PMOとは?
PMO※1とはプロジェクト管理を支援する組織の略称であり、プロジェクトマネジメントの構成要素を組織視点で整理したときの中核に位置づけられる。プロジェクトの重要性が強く認識される今日では、多くの企業が自社の"PM力"向上に向けてPMOのあり方について検討し、また実践を重ねている。
※1 Program/Project Management Office
今回はこのPMOについてのお話である。
PMOの形態 ~ 2つのPMO
PMOはプロジェクト管理を支援する組織であるが、提供される機能は各社様々である。これはプロジェクト支援に求められる機能が各社で異なるからに相違ないが、PMOの形態という観点では2つのグループに分類できる。
1つは『プログラムマネジメントオフィス』、もう1つは『プロジェクトマネジメントオフィス』である。どちらも略称はPMOであり、また提供される機能にも類似性があるため両者が混同されることもしばしばだが、本質的には異なる。具体的にはどこがどう違うのか? まずは両者の違いを整理することにしよう。
まず『プログラムマネジメントオフィス』であるが、同組織はあるユーザー企業が実施する業務改革(プログラム)の遂行を支援するための組織である。
プログラムにはプログラムの目的があり、その目的を達成するために複数のプロジェクトが実行されていく。そしてプログラムマネジメントオフィスは複数のプロジェクトを束ねつつ、プログラムの目的を達成するために必要な管理作業を支援していくのである。プログラム全体としての進捗・スケジュール管理やリスク・課題管理などは勿論のこと、プログラムの目的や意義を各プロジェクトに浸透させて個別最適視点で判断を行わないように注意を促したり、各種KPIを収集~展開してプログラムの成功度合いを周知したりすることもある(ミッションコントロール)。
対して『プロジェクトマネジメントオフィス』は、ユーザー企業を支援するパートナー企業(例えばシステムインテグレーター)において、参画プロジェクトの遂行を支援するための組織である。
パートナー企業の多くはプロジェクトを中心としたビジネスモデルであり、プロジェクトの効率や成功率を向上させることは、自社のコアコンピタンス強化に繋がる。このような背景から組織されたプロジェクトマネジメントオフィスでは、過去の経験を糧としてプロジェクトを成功に導くための方法論やベストプラクティスを構築したり、優秀なプロジェクトマネジャーを育成したり、場合によってはリスクの高いプロジェクトを直接支援したりするのである。
以上が2つのPMOの違いである。ただ日本では業務改革のことをプログラムと呼ぶことは少なく、前述の『プログラムマネジメントオフィス』のことを"プロジェクトマネジメントオフィス"と呼んでいることもある。また大きなプロジェクトではサブチーム間を束ねる『プロジェクト内PMO』が別途組織されて、階層構造になる場合もある("全体PMO"と"領域PMO"など)。PMOに対する明確な機能定義は存在しない。プロジェクトを成功に導くためにどのようなPMOが必要かという視点で、自社のPMO像を検討すべきである。
PMOの立上げ方、運用の仕方
では実際にPMOを立上げ、運用を行っていくにはどうしたら良いだろうか? 一連の流れを『構想策定フェーズ(計画フェーズ)』と『実行フェーズ』の順に解説しよう。
『構想策定フェーズ』では、自社が必要とするPMOの姿を明らかにし、実現に向けたロードマップを作成する。具体的には以下の作業を実施する。
- 自社における"PM力"の現状分析(例えば、各プロジェクトマネジャーにヒアリングを実施し、個人としての"PM力"および組織としての"PM力"について現状把握と課題抽出を行う)
- PMOが提供すべき機能の定義(抽出された課題を解決するための機能を定義する)
- 各機能のプライオリティと実現難易度の評価
- PMO立上げ計画の策定(PMO要員の割り当て案も含む)
続く『実行フェーズ』では、構想策定フェーズで策定されたPMO立上げ計画に基づきPMOを立ち上げ、定義されたPMO機能の提供を行う。具体的には以下の作業を実施する。
- PMOの立上げ(PMO要員を実際に割り当てる。また関連プロジェクトを含むキックオフを開催し、PMO設立の目的や役割を周知・徹底する)
- PMO機能の提供(構想策定フェーズで定義したPMO機能を提供する)
- PMO機能の評価~改善(PMOの効果を確認しつつ、スパイラルに機能拡張していく)
なお筆者が所属するコンサルティングファームでは、PMOの立上げ~運営を支援するコンサルティングサービスを提供している。もしご興味があればお問い合わせいただきたい。