調達管理とは?

『調達管理』とは、PMBOK準拠の弊社プロジェクト管理方法論PMM※1で定義されている、プロジェクトマネジメントの管理領域の1つである。計画フェーズにおいて調達対象の識別と調達計画の立案を行い、後続フェーズにおいてサプライヤーの選定や契約管理などの調達に関する管理業務を実施する。

※1 Hitachi Consulting Project Management Methodology

図1: 調達管理 ~ PMM より

今回はこの調達管理についてのお話である。

RFP作成のポイント

システム化を検討するユーザー企業の多くが、パートナーとなるベンダー選定においてRFP※2を利用している。RFPを利用した一般的なベンダー選定のプロセスは以下のとおりである。

※2 Request For Proposal

  1. ユーザー企業がシステム化の要求をRFPにまとめ、複数のベンダーに提案を依頼する
  2. ベンダーは受け取ったRFPを熟読し、回答を準備・提出する
  3. ユーザー企業は受け取った回答を精査してパートナーを選定する

この一連のプロセスにおいて重要なカギを握るのは、当然のことながらRFP自体である。RFPの書き方次第で、ベンダーから得られる提案の内容も変わってくる。しかし、一般的なユーザー企業においてRFPの作成経験はそれほど多くはない。経験不足を補うために、筆者が所属するコンサルティングファームにRFP作成支援依頼が舞い込むこともしばしばである。そこで本章では、具体的なシチュエーションを想定し、RFP作成時のポイントをまとめてみたいと思う。

システム化計画作業を終えたあるユーザー企業が、要件定義以降の作業を依頼するためにRFPを作成しようとしている。この状況においてどのようなRFPを作成すべきだろうか?この課題についてユーザー企業の視点で考えてみよう。

上記の状況におけるRFP提示の目的は3つあると考えられる。

1つ目はシステム化計画作業で描いた自社の想定ソリューションの妥当性を、専門家であるベンダーの意見を元に検証すること。2つ目は要件定義以降のパートナー候補を選定すること。3つ目は投資対効果に関する情報を得ること。

これらの目的を達成するためのRFPと考えると、以下の情報をRFPに含めるべきである。

  • 依頼背景(ビジネスまたは IT に関する中長期ビジョンおよび実現ロードマップ)
  • 依頼概要(プロジェクトのゴール、スコープ、主要マイルストーン等)
  • 前提条件・制約条件(コスト、適用技術・製品または適用方針等)
  • 回答・選定プロセス(ドキュメント形式、提出期限、Q/A方法、選定時期、契約等)
  • その他、参考情報

なお想定ソリューションに対する確認が得られていない状況では、あえて情報を出し惜しむことも考えるべきである。その結果として、先入観のない自由な提案が促進され、想定を超えるより良いソリューションを得られる可能性もある。

ただし注意点として、RFP提示者は受領回答に対する判断を行う立場にあることを忘れてはいけない。自由度の高い回答は取りまとめや比較が難しくなるので、受領回答に対する明確な判断基準を予め準備するなど、回答・選考プロセスを効率的に行うための工夫も合わせて行うべきである。

ベンダーマネジメントのあり方

プロジェクトはユーザー企業とベンダーの共同作業である。前述のRFPから始まる両社のパートナーシップはプロジェクトの完了を持って終わるものとは限らない。プロジェクトを成功に導きかつ高い顧客満足度を獲得したベンダーであれば、同ユーザー企業におけるビジネスパートナーとしてその他のプロジェクトにも参画していくこともあるだろう。お互いがお互いを必要とするWin-Winの関係こそが何よりも求められているのである。

とはいえ、全てのプロジェクトで特定ベンダーのみをパートナーとして進めていくことは困難である。ユーザー企業が複数のプロジェクトを同時に実行し、また今後も複数のプロジェクトを計画していくとすれば、当然のことながら付き合うベンダーの数も増えていく。プロジェクトごとの都度対応ではなく、自社として複数ベンダーとどう付き合っていくべきか、ベンダーマネジメントの在り方について関心が高まっている。

その1つの答えがVMO※3である。VMOはユーザー企業におけるプロジェクト横断型の組織であり、ベンダー調達作業の支援や最適化のための各種活動を行う。

※3 Vender Management Office

VMOの具体的な活動の例としては、RFP提示先となるベンダー候補の選定支援、自社標準となるRFPテンプレートや評価基準の策定、ベンダーの作業実績や結果を収集する仕組みの整理、などが挙げられる。VMOの設置により、プロジェクトマネジャーの調達に関連する作業負荷軽減と、全体最適の考え方に基づくコスト削減およびリスク削減効果が期待される。

なおVMOと聞くとPMO※4と何が違うのか、と疑問に感じる方もいるであろう。VMOは調達に特化したPMOの一形態とも言えるし、PMOが提供する機能の一部として内包されている場合もある。そもそもPMOとは何だろうか? その答えは次回で解説する予定である。

※4 Program/Project Management Office