市販のおもちゃを、ちょっとしたプログラミングでより面白く、より高機能に変身させる。それが「トイプログラミング」。PC内だけで完結するプログラムと違って、物理的にモノが動くのを制御できるのはロボットならではの醍醐味です。本連載ではそんなトイプログラミングの世界のおいしいところを紹介していきます。

では、トイプログラミングで具体的にどんなことができるか? その答えはズバリ「i-SOBOTを秘書ロボット化できる」ということです。普通(?)秘書に期待するのは、朝には気持ちよく挨拶を交わし、たとえば「16時00分からはSEOについての会議です」だとか言ってスケジュールをバシバシ管理してくれたり、「SEOってどういう意味だったかな」と聞けばさっと辞書を引き言葉の意味を教えてくれたり、ちょっと気弱になったときに「しっかりしてください!」と励ましたりしてくれる……といったところでしょうか。もちろん、これらのやり取りは「音声」で行うのが当然。こうしたことが、すべてトイプログラミングで実現できるというわけです。

「i-SOBOT」

さて、それではさっそくその方法は、と行きたいところですが、その前に題材となるノーマル状態のi-SOBOTはどんなことができるのかを、ざっとおさらいしておきましょう。i-SOBOTといえば、タカラトミーから発売されている「世界最小」(2008年6月13日現在、ギネス世界記録認定)の量産二足歩行ヒューマノイドロボットのこと。全長16.5cmと手のひらに載る大きさなのに、17個のサーボモーターを搭載(つまり17カ所の関節が動く)した本格ロボットです。

約3万円のお手ごろ価格で入手できることもあり、昨年の発売時にはロボットファンが殺到して、品薄状態になるほどでしたが、最近ではまた新色のブラックモデルなども登場し、量販店などで普通に買えるようになってきています。

ノーマルi-SOBOTでできること

実は、i-SOBOTはトイプログラミングを施す前でも、なかなか多彩な遊びができます。専用コントローラにはさまざまな「モード」が用意されていますが、最も基本的なのは、ラジコンのように操縦したり、アクションを繰り出させたりする「リモートコントロールモード」。まずは、コントローラーで前進→左旋回→前進→頭を右に向けるといった操作をしているところと、「おはよう」「うれしいな」などの日常系アクションを出しているところをご覧ください。

動画
リモートコントロールモードで移動しているところ
リモートコントロールモードで日常系アクションを発動しているところ

次は「スペシャルアクションモード」。これはi-SOBOTがもう少し長めのパフォーマンスを見せてくれるモードです。下のムービーにある「運動2」は比較的短いものですが、ほかにもエアギターや西部劇など、いろいろと楽しませてくれます。それから「ボイスコントロールモード」では、声の命令にi-SOBOTがこたえてくれます。i-SOBOTが聞き取れるのは10語だけですが、それでも自分の声で動いてくれるとかわいく思えてくるから不思議です。

動画
スペシャルアクションモードの「運動2」
ボイスコントロールモードで「こんにちは」と「ぜんしん」

ご覧いただいたようにこれだけでも結構スゴイのですが、これをベースにいろんなことができるように改造していきます。

トイプログラミングでできること

ロボットのプログラミングだからといって、難しく考える必要はありません。JavaやC#をメインに使う、普通のプログラミングです。しかも完成している「トイ」を使うため、電装系には触れないでもOK。つまり、実際のロボット研究でやっかいとされる部分を抜かして、いきなりアプリケーションを作れるというわけです。

1つでもなんらかの言語でプログラミングをしたことがある、という方なら、楽しんで試していただけると思います。

トイプログラミングで作るアプリケーションは大きく分けて、ケータイ用とパソコン用があります。iアプリを作成すれば、携帯電話からi-SOBOTを制御することができます。iアプリ版の「i-SOBOTリモコン」や、i-SOBOTとリアルに「あっち向いてホイ」をして遊べるゲームアプリを作成できるのです。

パソコン用のプログラムは、主にVisual C# 2008 Express Editionを使い、アプリによって、音声合成エンジンのAquesTalkや、音声認識エンジンのJulius for SAPIなども併用します。パソコンとi-SOBOT間は赤外線をインタフェースとするため、ハードウェアとしては、赤外線送信ができる学習リモコンを別途用意する必要がありますが、冒頭で触れた「秘書ロボット」機能まで実現できるのでぜひとも挑戦していただきたいところです。

次回は、i-SOBOTとケータイの組み合わせでできることを詳しく紹介。乞うご期待。

なお、詳しい方法やプログラム等は6月14日発売の「PLUS ROBOT vol.1」で述べています。