのエンタープライズ系のツールまで、市場には幅広いITツールが存在する。自社のプロジェクトマネジメントの現況を踏まえ、本当に必要なツールを導入することが重要である。

※1 Information Technology

プロジェクトマネジメントに関する構成要素 ~ IT

今回はこのITについて、特にツール活用についてのお話である。

プロジェクト管理ツールを使いこなす

市場には多くのプロジェクト管理ツールが存在する。ツールの実行形態としてはPCにインストールするいわゆるパッケージ製品からクライアントサーバ型、Web型と様々であり、またコスト面でも高機能な商用製品からASP※2/SaaS※3型製品、OSS※4までと選択肢は幅広い。

※2 Application Service Provider
※3 Software as a Service
※4 Open Source Software

プロジェクト管理ツールが提供する代表的な機能は以下のとおり。なお製品によっては提供されていない機能もあるので予めご留意いただきたい。

  • 進捗管理(ガントチャート等で表現したスケジュールやマイルストーンに対して、実績情報を照らし合わせて進捗状況を管理する。重点管理対象となるクリティカルパスを自動的に見つけ出してくれる機能もある)
  • リソース管理(WBS上に登場する各タスクに作業担当者を割り当てる。作業者のコストと時間を管理し、作業負荷に偏りがある場合に必要な平準化作業も支援)
  • コスト管理(実績情報に基づきプロジェクト予算の消化実績や完了時の予測を行う)
  • 課題管理、TO-DO管理(リストで管理するとともに、期日やステータス変更に伴う関係者へのメール通知機能なども提供)
  • 情報共有(プロジェクトメンバー専用のポータルサイトなど)

このようにプロジェクトマネジャーを支援するための有益な機能が提供されているプロジェクト管理ツールだが、実際に導入しようとすると二の足を踏む企業が多い。あくまで支援ツールとしての位置づけとなるため、プロジェクトマネジメントの重要性が企業として強く認識されていない状況では、導入コストや時間を理由に挙げて導入を見送ってしまうことがある。また多機能なプロジェクト管理ツールの場合、テスト導入時点で「とても使いこなせない」と判断されてしまう場合もあるようである。ではこの課題をどのように解決していけば良いだろうか?

プロジェクト管理ツール導入のポイントとしては、何よりもまず企業自体がプロジェクトマネジメントの重要性を強く認識していることが前提条件となる。その上で、プロジェクトマネジメントを統括する組織(PMO※5)が自社に必要なプロジェクト管理ツールの要件を定義・選定し、十分な準備を持ってテスト導入に入ることが重要である。ツール提供ベンダが提供するトレーニングだけでなく、自社の利用シナリオに沿った具体的な活用マニュアルを準備するなど、"宝の持ち腐れ"とならないために各種の工夫を行うべきである。

※5 Program/Project Management Office

『プロジェクト管理支援基盤』を構築する

プロジェクト管理ツールの導入によってプロジェクトマネジャーの作業負荷は多少軽減されるだろうが、組織として更にITを活用することはできないだろうか? その答えの一つが『プロジェクト管理支援基盤』の構築である。

組織として多くのプロジェクトを経験していくと、成功プロジェクトだけでなく、失敗プロジェクトについても知見が溜まっていく。これらの知見をナレッジとして蓄積し、後続のプロジェクトに生かしていくことができれば、プロジェクトの成功率は高まっていくはずである。このような考え方で構築された基盤を『プロジェクト管理支援基盤』と呼ぶ。いわゆるナレッジベースである。

『プロジェクト管理支援基盤』が提供すべき機能の代表例としては以下が挙げられる。

  • 進行中プロジェクトの確認機能(重点監視プロジェクトに対するレポート生成、全社プロジェクトのポートフォリオ管理など)
  • 過去プロジェクト実績の検索機能(カテゴリーやキーワードによる類似プロジェクト実績の検索、特定スキルを持つプロジェクト参加メンバーの照会など)
  • ベストプラクティス集の提供機能(標準WBS、成果物テンプレートやサンプル、べしべからず集、チェックリストなど)

上記の機能を提供する基盤が構築され、各プロジェクトを率いるプロジェクトマネジャーと複数プロジェクトを支援するPMOがこの基盤を効果的に使うことができるようになれば、プロジェクトマネジャー個人としての"PM力"も企業全体としての"PM力"も大きく向上していくはずである。

1人のプロジェクトマネジャーが経験できるプロジェクトの数はたかが知れている。暗黙知を形式知として企業内に蓄積すること。技能伝承が難しい領域であるからこそ、企業全体で取り組み、仕組化していくことが重要である。