昨今、SNSやブログを使った広報活動が広がってきたこともあり、会社員が「仕事用の写真を撮る」機会は増えてきているのではないでしょうか。カメラ選びや撮影のポイントは、オフの時にシェアする写真や、雑誌に投稿するような"本気の趣味"のそれとは少し変わってきます。この連載では、仕事で写真を撮るときに気をつけたいポイントを紹介します。
昨今、SNSやブログを使った広報活動が広がってきたこともあり、会社員が「仕事用の写真を撮る」機会は増えてきているのではないでしょうか。
ですが、こうした用途の写真は「記録」の目的が多いもの。カメラ選びや撮影のポイントは、オフの時にシェアする写真や、雑誌に投稿するような"本気の趣味"のそれとは少し変わってきます。
そこで参考にしたいのが、広報さんの経験。各企業の存在を世に知らしめるお仕事で、メディアとのやりとりが仕事というイメージが強くあるかもしれませんが、プレスリリースの作成、イベントや表彰式、社内誌など、写真を撮影する場面は多いようです。
広報さんが実務で使っているカメラは?
まずは、広報さんたちがどんなカメラを使っているか、調べてみました。
各社の広報さんに「どんなカメラを使っているか」というアンケートを実施したところ、「一眼レフカメラ(ミラーレス一眼を含む)」という回答がちょうど半数の50%(一眼レフ33%、ミラーレス17%)もいらっしゃいました。
その一方で、デジタルカメラと併用して「スマートフォン」のカメラを利用している人が39%にのぼるなど、昨今のスマートフォンの高画質と手軽さが反映された結果となりました。また、一眼レフとスマートフォンのちょうど中間にあたるスペックの「コンデジ」(コンパクトデジタルカメラ)を使っているという人はわずか11%で、スマートフォンに押され気味であるという事実が明白となりました。
撮るべきモノに応じた機材を
ひと口に「広報さん」といっても、業種などによって被写体や撮影環境はまったく異なりますので、一様に「こういったカメラがお勧め」などと明言することはできません。
しかし、一眼レフカメラをある程度は使いこなせる人には、さまざまな状況や被写体の撮影に対応でき、かつ高画質で撮影できる「デジタル一眼レフカメラ」や「ミラーレス一眼レフ」がお勧めです。
撮影時に装着するレンズは選択肢が多いほうがベターなのは言うまでもありませんが、例えば記者発表会などのイベントに持ち出す際に"どれか一本"に絞らなければならないなら「標準ズーム」がベストな選択だと思います。前方の席からプレゼンのスライドや会場全体の風景を撮る場合は「広角ズーム」、広い会場で後方から登壇者のバストアップを撮る場合は「望遠レンズ」を用意していくと良いでしょう。
また、製品を撮影する場合、ズームレンズを100mm程度の焦点距離に合わせて撮ると、「パース」(遠近感のゆがみ)が付かない自然な仕上がりになりますし、かなり近づいて撮らなければならないようなごく小さなものなら、近くの物にもピントを合わせられる「マクロレンズ」が必要になるかもしれません。
一眼慣れしてない人にはコンデジをおすすめ
一方、一眼レフの操作に慣れていない人は「コンデジ」がオススメです。コンデジとミラーレス一眼は外見上似ていますが、ミラーレスはレンズを交換できるのに対して、コンデジはカメラとレンズが一体になっています。
コンデジは一眼レフのように状況に応じたレンズ交換こそできませんが、最近は40倍以上の超高倍率ズームを搭載したものも各社からいくつもラインナップされていますので、離れた場所から登壇者の表情を撮りたい場合などは、200~300mm程度の望遠レンズを装着した一眼レフより寄った写真を撮ることができます(ただし、倍率を上げるほど手ブレしやすくなりますので、場合によって三脚は必須となります)。
昨今の高品位センサーを搭載した高級コンデジなら、並の一眼レフにもひけを取らない高画質な写真を期待できますので、カメラを常に持ち歩く場合は、一眼レフよりも小さくて軽いコンデジがお勧めです。
最近は主戦力にもなっている「スマホ」
また、アンケート結果で約4割の広報さんが「活用している」と回答した「スマートフォン」は、最近の機種はかなり高画質で暗所にも強いので、イベントや表彰式の風景などをWebページやブログ、社内誌などに掲載する程度であれば十分に実用的だと思います。
せっかく良いカメラを持っていても、肝心な時に操作に戸惑ってシャッターチャンスを逃したり、設定ミスで失敗したりするぐらいなら、最も使い慣れたカメラで確実に撮影することのほうが大切です。
ただし、スマートフォンのカメラが搭載する「ズーム(拡大)機能」は、ごく一部の機種を除いて「デジタルズーム」という方式で拡大されます。これは、写った画像の一部を切り取って拡大して被写体を大きくしているだけなので、画像が荒くなることが多々あります。これに対してコンデジはカメラに内蔵される複数枚のレンズを使って拡大する「光学ズーム」と前述した「デジタルズーム」とを組み合わせているものが多く、その場合はある程度までは画像があれません。
スマートフォンとコンデジを併用している人は、普段からコンデジの操作にも慣れておき、被写体との距離に応じてスマートフォンと使い分け、念のためコンデジとスマートフォンの両方で撮影しておくといいでしょう。
製品写真などは「きっちり」撮る必要が
ただし、ニュースリリースなどに掲載する公式の製品写真を撮影する場合、スマートフォンと空いた机の上などでさっと撮ったものでは安っぽく見えてしまう可能性がありますので、プロのカメラマンに任せるか、あるいはそれなりのスタジオキットや照明器具を用意するなど撮影環境を整えた上で、一眼レフカメラを用いての撮影を行うのが望ましいでしょう。
今回の「カメラ選び」の結論としては、一眼レフを使いこなせる人には、やはり高画質で連写性能が高く、オートフォーカス(AF)も高速な一眼レフが断然お勧めです。また、イベントや表彰式などの撮影は「確実に撮る」ことが重要ですので、現場で迷ったり設定ミスで失敗したりしないように、普段から会社のコンデジや一眼レフの操作を練習しておきましょう。もし使い慣れていないコンデジを持ち出した場合は、可能な限り使い慣れたスマートフォンも併用して撮影しましょう。
次回は、人が多く写る「記者会見」など、実際の撮影ケースに応じたコツをお届けします。